ジェイフロッグ(Jfrog Ltd / FROG)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Jfrog Ltd(FROG)について
1-1. 業種
パッケージソフトウェア、サービス
1-2. 事業の概要
ジェイフロッグは、継続的に更新されるバージョンのないソフトウェア、リキッド・ソフトウェア(Liquid Software)をビジョンに掲げ、DevOps、それにセキュリティを加えたDevSecOpsプラットフォームを提供する企業です。
企業・機関、組織にとってソフトウェアが非常に重要となっている現在の社会で、”ソフトウェアが常に安全に最新状態にアップデートされる”環境を目指し、ソフトウェア開発及びリリースに関するソリューションを展開しています。
製品の中心となる、ソフトウェアパッケージを保存・更新・管理するユニバーサル・パッケージ・リポジトリ”JFrog Artifactory”の統合プラットフォームには、プロセスの自動化、脆弱性やコンプライアンス問題のスキャン、リリースなど、CSRM(ソフトウェアリリース管理)に必要な各種機能が揃っており、米国防総省のセキュリティ認証も受けています。
DevOpsは自動車メーカーからも注目されている手法・概念で、研究や先行開発領域においてトヨタグループ内の連携や開発加速を担うウーブン・プラネット・グループも、JFrog Artifactoryを採用しました。
また、新規ユーザーの利用しやすさも利点です。
ジェイフロッグの製品はAWS、Microsoft Azure、Google Cloudといったパブリッククラウドでも(SaaS)オンプレミスでも利用可能で、様々なDevOps関連ツールとも連携できるようになっているのです。
なお、無償で利用できるOSS(オープン・ソース・ソフトウェア)として基本機能を公開し、付加価値となる機能・サービスを有償とするビジネスモデルをとっています。
1-2-1. DevOpsとは
DevOpsとは、”Development”と”Operation”を組み合わせた言葉の略称で、デブオプスと読みます。
デベロッパー(開発者)とオペレーター(運用者)の相互的な協力によって、効率的かつ柔軟で迅速なシステム・ソフトウェアを開発する手法、またはその概念などを意味し、適切なツールを利用して(ジェイフロッグはこのツールを提供している)チームの連携を高めることを指します。
具体的には、自動化によってヒューマンエラーの発生を防ぎつつ人員の余計な負担を減らし、ツールによる最適化された情報共有で効率を高めることなどが挙げられます。
1-3. チャート
ジェイフロッグの株価チャートはこのようになっています。2020年9月にIPOした直後は大きく上昇したものの、その後の株価は右肩下がりです。
しかし、2021年11月4日の四半期決算発表を受け、株価は一時急上昇を見せました。(2021年11月22日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- IPOしたばかりなので資金は潤沢
- 赤字続き
- 株式報酬が多額という面はあるが
営業活動によるキャッシュフローはプラス収支
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
IPOからあまり時間が経っていないこともあり、流動比率は約532%、当座比率は約518%と短期的な資金繰りには問題ありません。
固定比率も7%と良好です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は80%で、現状は非常に高い数値です。
しかしIPOした企業の大半がそうであるように、IPO前の決算では債務超過状態でした。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
事業は赤字ですが、株式報酬費用の戻入れとサブスク形式による繰延収益で、営業活動はプラス収支となっています。
また、投資活動は短期投資を大量に購入したためマイナス収支です。
IPOによって調達した資金をいったん投資に回していると考えられます。
財務活動のプラス収支は、IPOによって多額の資金を調達したためです。
2-1-4. 項目まとめ
IPOしたばかりということもあって、現状は資金繰りに問題はありません。
ただ、この記事を書いている2021年11月時点の最新決算(第3Q)でも事業は赤字が続いており、累積赤字は116百万ドルとなっています。
2-2. 収益性
- 赤字続きでROE・ROAはマイナス
- IPOによって資産が増え数値が多少改善したものの
損失額は増加中
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
赤字続きのためROEもマイナスです。
2019年にマイナス値が小さくなったのは純損失額を縮小したためですが、2020年はIPOによる自己資本の増加が影響しており、損失額は前年より増加しています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROE同様に上下しています。
2-2-3. 項目まとめ
2019年に一旦縮小した純損失ですが、2020年に再び増加し、記事作成時点で既に終了している2021年の9ヶ月間を前年同期と比較しても更に増加しています。
ただ、IPOによって資産が増加したため、ROE、ROAのマイナス値は小さくなりました。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率がまだまだ低い
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は最低ラインの1回を大きく下回っています。
また、IPOによる資産増加が起きる前の2019年、2018年も低い数値でした。
なお、棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
資産の大きさに対して売上がかなり小さい状態です。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上は増加中
- IPOや買収で人件費が増え営業損失も増加中
- 売上高研究開発費率は平均の6倍以上
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は力強く増加しています。
2019年から2020年にかけては44%増加しており、記事作成時点の最新決算である第3Qを見ると、1月~9月の9ヶ月間は前年同期比36%の成長です。
この売上増加分のうち、いずれも80%以上が既存顧客の売上拡大であり、顧客単価を引き上げることはできているようです。
新規顧客からの影響は増加分の20%を切っていることになりますが、これらの顧客が更に追加機能などを購入するようになれば、今後も成長していけそうです。
営業損失は、2020年に再び増加しています。
また、記事作成時点では2021年も更に損失が増加しています。
IPOに関連する株式報酬費用の増加や、2021年は買収による人員増加があり、人件費が大きく増えているようです。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約150.83百万ドル、研究開発費は約41.11百万ドルだったので、売上高研究開発費率は27.3%で、平均の約6.2倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.4%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上が順調に増加しており、既存顧客の客単価を引き上げられている点、研究開発に意欲的な点は期待できます。
ただ、一方で費用が増加し、損失額も増えています。
売上はまだまだ成長していくでしょうが、もうしばらく赤字が続きそうです。
3. まとめ
クロとしては、ジェイフロッグ(FROG)は更なる成長に期待したい銘柄です。
ただ、まだしばらく赤字は続きそうですし、多くのIPO企業と同じく少量の保有に留めておこうと思います。
ソフトウェアの更新に関するトラブルは様々ですが、2018年12月に起きたソフトバンクの通信障害のように大規模なものもあります。
今後ますます多くの場面でソフトウェアが使用されて行く中で、こういった問題の解決策の一つとなるジェイフロッグは、更なる成長が見込めるのではないかと期待しています。
今回の記事はJfrog Ltdの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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