ゴールドマン・サックス【GS】銘柄分析_米国最大規模の投資銀行

米国株の年次決算書・銘柄分析
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ゴールドマン・サックス(The Goldman Sachs Group, Inc. / GS)の決算書(10-K)分析、事業内容などをまとめました。クロの判断は以下の通りです。

なお、銀行系の決算書や規制はやや特殊なので、主に利息や全般的な収益・利益、事業ごとの伸び率に焦点を当てて見ていきます。
また、前回テーパリング実施時やその前後の業績の大まかな変化もまとめました。

  • 売上・利益増加
  • グローバルマーケット事業が好調
  • 貸倒引当金増加
  • 前回テーパリング実施後売上低下

それでは見ていきましょう。

2021年更新版はこちら

1. The Goldman Sachs Group, Inc.(GS)について

1-1. 業種

投資銀行、投資ブローカー

1-2. 事業の概要

ゴールドマン・サックスはアメリカの大手投資銀行です。

”投資銀行業務”、機関投資家サービスを行う”グローバルマーケット事業”、”資産運用事業”、消費者向けのファイナンシャルプランニングやコンシューマーバンキングなどで構成される”コンシューマー&ウェルスマネジメント事業”の4つの事業を展開しています。

1-3. チャート

ゴールドマン・サックスの株価チャートはこのようになっています。2020年2月頃コロナ感染拡大で下落しましたが、2020年3月終盤には上昇に転じ、しばらくコロナ前よりも低い価格帯で停滞していました。
他の銘柄同様2020年11月頃から上昇をはじめ、現在は過去最高値の水準です。(2021年7月6日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 売上高と利益の推移

  • 2020年は増収増益
  • 特に投資やマーケット関連事業が好調
  • 金利低下によって、金利による収益が減少
  • 資産運用事業のみ減収

2-1-1. 総売上高

GSの総売上高推移(2017~2020年)

総合的な収益(売上)は、2020年に大きく増加しました。
また、2019年は伸び悩んでいたことがわかります。

2-1-2. 金利による収益

GSの金利収入推移(2017~2020年)

低金利の影響を受け、金利による利息の収入は減りました。
しかし、支払利息と差引した純収入は前年比9%増加しています。

2-1-3. 純利益

GSの純利益推移(2017~2020年)

2020年は前年よりも利益が増加しました。

2-1-4. セグメント別の売上

以下は4事業ごとの売上高の推移です。

GSの投資銀行事業売上高推移(2017~2020年)

投資銀行事業の売上は2019年に一度減少したものの、2020年は大きく増加しました。
2019年の減少には、M&Aの減少や投資運用のインセンティブ手数料減少が影響しています。

GSのグローバルマーケット事業売上高推移(2017~2020年)

グローバルマーケット事業の売上は、2019年まで若干停滞気味であったものの、2020年は前年比43%増加と大きく成長しています。

GSの資産運用事業売上高推移(2017~2020年)

2020年の資産運用事業の売上は、前年比11%減少しました。
これにはコロナ感染拡大による、2020年前半のプライベートエクイティ投資(非公開企業への投資)や貸し付けなどの収入減少が影響しています。

GSのコンシューマー&ウェルスマネジメント事業売上高推移(2017~2020年)

コンシューマー&ウェルスマネジメント事業も、2020年は売上が増加しています。

2-1-5. 項目まとめ

総売上、純利益共に2019年より増加しました。
特に債権や通貨、株式などの市場が活発で、グローバルマーケット事業、投資銀行事業が好調です。

一方で、資産運用事業は減収となりました。
また、コロナによる情勢を鑑みて、貸倒引当金を2019年の約3倍計上しています。

2-2. 財務状況・キャッシュフローについて

  • 資金調達を行って現金増加
  • トレーディング関連の資産・負債が増加
  • 2020年は営業キャッシュフローがマイナス収支

2-2-1. 資産・負債・資本について

2020年は、資産・負債・資本全体が少しずつ増加しています。
総資産は前年比17%程度の増加です。

資産では特に売掛金、トレーディング資産の増加が大きく、負債では顧客からの預金、トレーディング負債が大きく増加しています。

2-2-2. キャッシュフロー

2020年のキャッシュフローは、営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。

営業活動によるキャッシュフローのマイナスには、主にトレーディング資産の増加、担保付契約の増加、売掛金の増加によるマイナス(キャッシュの支出)調整が影響しています。

