イルミナ(Illumina, Inc. / ILMN)の6月締め四半期決算(2021年第2Q)について、アナリスト予想とも比較しつつその内容をまとめていきます。
■イルミナの事業内容や年次決算について紹介した記事はこちらにあります。
1. アナリスト予想との比較(EPS)
順調にアナリスト予想を超えるEPSを報告し続けています。
※今回、イルミナは7月4日締めで第2Qを報告しており、6/30の欄はその7月4日締めの数値を記載しています
次は、実際の売上高と利益額がどのように推移しているのかを見ていきます。
2. 四半期ごとの売上高と純利益(損失)の推移
これは、四半期ごとの売上高と純利益をまとめた表です。
(単位:百万ドル)
※今回、イルミナは7月4日締めで第2Qを報告しており、6/30の欄はその7月4日締めの数値を記載しています
2021年第2Qは、第1Qから売上が微増(3%増加)、純利益は26%の増加となりました。
なお、EPSだけでなく、売上高のアナリスト予想も超えています。
GRAIL社との合併契約に関する毎月3,500万ドル(35百万ドル)の現金支払いはまだ続いており、第2Qも第1Q同様、1億500万ドル(105百万ドル)の費用が、事業に関するものとは別に発生しました。
この費用は、買収完了もしくは契約が終了するまで継続して発生します。
2021年第2Qの売上は前年同期比78%増加、純利益は前年同期比294%増加と、業績は伸びていますが、2020年・2021年それぞれの上半期を比較すると、買収に関連する費用の影響もあり売上高営業利益率が19.1%から17.2%へ下がっています。
3. その他の補足
3-1. GRAIL買収計画への欧州の介入
遺伝子によるがん検査を開発するGRAIL社の買収は、”未来の競争とイノベーションを阻害する”としてFTC(連邦取引委員会)から訴訟を起こされ、いまだに決着がついていません。
また、欧州委員会(EC)もFTCと同様の懸念を持っており(4月に欧州7ヶ国から要請を受けていた)、7月22日、イルミナのGRAIL買収に関して3ヶ月間にわたる詳細な調査を開始しました。
この欧州委員会の調査の結果は、2021年11月29日までに決定される予定です。
当初の契約期限は2021年9月20日でしたが、規制当局の許可取得などに備え3ヶ月間の延長が認められているため、おそらくこの延長を行うことになるでしょう。
買収が果たされなかった場合は、3億ドルの契約解除料の支払い、更に議決権のないGRAIL社の優先株式と引き換えの3億ドルの追加投資が求められることになります。
イルミナは”米国拠点の2社の取引を審査する管轄権を、欧州委員会が主張するのは前例がない。世界中の企業がEU合併規則の今後の適用について不透明な状況に置かれる”という旨の発言や、管轄権の無効化訴訟を起こすなど、買収を進める姿勢を崩していません。
しかし、譲歩した改善策の提示を行っており、調査へも協力するとしています。
いずれにしても、買収の可否が出るまでに時間がかかればかかるほど、月3,500万ドルの支払いが積み重なることになります。
4. まとめ
イルミナ(Illumina, Inc.)の第2Qは、売上・利益共に順調に増加する良い結果でした。
ただ、GRAIL買収に関してはまだ決着がつきそうにありません。
FTCだけでなく、欧州までが本格的に介入してくる事態となりました。
この調査期間を考えると、第3QもGRAIL社に対する1億500万ドルの支払いが発生することは免れないでしょう。
(イルミナの事業内容や年度末の決算書分析を行った記事もこちら↓にあります)
今回の記事は2020~2021年のIllumina, Inc.の決算書及び四半期レポート、コーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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