イルミナ【ILMN】銘柄分析_ゲノム・遺伝子のリーディングカンパニー

米国株の年次決算書・銘柄分析
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今回はイルミナ(Illumina, Inc. / ILMN)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Illumina, Inc.(ILMN)について

1-1. 業種

バイオテクノロジー、先端医療機器

1-2. 事業の概要

イルミナは、遺伝子解析技術のリーディングカンパニーです。圧倒的なシェアを持つDNA配列の解析装置(シーケンスマシン・シークエンシング機器)を開発・製造・販売しており、臨床ケアの改善や遺伝子検査による課題の発見・解決を目指しています。
顧客は学術機関、政府機関、バイオ企業など多岐にわたります。

がんゲノム疾患ゲノミクス研究、アグリ(農業関連)ゲノムの研究などの他、生殖医療に関する取り組みにも力を入れており、PGD(着床前遺伝子診断)、PGS(着床前遺伝子スクリーニング)、出生前診断のキットやデータ分析ソフトウェアも提供しています。
また、DNAの断片を読み取り再構築することで遺伝情報を読み解くDNAシーケンシングだけではなく、RNAやメチル化といった手法も幅広く手がけています。

また、コロナ(COVID-19)感染拡大に対しても、ソフトウェアツールの無料化、アフリカ疾病予防管理センターへの寄付、大学や各種機関との共同研究などの取り組みを行っています。

1-3. チャート

イルミナの株価チャートはこのようになっています。多少の上下をしつつ、何年もの間上昇を続けています。

GRAILの買収に訴えを起こされた際には株価が約25ドル下落しましたが、現在はその前の水準まで戻ってきています。(2021年4月9日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 短期の資金繰りは問題なし
  • 自己資本比率は高い
  • キャッシュフローも良好

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるILMN貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは“安定タイプ”です。
(貸借バランスのポイントについては、こちら↓の記事で紹介しています)

2020年の流動比率は約360%、当座比率も約320%あるため、短期の資金繰りは問題ありません
2018年に少々下がっていますが、それも含めて問題のない数値です。

また、固定比率も約66%と問題のない数値です。
近年は同程度の数値で安定しているので安心です。
(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は62%とかなり良好な数値です。

2-1-3. キャッシュフロー

キャッシュフローは、営業活動プラス、投資活動マイナス、財務活動マイナスという”安定タイプ”の組み合わせです。

社債発行を行った2018年は財務活動がプラス、有価証券の購入よりも満期・売却の金額が上回った2019年は投資活動がプラスとなりましたが、翌年には元に戻っています。
また、自社株の買戻しを継続して行っています

過去5年間のフリーキャッシュフローは、2018年に有価証券の購入が大きかったためマイナスですが、その他の年はすべてプラスです。
(キャッシュフロー計算書の注目ポイントなどを、こちら↓の記事で紹介しています)

2-1-4. 項目まとめ

全体的に問題のない安心感のある数値です。
気になる点を挙げるとするなら財務活動の金額が大きい点がありますが、これはほぼ自社株の買戻しの影響なので、投資家目線では嬉しいことでもあります。

2-2. 収益性

  • 2020年はコロナ感染拡大の影響で売上減少
  • PacBioの買収頓挫の手数料で利益圧迫
  • 2019年時点では米国平均以上の数値

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

ILMNのROE(自己資本利益率)推移

2020年のROEは約14%です。
2020年はコロナ感染拡大の影響で売上が減少しましたが、利益率も下がっていることがわかります。

利益率低下の要因の一つは、PacBio(Pacific Biosciences of California, Inc. / PACB)の買収契約が終了(12憶ドルで買収予定だったが、”買収によって将来の競争を大幅に減らす可能性がある”ことを懸念した連邦取引委員会からの訴えによって実現しなかった)したことによる手数料等の支払いが費用となり利益を圧迫したことです。

また、研究開発費が年々増加しており、2020年も前年より5%増えたため、これも利益の圧迫につながりました。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

ILMNのROA(総資産利益率)推移

ROAもROEと同様に、2020年は数値が悪化しています。
2019年までの時点では米国平均といわれる6~8%を超えていましたが、2020年は平均程度となりました。

