ガーミン【GRMN】銘柄分析_GPSのパイオニア!ウェアラブル事業を展開

米国株の年次決算書・銘柄分析
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今回はガーミン(Garmin Ltd. / GRMN)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. ガーミン(GRMN)について

1-1. 業種

ネットワーク&通信、電子製品、電子テクノロジー

1-2. 事業の概要

ガーミンは、GPSのパイオニアと言われる大手企業です。
航空機用携帯型GPS機器やGPS内蔵携帯電話を世界で初めて開発し、2013年にはメルセデスベンツのダッシュ内ナビゲーションシステムのプロバイダーに選ばれました。
また、現在は船舶や飛行機用のオートパイロットシステムなども手掛けており、優れた技術を幅広く提供しています。

一般消費者向けにはドライブレコーダーやスマートウォッチなどのウェアラブル製品、それに伴うアプリやサービスを展開し、日本ではSuica対応の製品も販売しています。

1-3. チャート

ガーミンの株価チャートはこのようになっています。
現在(2021年3月8日時点)、2007年10月頃、暴落する前につけた最高値と同程度の水準です。
しかし、2021年2月17日の決算発表あたりから、株価は下降傾向にあります。

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 流動比率、当座比率はとても安心
  • 固定比率も問題なし
  • 自己資本比率は良好
  • キャッシュフローも安定タイプ

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるGRMN貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”安定タイプ”です。
(貸借バランスのタイプ判断については、こちら↓の記事にて紹介しています)

2020年の決算書では流動比率が315%当座比率が232%となっており、非常に安心できます。
過去5年分を確認しましたが、いずれもほぼ同程度の高水準でした。

また、固定比率約60~65%を維持しているので、返済不要の自己資本で固定資産をカバーできています。

(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率77~78%で推移しているので、非常に良い数値です。
健全な体質と言えるでしょう。

2-1-3. キャッシュフロー

過去5年間全て、本業を含む営業活動のキャッシュフローはプラス、投資活動はマイナス、財務活動はマイナスとなっており、しっかりとした”安定タイプ”だと言えます。

2019年から在庫を増加させており、2019年は営業活動のキャッシュフロー額(プラス)が前年より減少しました。しかし2020年はそれと同程度の在庫を維持し、再び営業活動のキャッシュフローは増加しています。
(キャッシュフロー計算書を見る際のポイントや判断基準はこちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-4. 項目まとめ

経営の安全性については、どの指標も安心できる内容です。
キャッシュフローには一時的な変動がありましたが、現時点で特に問題となるような内容ではありません。

2-2. 収益性

  • ROEは平均程度を維持
  • ROAは平均以上~2倍を維持
  • コロナの影響はそこまで大きくなさそう

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

GRMNのROE(自己資本利益率)推移

ROEは米国の平均程度の数値を維持し、安定した利益を出しています。
2018年に一度下がっているのが気になりますが、これは2017年の法人税のトータルがマイナスとなって、一時的に純利益が大きくなったためです。

また、2019年も2017年同様、スイス法人税の影響で法人税のトータルがかなり小さくなり、純利益が大きく出ています。
また、2020年にはコロナ感染拡大により、一部事業の業績にマイナスの影響も受けていると発表されています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

GRMNのROA(総資産利益率)推移

ROAもROEと同様の上昇・下降の動きをしています。
いずれの年も、米国のROA平均の2倍近い数値です。

2-2-3. 項目まとめ

法人税等の影響で多少の上げ下げはありますが、安定して平均~それ以上の収益性を維持しています。
また、継続した上昇傾向はなく今回算出した値で落ち着いていると言えます。

また、コロナ感染拡大に影響を受けているとはいえ、2020年の下げ幅はそこまで大きくありません。
ガーミンはフィットネス、アウトドア、マリン、航空、自動車関係など幅広い事業を行っているため、一部事業のダメージを緩和することができたようです。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率、固定資産回転率が低め
  • 棚卸資産回転率は問題ない

2-3-1. 各回転率

GRMNの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は、約0.6回です。1回転は欲しい指標なので、少々低いと言えます。
過去を遡ってみても同程度の数値で落ち着いてしまっています。