投資活動の収入・支出はともに増加しており、財務活動では預金の増加、借入金の増加によって大きくプラスの収支となりました。

2-3. 収益性

  • 2020年は利益増加でROE上昇
  • ROAは負債の増加で若干低下

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

GSのROE(自己資本利益率)推移(2017~2020年)

2020年は純利益が増加し、ROEも上昇しています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

GSのROA(総資産利益率)推移(2017~2020年)

自己資本の増加より負債の増加の方が大きかったため、ROAは2019年より若干下降しています。

2-2-3. 項目まとめ・ROTCE

2020年は利益が増えてROEは好転しました。しかし負債の増加によってROAは下がっています。

また、2018年の好調な利益額、ROEには、どちらも届きませんでした。

ROE・ROAは一般企業と比較するとかなり低い(良くない)結果ですが、銀行業としては十分良好な数値で、特にROEは高めです。
なお、2020年のROTCE(有形自己資本利益率)は11.8%でした。

2-4. 2014年テーパリング前後はどうだった?

以下のテーパリング中やその前後の決算を見た結果、金融緩和が出口に向かったからといって大きな売上増加には繋がらず、短期金利が上昇した年からは売上が一時的に減少しました。
また、グローバルマーケット事業は、テーパリング示唆・実施辺りから業績が下向きになっていました。

    前回テーパリング等実施時期
  • テーパリング実施示唆…2013年5月22日
  • テーパリング実施期間…2014年1~10月
  • 短期金利(FF金利)上昇スタート…2015年10月頃

これらの期間の収益を見ていくと、2012年~2014年の総売上は微増ではあるものの停滞し、2015年、2016年は減少していました。

また、金利による収益は2012年~2015年の間減少を続けています。
利息以外の収益は、2012年~2015年まで微増・微減を繰り返し、2016年に一度大きく減少しています。

純利益は2015年に一度減少したのみでした。(比較期間外だが2017年も減少)

2-4-1. 事業別の概要

※2019年第4Qに事業セグメントが再編されたため、売上配分などが現在とは一部異なっています

投資銀行事業、資産運用事業は2015年まで売上・利益の増加を続けていました。

コンシューマー&ウェルスマネジメント事業やその他事業へ、その業務が配分された”投資・融資事業”は、2013年まで好調でしたが、2014年以降売上が減少しています。

グローバルマーケット事業は2013年から2017年まで売上減少が続きました。
特に2013年の減少幅が大きく、その後は微減です。
なお、2020年特に好調な同事業ですが、当時は一部業務を投資・融資事業(再編時に消滅した事業)で行っていました。

2-4-2. 事業ごとの売上に占める割合

テーパリング実施直前の2013年の事業別売上の割合は、投資銀行事業18%、グローバルマーケット事業46%、投資・融資事業21%、資産運用事業16%でした。

なお、テーパリング示唆の影響もない2012年はグローバルマーケット事業の占有率が53%、2011年は60%と半分以上を占めていました。(2020年は47%)

(同時期の株価チャート変動率を金融ETFや他銘柄と比較した記事もこちら↓にあります。)

3. まとめ

クロとしては、ゴールドマン・サックス(GS)は好調な決算が魅力ですが、購入タイミングを待つつもりです。

前回テーパリング時に、実施示唆・実施序盤あたりから、主にグローバルマーケット事業が不調となり、株価も下降していました。
今回も同様の動きをするかはわかりませんが、割合は当時程高くないとはいえグローバルマーケット事業が総売上をけん引している状況には変わりないため、短期投資としての購入候補ではありますが、あまり多く保有するつもりはありません。

なお、2021年第1Qも好調です。

今回の記事はThe Goldman Sachs Group, Inc.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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