2-2-3. 項目まとめ

2020年の収益性は米国平均かそれを少し下回る程度の数値となりました。
手数料支払いやコロナの感染拡大の影響といった要因が影響しているため、今後数値が戻るかどうかを注視しておきたいところです。

また、決算書では”2021年は再び増収となる見込み”としています。

2-3. 経営の効率

  • 総資本から見ると売上高がまだ足りない
  • 棚卸資産は適切に管理されている

2-3-1. 各回転率

ILMNの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は、約0.4回です。
現状はまだまだ低い数値です。過去数年0.4~0.5回でとどまっているので、今後の向上を期待したいです。

固定資産回転率は約1回です。
売上高の減少によって前年より若干低下しています。

棚卸資産回転率は約8.7回です。
過去数年8回を超えています。また、内訳のほとんどは原材料と仕掛品です。

2-3-2. 項目まとめ

総資本から見ると売上高はまだまだ足りない状態です。
棚卸資産回転率は他の指標より高く、適切に管理されていると言えます。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上・利益は2019年まで増加を続けていた
  • 2020年はコロナの影響で減収減益
  • 研究開発費は年々増加している
  • 売上高研究開発費率は平均の約5倍

2-4-1. 売上高と営業利益

ILMNの売上高推移

順調に増加を続けていた売上高ですが、2020年は減少しています。
コロナ感染拡大によって顧客の操業停止や稼働率低下がおき、その影響で需要も下がってしまいました。
2021年は売上増加の見込みとしているので、それが実現されることに期待したいです。

ILMNの営業利益推移

営業利益も売上高と同様の動きをしていますが、売上高よりも減少幅が大きい結果です。
PacBioへの手数料支払いと、研究開発費の投資によって費用が増加したことが影響しています。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約3,239百万ドル、研究開発費は約682百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約21%です。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員数を抱えた米国企業の平均は4.1%とされており、平均の約5倍の比率で資金を投じていることがわかります。

なお研究開発費は年々増加しており、売上高の減少した2020年も、前年より多くの研究開発資金を投じています。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

研究開発に多くの資金を投じていることがわかりました。

ゲノムや遺伝子関連の分野はまだまだ研究・開発段階の企業が多く、売上高に近い金額や、売上高を超える研究開発費用を投じている(まだ事業が本格的にスタートできていない)企業もある中、イルミナは既に事業を開始し利益を出しています。

そのような状況でも売上の20%程度の研究開発費を費やし新たな技術の開発に余念がないこと、そしてコロナ感染拡大の影響が出た2020年まで増収増益を続けていたことから、成長性には期待が持てそうです。

2-5. 補足:GRAIL買収と連邦取引委員会(FTC)の訴え

GRAIL早期のがん発見技術の開発を目的として、イルミナからスピンオフして始まった企業です。
イルミナの遺伝子テクノロジーを利用して血液からがんを早期検出するスクリーニング検査を開発しており、その製品「Galleri test」は一度の検査で50種類以上ものがんを調べることができるとされます。

現在すでにGRAILの株式の14.5%を所持するイルミナは、株式と現金合計80億ドルでGRAILを買収する契約を2020年9月20日に締結しました。

しかし2021年3月30日、連邦取引委員会(FTC)が”将来の競争を阻害することになる”と訴訟をおこしました。
イルミナにとってGRAILは競合相手ではなく、競合相手以外との買収・合併や垂直統合に連邦取引委員会が訴訟を起こすのは珍しいことです。

ちなみに連邦取引委員会は、イルミナがPacBioを買収しようとした時も同様の訴訟を起こしています。(なお、この時は買収相手が競合であった)

3. まとめ

クロとしては、イルミナ(Illumina, Inc.)は「将来に期待できる」銘柄だと判断します。

2020年にコロナ感染拡大の影響を受けて売上と利益を減少させていますが、それまでは良い伸び率で成長を続けてきました。
資金繰りにも問題がなく、比較的安心して投資できる企業であると言えます。
今後も更に売上を拡大させることができれば、回転率などの数値も改善しそうです。

また、2021年第1四半期の暫定的な発表では、顧客の操業はコロナ前に戻っており、2020年第1四半期の収益8億5,900万ドルに対して、2021年は約10億8,500万ドルを予想しているとしています。

今回の記事はIllumina, Inc.の決算書及びコーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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