GAAPとNon-GAAP(非GAAP)_何が違う?

ツール・用語・参考サイトの紹介
スポンサーリンク

決算を見ているとGAAP利益(損失)とnon-GAAP利益(損失)もしくは非GAAP利益(損失)という言葉が出てきます。
同じ”利益”という項目のはずですが、この2つの指標では金額が大きく異なることも多いです。

今回はこの違いは何なのかという点と、見る際に気を付けておきたいポイントをわかりやすく解説します。

  • GAAPは会計基準に基づいた正式な数値
  • non-GAAPは一時的な損益を省いた、継続事業からの純粋な数値
  • 株式報酬を一時的と見なすことで利益額が大きく影響を受ける

1. GAAPとは何か

GAAPは、Generally Accepted Accounting Principlesという英語の略で、”ギャープ”と読みます。
元の英文を訳すと”一般に公正妥当と認められた会計原則”となり、アメリカでは米国会計基準のことを指します。

このGAAPに従って計算された利益がGAAP利益で、統一された会計ルールのもとに算出された、正式な利益だと言えます。

GAAPという言葉の付くキャッシュフローやEPSに関しても同様です。

2. Non-GAAPとは何か

Non-GAAP、もしくは非GAAPは、先ほどのGAAPで導き出された利益や損失から”一時的な損益”を省いたものです。

一時的な要因による利益や損失を除いて計算することで、継続事業から生み出した純粋な利益を知ることができます。

3. 具体的にどこが違う?ポイントは?

GAAPとnon-GAAPの違いを見てきましたが、実際の金額の差異は、どういった経緯で生まれるのでしょうか?
その主な要因を、2つご紹介します。

3-1. 事業の売却

事業を売却すると、売却した事業自体の価値と売却価格との差によって、売却益もしくは売却損が発生します。

この損益は本業から生み出されたものではなく、今後も継続的に発生しないと考えられるため、non-GAAPでは省いて計算されることが多いです。

3-2. 株式報酬費用

株式報酬費用は非常に大きな要因です。
特にグロース銘柄ではnon-GAAP指標を提出する際に頻繁に調整され、企業によってはかなり大きな金額の差が発生します。

株式報酬費用とは、役員や従業員へ付与されるストックオプションなどのことです。
企業としては現金(キャッシュ)の節約となり、更に今後値上がりする可能性のある自社株を付与することで、従業員のモチベーション向上にもつながる報酬形態です。

株式報酬自体は悪いものではありませんが、グロース企業の多くが”株式報酬は経常的な費用ではなく、いずれなくなる一時的なもの”と見なしており、non-GAAPの計算の際に省いてしまうため、GAAP利益(損失)と大きな差が生まれる要因となってしまっています。

では、実際どのような差が生まれるのかを、実際の企業の決算数値を使って紹介していきます。

3-2-1. 例:ジースケイラー(ZS)

セキュリティゲートウェイを提供し、ナスダック100指数へ組み入れられたばかりのジースケイラーの実際の指標を見てみます。(なお、ジースケイラーは7月締め決算です)

    2021年営業利益(損失)の比較
  • GAAP営業損失:207,812千ドル(約2億800万ドル)
  • non-GAAP営業利益:77,961千ドル(約7,800万ドル)
  • 約2億8,600万ドルの差

このGAAPとnon-GAAPの差額のうち、約2億7,850万ドルは株式報酬とそれに関する税金の調整です。
ほとんどが株式報酬の影響であることがわかります。

3-2-2. 例:クラウドストライク(CRWD)

データベースを蓄積していくクラウド型のサイバーセキュリティ大手、クラウドストライクの決算も見てみます。(なお、クラウドストライクは1月締め決算です)

    2021年営業利益(損失)の比較
  • GAAP営業損失:92,529千ドル(約9,250万ドル)
  • non-GAAP営業利益:62,352千ドル(約6,200万ドル)
  • 約1億5,500万ドルの差

このGAAPとnon-GAAPの差額のうち、約1億5,000万ドルは株式報酬だとされています。
こちらもほとんどが株式報酬費用の調整によって金額に差が生じていることがわかります。

4. non-GAAP指標はどう見るべき?

4-1. 株式報酬費用について

このnon-GAAP指標の扱い、中でも株式報酬費用をどう見るべきかという問題には、様々な意見があります。

クロとしては、株式報酬も継続される費用として捉えて決算書を見ています。
事業売却などの他の要因と比較して、何年にもわたって大きな金額が計上されている株式報酬は、決して一時的損益とは言えないと考えているからです。
そのため、このサイト内ではGAAP指標に重点を置いて数値を紹介しています。(例外として、四半期EPSに関しては、使用されることの多いnon-GAAP数値=調整後EPSを掲載しています)

また、ストックオプションを付与し続ければ株式の希薄化につながるなど、別のデメリットが発生することも予測されます。

ちなみに有名な投資家であるウォーレン・バフェット氏も、過去ツイッター(TWTR)の株式報酬について”経常的なもので、費用とすべきである”という旨の発言をしたことがあります。

4-2. 内訳をチェック

株式報酬費用について大きく取り上げましたが、non-GAAPの調整にはそれ以外の要因もあります。
前述した事業売却や、一時的な資産の償却、買収関連費用などがその例です。

そのためnon-GAAP指標を見る場合は、調整の内訳を確認し、内容を把握することが重要になります。

また、株式報酬自体は現金支出を伴わず、キャッシュフロー計算書では戻入れられるという特徴があるので、キャッシュの面から見た場合は株式報酬を省いたnon-GAAP指標も一つの参考になり得ます。

5. まとめ

今回はGAAPとnon-GAAPの違いについてまとめました。

企業によっては赤字を黒字に変えてしまうほどの大きな差を生む調整なので、利益やEPSなどを見る際には、GAAP数値なのか、non-GAAP数値なのかをチェックするようにしておきたいです。

記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました