ヘリックス・エネルギー・ソリューションズ・グループ(Helix Energy Solutions Group, Inc. / HLX)の決算書(10-K)・銘柄分析について、2021年度決算を踏まえた内容に更新しました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Helix Energy Solutions Group, Inc.(HLX)について
1-1. 業種
工業サービス、油田サービス・機械、ロボット
1-2. 事業の概要
ヘリックス・エネルギーは、海洋油田(オフショア)やガス田向けのサービスを提供する企業です。
作業船や遠隔操作ロボット、海底掘削機、船型浮遊式生産施設などを用いて、ウェルインターベンション事業、ロボティクス事業、生産設備事業の3つの事業を行います。
ウェルインターベンション事業では、水深200~10,000フィート(約3,000メートル)での坑井の強化や廃止、建設作業のエンジニアリング、検査・修理・メンテナンスなどを迅速に幅広く提供し、海底油田の開発・管理にコスト優位性を提供しています。
また、ロボティクス事業ではROV(遠隔操作型の無人潜水機)などのロボット資産を用いて、海底電力ケーブルの敷設や海底清掃作業等を、生産設備事業では船型浮遊式生産施設”HPI”で石油や天然ガスの処理を行っています。
特にロボティクス事業では、再生可能エネルギー市場へのサービス提供も増加しています。
具体的には、洋上(オフショア)風力発電所の建設や、前述したROVによるケーブル設置に関するサービス、海底清掃作業などが挙げられます。
なお、こういった作業にはROVだけでなく、チャーター船、トレンチャーといった重機も駆使しています。
2021年にこういったオフショア再生可能エネルギー市場の契約から得られた収益は、ロボティクス事業の売上の23%を占めましたが、同様の割合が2018年は33%、2019年は36%、2020年は41%と増加していた中、今回は減少に転じました。
1-3. チャート
ヘリックス・エネルギーの株価チャートはこのようになっています。
2020年2月、新型コロナ感染拡大によって他の多くの銘柄と同様に急落しました。
その後は上下を繰り返していますが、いまだにコロナ前の株価に戻れていません。(2022年3月5日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 船舶などの固定資産が多い
- 2021年は赤字に
- 自己資本比率は高い
- 営業活動キャッシュフローはプラスを維持
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。
流動比率は約190%、当座比率は約143%で、短期の資金繰りは問題ありません。
船舶などの資産を多く持つため、固定比率は約109%と高めですが、純資産と固定負債でカバーできているので許容範囲内です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約71%と高い数値です。
昨年から1ポイント上昇しました。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという安定タイプの組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
2021年は赤字となりましたが、現金支出を伴わない”減価償却費”の調整額が大きく、営業活動によるキャッシュフローは最終的にプラス収支となりました。
なお、減価償却の発生する資産が大きいため、毎年1億ドル以上の減価償却費が発生しています。
また、財務活動ではローンの返済が大きな割合を占めています。
2-1-4. 項目まとめ
2021年は赤字となりましたが、ひとまずの資金繰りに困ることはなさそうです。
2-2. 収益性
- ROE、ROAともに低い
- 2021年は赤字に
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
2020年は新型コロナによる悪影響で売上・利益が減少していましたが、2021年は売上が更に減少し、赤字となりました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROEと同様に推移しています。
2-2-3. 項目まとめ
一般的な企業を比べると収益性はかなり低い状態でしたが、2021年は更に赤字となってしまいました。
資産が大きく、高い数値が出づらい面もあるでしょうが、2021年の結果は残念です。
2-3. 経営の効率
- 総資本に対する売上高は低め
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は0.3回で、最低ライン1回よりかなり低い数値です。
また、固定資産も大きいため、固定資産回転率低めです。
なお、過去数年、回転率に大きな変動はありません。
2-3-2. 項目まとめ
事業柄回転率を上げるのは難しい面もあるでしょうが、資産の大きさから見ると、全体的に売上高が物足りない結果です。
2019年以降は総資本・固定資産が減少していますが、売上も減少が続いたため、回転率はあまり変わっていません。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上高は2年連続減少
- 2021年は営業損失が発生
- 2022年前半は逆風だが、後半は好調となる見込み
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は2年連続で減少しました。
内訳としては、生産設備事業が19%増加したものの売上に占める割合は小さく、ウェルインターベンション事業、ロボティクス事業の減少に大きく影響された形です。
最も大きな売上を上げているウェルインターベンション事業では、ブラジルやメキシコ湾での使用率低下、西アフリカでの使用率上昇が相殺され、最終的に前年比4%の売上減少となりました。
また、再生可能エネルギー市場とも関わりのあるロボティクス事業は、前年比23%の売上減少となっています。
2018年からは営業利益が出ていましたが、2021年は営業損失が発生しました。
売上が減少したにもかかわらず原価が増加しており、最終的に事業は赤字となっています。
なお利益面で見ても、ウェルインターベンション事業、ロボティクス事業が不調という結果です。
2-4-2. 項目まとめ
2021年は2年連続の売上減少、そして赤字発生と、あまり良くない結果でした。
新型コロナによる影響がまだ尾を引いていることや、一部の複数年契約が完了(満期)してしまったことが、売上減少につながっているようです。
ただ、先日のプレスリリースでは、2022年前半は逆風の状況が続くものの、後半から2023年にかけては市場が改善する見込みであると述べています。
3. まとめ
クロとしては、ヘリックス・エネルギー・ソリューションズ・グループ(HLX)の保有を一度検討しようと思います。
ただ、今後の大きな成長ではなく、新型コロナによる下落からの回復に期待したいというのが主な理由です。
コロナ社会を脱した後はエネルギーの需要が強まると予測されますし、更なる活性化が期待される再生可能エネルギー市場にもソリューションを提供していることから、回復に期待が持てるのではないかと考えます。
今回の記事はHelix Energy Solutions Group, Inc.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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