固定資産回転率も約1.2回を維持しており、資産に対して売上が少々小さく感じます
この数値も大きく変わらず推移しています。

棚卸資産回転率は約5.5回なので、在庫量にはあまり問題がないようです。
ただ、2019年に在庫量を増加させるまでは約6回転ありました。
効率が落ちたことは残念ですが、供給に対する戦略として在庫を増やしているため、在庫が溜まってしまった訳ではありません。

2-3-2. 項目まとめ

総資本回転率が気になります。また、固定資産回転率もあまり高くないため、売上に対して固定資産が大きすぎる(もしくは売上が小さすぎる)と言えます。

経営効率を上げるにはこの部分を改善したいところですが、これら指標は継続的な数値なので、なかなか改善が難しいのでしょう。

特別悪い結果ではありませんが、改善の余地があると言えます。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高・営業利益は年々増加
  • コロナの影響を受けつつも増収増益
  • 研究開発費はかなり多め

2-4-1. 売上高と営業利益

GRMNの売上高推移

売上高は表の4年間ずっと上昇しています。
特に2018年以降の伸び率が大きく、コロナ感染拡大が起こった2020年も約430百万ドルの売上増となりました。

GRMNの営業利益推移

営業利益も同様に順調に増加しています。
2020年の伸び率が少し落ちていますが、これは研究開発費の増加によるものです。
増加分の内訳は、人件費や自動車OEM関連の費用とされています。

2-4-2. 研究開発費

2020年、売上高は約4,185百万ドル、研究開発費は約706百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約17%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同規模の米国企業では3.5%程度が平均とされており、ガーミンの17%という数値はかなり高いです。

スマートウォッチや航空事業など、常に技術革新を求められる製品を扱っていることも一因だと考えられます。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

売上高、営業利益、研究開発費は成長に期待の持てる数値です。
研究開発費用がかかりすぎているようにも見えますが、売上高に対する比率は毎年同程度なので、事業内容的にも必要な金額なのだと考えられます。

2-5. 補足:ニュース

ガーミンは2020年7月、ランサムウェア攻撃を受けました。
これにより、一般ユーザー向けクラウドプラットフォームや航空パイロット向けアプリが、数日間アクセス不能になるといった被害が出ています。
ガーミンの発表では顧客データへのアクセス・盗難は無かったとされており、株価にも大きな影響はありませんでした。(一時的に約6ドルの下落)

しかし、重要なデータを扱う企業である以上、こういったサイバー攻撃のリスクに常にさらされているということになります。

3. まとめ

クロとしては、ガーミン(GRMN)は「経営状態は安定しているが、株価には一定のリスクと期待もある」と考えます
優良な銘柄だと思いますが、ポートフォリオ内の比率は控えめにしておきたいです。

なぜ株価下落のリスクを注視するかというと、補足の項目に挙げた”サイバー攻撃などのリスク”もありますが、2007~2008年の大暴落のような”より魅力的な技術・製品が他社から発表されるリスク”が無視できないと考えるからです。
※2007年iPhone発売によるスマホのマップ利用者急増により、GPS事業が大打撃を受けると予想され、株価は120ドルから15ドルまで下落。赤字にはならなかったが2007~2010年までの3年間で売上が1,000百万ドルの減少となった

一度は大暴落した株価も、ウェアラブル・フィットネス事業での成功などを経て再び上昇し、現在は大暴落の前につけていた最高値の水準まで戻ってきました。
しかし最新技術は常に移り変わっていくので、例えば他社から画期的なグラスタイプのデバイスが発売されることがあれば、再びガーミンの株価が下がってしまう可能性もあります。

また、決算書で見た安定性はかなり優秀コロナの影響を受けても増収増益となっていることは、社会情勢に不安のある今の状況(2020年3月8日時点)では魅力的です。
ROE・ROAの上昇はほぼなく、いわゆる成長期ではありませんが、売上と資産は年々増加しているので、一定の収益率でも利益額は増加しています。

また、配当については2012年まで確認できましたが、この期間の年間配当の減配は一度もありませんでした。
直近2020年の配当性向は約47%と高めの数値で、株価122ドル(2020年3月8日時点)での配当利回りは2%です。

今回の記事はGarmin Ltd.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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