ロビンフッド【HOOD】銘柄分析_手数料無料の投資プラットフォームを提供

米国株の年次決算書・銘柄分析
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ロビンフッド・マーケッツ(Robinhood Markets Inc / DUOL)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

なお、銀行などと同様、決算の様式・内容が通常の企業と異なります。

  • 売上が急増
  • PFOF、仮想通貨での同様のリベートが売上の大部分を占める
  • 証券取引委員会がPFOFの全面禁止を検討すると発表

それでは見ていきましょう。

2021年更新版はこちら

1. Robinhood Markets Inc(HOOD)について

1-1. 業種

ソフトウェア、フィンテック(金融テクノロジー)

1-2. 事業の概要

ロビンフッドは、手数料無料で投資を行えるプラットフォームを提供するフィンテック企業です。

株式や仮想通貨の現物取引だけでなく、月額費用(ロビンフッド・ゴールドに加入)を払えば信用取引・オプション取引なども可能になります。
更に、単元未満株の購入が可能なので、Amazon(株価3,478ドル。2021年9月5日時点)の株を100ドル分だけ買うといったこともできます。

手数料や最低投資金額のハードルをなくしたこと、シンプルなUIによるスマホアプリの手軽さから若者を中心にユーザーが急増し、2021年第2Qの月間アクティブユーザーは2,130万人に達しました。

アメリカのネット証券に手数料無料化の波が起きたのはロビンフッドの躍進が原因だと言われています。
また、個人投資家が結託してゲームストップ(GME)の株価を急上昇させ、その後一時的に取引制限が課せられた一件が、非常に有名な企業・アプリでもあります。

収益源にはロビンフッド・ゴールドと言われるサブスク収入や、信用取引・預金の金利などがありますが、大きな柱となっているのはPFOF(payment for order flow)です。

PFOFとは、ユーザーの注文情報を機関投資家であるHFT(High Frequency Trading。アルゴリズムなどによる超高速・高頻度取引)業者へ提供して報酬を受け取る、証券会社の慣行のことです。
HFTは個人投資家の注文データをアルゴリズムの向上などに役立てていると言われています。

ロビンフッド・ゴールドに加入すると信用取引の融資が受けられる他、更に詳しい銘柄分析などの情報にアクセスすることが可能となります。

1-3. チャート

ロビンフッドの株価チャートはこのようになっています。IPO直後は値下がりしましたが、8月初頭は一時85ドルまで上がりました。
しかしその後転換社債を持っていた投資家の売却で大きく下落し、現在は43~50ドル前後で上下している状態です。(2021年9月6日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 売上高と利益の推移

  • 2020年は売上前年比約3.5倍
  • 2021年は記事作成時点では赤字
  • PFOFや仮想通貨の同様の収益が売上の80%を占める

2-1-1. 総売上高

HOODの総売上高推移(2019~2020年)

2020年の売上は前年比245%の増加となりました

2020年はコロナ感染拡大による社会環境の変化があり、若い世代の投資人口が急増したため、投資へのハードルが低いロビンフッドを利用する消費者が一気に増えました。

2-1-2. 純利益

HOODの純利益推移(2019~2020年)

2020年は売上が急増したため、最終的に純利益を出すことができました。

2-1-3. 売上の内訳

2021年上半期(記事作成時点での最新決算が第2Qのため)の割合を見ていきます。

2021年上半期の総売上は1,087.5百万ドル(約11億ドル)で、すでに2020年の年間売上を超えています。

そしてその80%を占めるのがPFOFや仮想通貨での同様のリベート(決算書では”Transaction Rebates”)です。
そして12%が金利などの利息収入、8%がロビンフッド・ゴールドの収入をはじめとしたその他収益となっています。

2-1-4. 項目まとめ

2020年は社会情勢にも後押しされて、売上が非常に大きく増加しました。
また、2021年に入っても売上の伸びは衰えていません。(記事作成:2021年9月6日時点)

