グリニッジ・ジェネレーション・ホールディングス(Greenidge Generation Holdings Inc / GREE)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Greenidge Generation Holdings Inc(GREE)について
1-1. 業種
仮想通貨(暗号資産)マイニング、エネルギー(発電)
1-2. 事業の概要
グリニッジ・ジェネレーション・ホールディングスは、発電事業とビットコインのマイニング事業を行う企業です。
炭素の排出が少ないエネルギー減を利用し、二酸化炭素排出量を相殺することで、100%カーボンニュートラルな発電・ビットコインのマイニングを目指しています。
2021年9月に、ネットワーク構築やセキュリティなどのクラウドベース・ソフトウェアサービスを提供するSupport.com, Inc(ティッカー”SPRT”で取引されていた)と合併し、IPOを果たしました。
なお現在も完全子会社として、この事業は継続されています。
ビットコインのマイニング事業では、獲得したビットコインの95%~100%を米ドルに交換(売却)しています。
また、2021年12月末時点のハッシュレートは約1.4EH/sですが、これから設備投資を行い、この容量を急速に増やす予定です。
このマイニング能力の拡張が予想通りに進んだ場合、2022年末までに4.7EH/sのハッシュレートとなる見込みです。
発電事業では、購入した天然ガスによって生み出した電力をNYISOに販売(発電所はニューヨークに設置されている)しています。
この事業で生み出した電力でビットコインのマイニングも行っているのですが、事業説明では、電力需要に対応するためにマイニング事業を一時的に停止する可能性もあることが述べられています。
また、ビットコインのマイニング施設はニューヨーク以外にも複数あり、全てを自社で発電した電力でまかなっているわけではありません。
ただ、その場合もカーボンニュートラルな電力という観点は重要視されているようです。
1-3. チャート
グリニッジ・ジェネレーション・ホールディングスの株価チャートはこのようになっています。
最近は値下がりが続いており、ビットコインの価格との相関関係は比較的弱い状態でした。
しかし、2022年3月31日の決算発表後、株価は一時急上昇しています。(2022年4月3日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 合併に伴う株式発行、債務による資金調達あり
- 自己資本比率は62%と高い
- ビットコインは売却している
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”おおむね安心タイプ”です。
大きな施設・機械が必要な事業を行っているので、固定資産は大きいです。
また、合併のための株式発行、債務による資金調達を行い、資本も急増しました。
流動比率、当座比率は200%を超えており、ひとまずの資金繰りには問題ありません。
固定比率が100%を超えていますが、純資産と固定負債でまかなえているので許容範囲内だと言えるでしょう。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は62%と高い数値です。
負債が増加していますが、合併に伴って株式を発行した影響も大きいようです。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
営業活動では、現金の動きが伴わない費用などが調整され、最終的にプラス収支となりました。
大きな調整となったのは、のれんの減損分の戻入れです。
投資活動では、土地・設備へ投じた資金が非常に大きく、マイナス収支となっています。
財務活動では、株式発行、新たな債務からの収入が大きく、プラス収支です。
2-1-4. 項目まとめ
事業が赤字ですが、のれんの減損分が調整され、営業活動によるキャッシュフローはプラス収支となりました。
この調整が無かった場合は約2百万ドルのマイナス収支となる計算ですが、獲得したビットコインを積極的に売却していることもあり、他のマイニング銘柄より現金収入は安定しそうです。
また、資産の流動性・自己資本比率はひとまず安心できる水準です。
2-2. 収益性
- 事業はまだ赤字
- 2021年度は資本急増・赤字拡大で参考にならない
2-3. 経営の効率
- 売上・資本どちらも急増し回転率は低い
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率
他のマイニング銘柄と同様、資産・資本が大きいため、回転率は全体的に低いです。
ただ、総資本回転率が0.3回程度あるので、0.1~0.2回の他マイニング銘柄よりは少し高めだと言えます。
また、棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
大きな設備が必要となる事業なので仕方ないことですが、回転率は低めです。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上の8割がマイニング事業によるもの
- マイニング事業の粗利率は78%
- のれん減損・合併費用を除けば黒字
- 2021年度は売上・営業損失急増
- 研究開発費はなし
2-4-1. 売上高と営業利益
2021年度の売上は前年の約5倍となりました。
この売上の伸びは、売上全体の82%を占める(2021年度実績の比率)ビットコインのマイニング事業によるものです。
なお、ごく一部ホスティングなどのサードパーティによる収益もこの中に含まれていますが、この収益は2021年度で終了します。
残り18%の売上は、発電事業、買収したSupport.com, Incの事業によるものです。
2021年度は営業損失も急増しています。
天然ガスの価格上昇で電力の原価が大きくなった上、マイニング事業の収益拡大に伴って消費電力が増えたことが原価コストを膨らませました。
他にも、事業に関する費用が全体的に大きくなっています。
また、2021年度はのれんの減損、企業合併に関連した費用も大きく、利益圧迫・損失拡大につながっています。
ちなみにこの2つの費用の合計は営業損失額より大きく、この費用が無かった場合には営業利益が発生していたと考えられます。
なお、全体の粗利率は68%、ビットコインマイニング事業の粗利率は78%です。
電力事業の粗利率が約2%と低く、全体的な粗利率を押し下げる要因となっています。
2-4-2. 項目まとめ
ハッシュレートが少々低いですが、マイニング事業の売上は前年の約5倍となりました。
また、売上と原価のみを見れば3つの収益全てが黒字です。
一時的と考えられる減損や合併費用を除けば営業利益が発生する見込みである点、ビットコインの採掘量増加に期待できる点(マイニング事業の設備投資を急速に進める予定としている)から、成長に期待したいです。
ただ、設備投資に大きな支出が必要になりますし、原価・減価償却などの費用も大きくなりそうです。
3. まとめ
クロとしては、グリニッジ・ジェネレーション・ホールディングス(GREE)は、期待したい面も大きいですが一旦購入を見送りたいと思います。
カーボンニュートラルな発電によるマイニングを目指しており、ビジネスモデルは世界的な風潮にマッチしていますが、自社の発電に使用する天然ガスが値上がり傾向のため、逆風になるのではないかと考えるからです。
また、他のマイニング銘柄と異なる点として、一部の電力を自給自足していることの他に、獲得したビットコインのほとんどを売却していることが挙げられます。
これは現金収入に繋がるため、キャッシュフローの観点では比較的安心できます。
ハッシュレートがライオット・ブロックチェーン(RIOT)やマラソン・デジタル・ホールディングス(MARA)と比べて低いため、競争力は少々気になる部分ではありますが、この点にはこれから注力していくことが宣言されており、つい先日、融資と債券による1億ドル規模の資金調達成功も発表されました。
なお、月ごとの採掘量が公表されておらず直近の様子がわかりませんが、2021年度第4Q(10月~12月)は609BTC(前年同期は228BTC)、年間では1,866BTC(前年は1,146BTC)を生成しています。
今回の記事はGreenidge Generation Holdings Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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