ハブスポット(HubSpot Inc / HUBS)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. HubSpot Inc(HUBS)について
1-1. 業種
CRMソフトウェア、SaaS、マーケティング
1-2. 事業の概要
ハブスポットは、B2Bの事業を行う中小企業向けにクラウドベースのCRM(顧客関係管理。顧客満足度の向上などを通じて売上・収益の拡大を目指すこと)プラットフォーム”HubSpot”を提供する企業です。
このプラットフォームには、Sales Hub、Marketing Hub、Service Hub、CMS Hub、Operations Hubといったツールがあり、それぞれ営業支援、マーケティング支援、カスタマーサービス支援、ウェブサイト構築支援、業務オペレーション支援を行っています。
これらは基本的に自社開発されたツールであるため操作性が一貫しており、連携もスムーズです。
こうした理由もあってハブスポットのUI・操作性に対する評価は高く、一般的にセールスフォース(CRM)のプラットフォームよりもシンプルで使いやすいと言われており、顧客満足度調査で1位を獲得しています。
なお、セールスフォースの製品を使いながらHubSpotと連携させることも可能です。
また、セールスフォースからCRMソフトウェアを移行する顧客に対しては、移行作業を専門チームがサポートするサービスを実施しています。
顧客の獲得に関してはインバウンドマーケティングを重視しており、ブログやソーシャルメディア、検索エンジン、その他ツールでの発信に注力し、見込み客へアプローチする手法を取っています。
また、サブスクリプション形式のビジネスモデルですが、ある程度の機能が揃った無料プランもあるため、導入のハードルはかなり低いと言えるでしょう。
1-3. チャート
ハブスポットの株価チャートはこのようになっています。
2020年2月頃の新型コロナ感染拡大によって一時的に株価が下がりましたが、その後はしばらく右肩上がりに上昇を続けていました。
しかし2021年11月下旬頃からグロース銘柄に厳しい地合いとなったこともあって、大きく値下がりしています。(2021年12月21日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は39%
- キャッシュフローは改善の余地あり
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
ただ、流動比率は約327%、当座比率は約309%とひとまずの資金繰りに不安はありません。
固定比率も68%と良好です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は39%で、良い部類の数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
事業は赤字ですが、株式報酬の戻入れが大きいことなどから、営業活動はプラス収支となっています。
投資活動では、満期保有等を目的とした有価証券を多く購入しており、以前に購入した同様の有価証券からの収入もあったものの、最終的にはマイナス収支でした。(設備などへの投資もあるが、有価証券と比較すると金額の割合は小さい)
財務活動においては、転換社債の発行などで資金を調達し、一方で返済なども行っています。
最終的には調達金額の方が大きく、プラス収支で終えています。
2-1-4. 項目まとめ
ひとまずの資金繰りには問題ありません。
事業で損失を出し続けておりキャッシュフローは良い内容とはいえませんが、それでも営業活動はプラス収支ですし、大きな問題はありません。
2-2. 収益性
- 赤字続き
- 2021年第3Q(記事作成時点の最新決算)も同様
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
事業が赤字のため、ROEもマイナスです。
なお、年々自己資本は増えていますが(自己資本が増えるとROEのマイナス値は小さくなる)2019年は純損失額も一旦減少していました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROE同様に上下しています。
2020年は前年よりも損失額が増え、マイナス値が大きくなりました。
2-2-3. 項目まとめ
まだ利益を生み出せていないので、現時点の収益性は低いと言わざるを得ません。
なお2021年第3Q決算を見ても(記事作成時点の最新決算は第3Q)まだ赤字のままです。
2-3. 経営の効率
- 2020年の総資本回転率は最低ラインの半分程度
- 棚卸資産の保有はなし
2-3-1. 各回転率
2020年の総資本回転率は最低ラインの半分程度と低いです。
また、2019年のリースに関する会計基準変更によって固定資産が増加し、それ以前よりも回転率は低下しています。
なお、棚卸資産の保有はありません。
2-3-2. 項目まとめ
資本の大きさから見ると売上はまだまだ足りず、資産の効率性はあまり高くない状態です。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上は増加中
- 毎年営業損失が発生
- 2021年第3Qまでの9ヶ月間では
1顧客当たりのサブスク収益平均額が1万ドルを突破 - 売上高研究開発費率は平均の約4.5倍
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は年々増加しています。
2020年の伸び率は前年比31%、2021年第3Qまでの9ヶ月間では前年同期比48%です。(記事作成時点の最新決算は2021年第3Q)
なお2020年の顧客数は前年比42%も増加しましたが、1顧客当たりのサブスク収益平均額は9,920ドルから9,582ドルへ減少してしまいました。
しかしその後、2021年第3Qまでの9ヶ月間では10,305ドルへ増加しています。
毎年40~50百万ドル程度の営業損失が発生しています。
また、2021年第3Qまでの9ヶ月間では粗利率が前年の81%から79%へ低下しました。
これらは事業拡大に伴う各種費用の増加が原因だとされています。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約883.03百万ドル、研究開発費は約205.59百万ドルだったので、売上高研究開発費率は23.3%で、平均の約4.5倍という数値です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上の伸びが飛びぬけて大きいわけではないですが、年々30~40%(2021年第3Qまでの9ヶ月間では50%近く)程度の成長を維持しています。
また、利益よりも事業拡大を重視する段階では売上と共に損失が大きく増加する企業も多いですが、ハブスポットは比較的落ち着いているようです。
顧客数が増加を続けており、直近では1顧客当たりのサブスク収益平均額も増えているため、更なる成長に期待したいです。
3. まとめ
クロとしては、ハブスポット(HUBS)はまだ赤字だというリスクを頭に入れつつ、成長に期待したい銘柄です。
売上や顧客数、1顧客当たりの平均収益が増加している点はもちろん、インバウンドマーケティングを重視することで、同社の製品へ関心が高く購入見込みの高い層へ効果的にアプローチできるビジネスモデルではないかと考えます。
”操作性が高く使いやすいソフトウェア”と評価も高く、競合であるセールスフォース(CRM)からの乗り換え・併用をサポートしていることもあり、顧客はまだまだ拡大していくのではないかと期待しています。
今回の記事はHubSpot Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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