シフト4ペイメンツ【FOUR】銘柄分析_多数の決済サービス/ソフトウェアを包括的に提供

米国株の年次決算書・銘柄分析
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シフト4ペイメンツ(Shift4 Payments Inc / MELI)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Shift4 Payments Inc(FOUR)について

1-1. 業種

電子テクノロジー、業務支援サービス

1-2. 事業の概要

シフト4ペイメンツは、様々な決済プラットフォームや業務ソフトウェア・テクノロジーソリューションを包括して提供する企業です。

特に中心となるのは決済プラットフォームの製品・サービスで、これによって顧客(加盟店)は、各種クレジットカードやApple pay、Google payなどを一括して導入・管理することができます。
収益の大部分もこの支払処理によるものです。

また、EMV(ICチップ搭載クレジットカードの統一規格)ソリューション、P2PE暗号化(クレジットカードの読み取り端末から決済ネットワークまで暗号化したまま送信する)ソリューション、支払いデータのトークン化などの高度なセキュリティによる独自ペイメント・ゲートウェイによって、安全な決済を提供しています。

他にも、”ECソリューション””POSシステム”、更にPOSシステムとシームレスに統合する”認定済みサードパーティアプリケーションを提供するマーケットプレイス”など、加盟店を幅広くサポートするサービスが充実しています。
POSやソフトウェアブランドのパートナーが多数おり、マーケットプレイスのアプリケーション内容は、従業員のスケジュール管理、在庫管理、オンライン予約など多様です。

■マーケットプレイスの例:加盟店のレストランが、フードデリバリーサービスDoorDashをマーケットプレイスから導入(ベンダー数を増やさずに導入できる)し、既存のPOSシステムで受注する

顧客は中小企業~大企業と幅広く、飲食、宿泊、レジャーが中心です。

1-3. チャート

シフト4ペイメンツの株価チャートはこのようになっています。2020年6月にIPOが完了して以来、上下しつつも着実に株価を上昇させていましたが、2021年4月末~5月の市場の波もあって、一時的に下落しました。
その後程なく持ち直したものの、最近は下降傾向にあります。(2021年9月9日)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • ひとまずの資金繰りは問題なし
  • 自己資本比率は低め
  • 事業は赤字だが、買掛金・支払額増加で
    フリーキャッシュフローは黒字

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるFOUR貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”おおむね安心タイプ”です。

流動比率は約1,040%、当座比率は約1,030%で、IPOしたばかりということもあり、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率は約162%と高いですが、固定資産を純資産と固定負債でまかなえているので最低条件はクリアしています。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は26%で、IPOから時間が経っていませんが少々低めの数値です。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。

事業は赤字ですが、減価償却と株式報酬の戻入れが大きかったことなどから営業活動はプラス収支です。

投資活動のマイナスは主に買収(特にECソフトウェアプラットフォームの3dcart)によるものです。

財務活動は、IPOによる株式発行、長期債務の借入によって大きくプラスとなっています。

2-1-4. 項目まとめ

ひとまずの資金繰りには問題なさそうですが、キャッシュフローのバランスがあまりよくありません。
営業活動がプラス収支なのは良い点ですが、長期債務が資本の中でかなり大きな割合を占めています。

2-2. 収益性

  • 赤字続き
  • 2020年は損失減少&IPOで自己資本増加

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

FOURのROE(自己資本利益率)推移【2020年】

赤字が続いています。
2019年のROEマイナス値が非常に大きいですが、これは自己資本が小さくなってしまったために起きたことで、損失額は前年とほぼ変わりません。

また、2020年はIPOによって自己資本が増加したことと、最終的な損失額が減少したことで、大きくマイナス値を減らすことができました。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

FOURのROA(総資産利益率)推移【2020年】

ROAもROEと同様に変動していますが、総資産には自己資本のような減少が起こっていないため、変動幅は小さいです。

2-2-3. 項目まとめ

赤字続きですが、2020年は損失額が小さくなっています。
ただ、この2020年末では利益を生み出せていません。

2-3. 経営の効率

  • IPOの影響もあって総資本回転率は低い
  • 棚卸資産は少ないビジネスモデル

2-3-1. 各回転率

FOURの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率【2020年】

総資本回転率は0.4回と最低ライン1回の半分にも達していません。
2020年末時点では、IPOによって資産が大きくなっているので、その影響もあるでしょう。
また、買収を繰り返しているため、のれんや無形固定資産も大きいです。

固定資産回転率は約1回で、ここにも買収の影響が表れています。

棚卸資産回転率は500回を超える高い数値となっていますが、在庫として持つ必要があるのはクレジットカード・デビットカード用端末、POSシステム、電子キャッシュレジスターくらいなので、大きく膨らむことはほぼありません。
また、2020年6月からSaaS契約をオペレーティング・リースとして処理するようになったため、これまで”棚卸資産”として計上していたリース用機器が別の勘定で計上されるようになり、棚卸資産の減少につながりました。

2-3-2. 項目まとめ

IPOの影響もありますが、もっと売上を伸ばしたい数値です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高は増加継続
  • 2020年はコロナ感染拡大で打撃を受けた
  • 管理費が年々増加
  • 売上高研究開発費率は低い

2-4-1. 売上高と営業利益

FOURの売上高推移【2020年】

売上は増加を続けていますが、加盟店獲得に注力してきたレストランやレジャーなどの分野がコロナ感染拡大によって大きな打撃を受けたため、2020年はあまり大きく伸びませんでした。

FOURの営業利益(損失)推移【2020年】

2020年は最終的な純損失が減少しましたが、事業からの損失はむしろ大きく増加しています。(最終的な純損失の減少は、100%に満たない株式を保有する子会社と、損失額を配分したため。営業損失を算出する時点では、子会社分の損失も含まれている)

最も大きく増えた事業内費用は管理費で、株式報酬の増加が原因です。

コロナの影響でマーケティングイベントが中止になり、一部費用が浮いたりもしましたが、他の費用の増加と比べると小さな金額でした。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約766.9百万ドル、研究開発費は約1.2百万ドルだったので、売上高研究開発費率は0.0015%となります。これは非常に低い値です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされている)

なお、2020年の研究開発費が特別少ないわけではなく、2018~2019年も1.6百万ドルでした。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

売上高が増加を続けており、成長性はありそうです。(記事作成時点の最新決算となる第2Qでは、売上が大きく増加中)

ただ、売上高研究開発費率の低さは気になります。
自社のソフトウェアというよりも、パートナーのソフトウェアを束ねるソリューションの提供を行うビジネスモデルなので研究開発にはあまり注力する必要がないのかもしれませんが、なかなか見ない数値なので、頭には入れておきたいです。

3. まとめ

クロとしては、シフト4ペイメンツ(Shift4 Payments Inc)は事業内容は面白く、コロナからの回復を期待したいが、随時リリースに気を付けたい銘柄です。

ペイパルスクエアが競合になると考えられますが、決済以外のソリューション提供など、この2社とは少々異なったサービスを展開しており、特に飲食、宿泊、レジャーに多くの加盟店を持っています。
デルタ株の不安が落ち着けば、再び株価が上昇する可能性はあるのではないかと思います。

なお、この記事作成時点での最新決算となる第2Qでは既に売上を大きく伸ばし、利益を出して黒字となっています。

一方で研究開発にあまり資金を投じていない点、IPOからあまり時間が経っていないにもかかわらず自己資本比率が既にあまり高くない点(負債が大きい)は少々気になります。
特に負債の返済については毎回決算でチェックしておきたいです。

今回の記事はShift4 Payments Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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