最近株価が上昇しているイルミナ(Illumina, Inc. / ILMN)の3月締め四半期決算(2021年第1Q。今回は4月4日締め)について、アナリスト予想とも比較しつつその内容をまとめていきます。
■イルミナについて、事業内容や年度末決算分析をまとめた記事はこちらにあります。
1. アナリスト予想との比較
直近3期はアナリスト予想を上回るEPSを達成しています。
特に直近はアナリスト予想を0.51ドル(37%)超え、好調な結果でした。
次は、実際の売上高と利益額がどのように推移しているのかを見ていきます。
2. 四半期ごとの売上高と純利益(損失)の推移
これは、四半期ごとの売上高と純利益をまとめた表です。
(単位:百万ドル)
前年同期比で売上・利益共に減少している月が多く、コロナ感染拡大による顧客の操業停止や稼働率低下の影響が出ています。
売上高が順調に増加しているのは、このコロナによる影響が徐々に小さくなり、稼働が元の水準に戻ってきたことを表していると考えられます。
また、直近の2021年第1Q(4月4日締め四半期)は、前Qと比べても、前年同期比でも、純利益が減少しました。
これにはコロナの影響による輸送費の増加と、GRAIL社との合併契約に関して毎月3,500万ドルの現金支払いが生じていることが影響しています。
一方で売上高は前年同期比で増加しており、アメリカ、ヨーロッパ・中東・アフリカ、中華圏、アジアのいずれの地域でも売上が拡大しています。
3. その他の補足
3-1. GRAIL社の買収計画その後
GRAIL社の株式の14.5%を所持するイルミナは、株式と現金合計80億ドルで買収する契約を2020年9月20日に締結しました。
しかし連邦取引委員会(FTC)の反対にあっており、いまだにその決着はついていません。
延長が無かった場合は2021年9月20日が契約の期限となっており、買収が果たされなかった場合は3億ドルの契約解除料を支払う必要が生まれます。また、議決権のないGRAIL社の優先株式と引き換えに3億ドルの追加投資が求められることになります。
競合相手ではないGRAIL社の買収に連邦取引委員会(FTC)が異を唱えるのは、イルミナのシーケンサー(DNA配列・遺伝子の解析装置)がゲノム関連企業の大多数に使用されている現在の状況で、そのイルミナが特定の検査(GRAIL社は遺伝子によるがん検査を開発している企業)を行う企業と合併することは、他の遺伝子検査開発企業と直接競合し公平性が欠けることを懸念していると報じられています。
一方でイルミナは「価格の引き下げに努め、競合する他社にも平等にシーケンス製品を提供する」としており、どのように決着するのか注目が集まっています。
4. まとめ
イルミナ(Illumina, Inc.)は、コロナ感染拡大の影響を受けて一時的に売上や利益が減少したものの、遺伝子解析においては大きなシェアを誇り、5月末には新たにタイで出生前検査商品を発売するなど、世界規模で事業を拡大しています。
ただ、PacBioに続き買収に関する訴訟が起きており、これに関する一時的な株価下落も起きた過去があります。
一度はスピンアウトしたGRAIL社を再び手中に収めることができるのか、今後も注視していきます。
(イルミナの事業内容や年度末の決算書分析を行った記事もこちら↓にあります)
今回の記事は2020~2021年のIllumina, Inc.の決算書及び四半期レポート、コーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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