その売上の大半は、PFOFや、仮想通貨における同様のリベートで占められています。

2-2. 財務状況・キャッシュフローについて

  • 保証金や取引制限解除の資金調達で大きな赤字に(2021年)
  • フリーキャッシュフローはプラス

2-2-1. 資産・負債・資本について

2021年の話になりますが、2月に資金調達を行っており、6月末時点で転換社債(負債)が約52億ドルあります。
調達資金の元本は35.5億ドルでしたが、公正価値の上昇に伴って計上額が増加しました。

この価値変動によって多額の費用が発生し、上半期の19.5億ドルという赤字の大きな原因となっています。

時期を見ると、この資金調達は、ボラティリティの増加によって10倍に急増※1した”決済機関が求める保証金”への対応や、ゲームストップなどの取引制限を解除するために必要な措置であったと考えられます。

なお、IPOは2021年7月末に完了となっているので、記事作成時点ではIPO後の財務状態がわかる決算資料はありません。

※1 NRIコラムを参照(2021年9月6日閲覧):https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2021/fis/kiuchi/0209

2-2-2. キャッシュフロー

2020年のキャッシュフローは、営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスでした。

2021年上半期(記事作成時点の最新決算)でも組み合わせは同じですが、大きな純損失が出ているため、営業活動のプラス収支の金額が小さくなりました。
一方で転換社債発行によって財務活動のプラス収支は増加しています。

2-3. 収益性

  • 2020年は利益が小さいながら黒字
  • 2021年の記事作成時点では赤字

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

HOODのROE(自己資本利益率)推移(2019~2020年)

2020年は一時的に黒字となったので、ROEも小さいながらプラス数値となっています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

HOODのROA(総資産利益率)推移(2019~2020年)

ROAもROEと同様です。

2-2-3. 項目まとめ

2020年に黒字となりましたが、2021年は再び赤字となっています。(記事作成時点)

また、金融業は資産が大きくROAが低く出やすいですが、それを考慮しても2020年の利益は小さく数値はまだまだといったところです。

2-4. PFOF規制の動き

2021年8月末、SEC(米証券取引委員会)が、公平性や効率性の障害になるとして”PFOFを全面禁止する方向で検討”していることを明らかにしました。

繰り返しになってしまいますが、PFOF(payment for order flow)とは、ユーザーの注文をHFT(High Frequency Trading。アルゴリズムなどによる超高速・高頻度取引)業者へ提供し報酬を受け取る、証券会社の慣行のことを言います。

ロビンフッドは収益の大半(2021年上半期では80%)を、PFOFや仮想通貨における同様のリベートでまかなっているため、この全面禁止が実現すれば大きな痛手になるのは避けられません。

ただ、PFOFは20~30年前から続く慣行で、いくつもの証券会社で行われてきたことです。
それらを簡単に禁止できるのか、またロビンフッドをはじめ証券会社が何も対策を取らないのか、といった点は気になるところです。

3. まとめ

クロとしては、ロビンフッド・マーケッツ(Robinhood Markets Inc)は革新的なサービスは魅力的だが、購入は一旦見送りたい銘柄です。

PFOFが禁止される可能性というリスクが一番の理由です。ただ、売上の80%全てを失うかどうかはわかりません。
基本的に”PFOF”は”株式やオプション取引において使われる言葉”で、PFOFが仮に禁止されても、仮想通貨でのリベート収入は継続できる可能性もあります。その場合、直近(記事作成時点)の第2Qを見ると、売上の38%程度を失う計算になります。
この四半期は仮想通貨の取引が非常に好調だったため、今後も同じ割合で推移していくかは不明ですが、一つの判断材料にはなると思います。

もう一つ気になっているのは、ペイパルが株式取引サービスに参入するかもしれないという点です。
また、株式やETF、そしてビットコインは既にスクエアも取り組んでいる事業です。
これからコロナ社会が収束していき、これまで同様のユーザー増加速度の維持は難しくなることが予想される中、既にロビンフッドより多くの顧客を掴んでいる競合が増えるというのは不安材料の一つです。

今回の記事はRobinhood Markets Incの決算書・目論見書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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