11月2日~3日に行われていたFOMC (米国連邦公開市場委員会) の議事録が公表されました。
- インフレは一時的も”長期化”を懸念
- テーパリング加速議論があった
- フェデラル・ファンド金利引き上げ前倒し主張も
- これらは11月10日のCPI発表前の議論
早速内容を見ていきましょう。
1. テーパリングとは
テーパリングとは、現状行われている金融施策”量的緩和”(国債などの金融資産を国が大量に買い入れることによって、金融市場に資金を供給する施策)の出口戦略です。
FRBの量的緩和では、国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券を月400億ドル買い入れていますが、経済が回復したと判断された場合、テーパリングによってこの買い入れ量を減らし、最終的に買い入れを終了することになります。
11月3日に発表されたFOMCの声明で、テーパリング開始決定が発表されました。
2. 声明で発表されていた内容
インフレは一時的なものという見方を維持し、11月からテーパリングを開始することとそのペース、そしてFF金利の目標が公表されました。
テーパリングのペース、つまり毎月の買い入れ(量的緩和)の縮小量は、毎月国債100億ドル、住宅ローン担保証券50億ドルずつとし、11月の買い入れは国債700億ドル、住宅ローン担保証券350億ドルに、12月は国債600億ドル、住宅ローン担保証券300億ドルになる予定でした。
ただし、市場や経済的な見通しが変動した場合は”これらの縮小ペースを調整することも視野に入れている”と念押しもありました。
また、政策金利であるFF金利については、0~0.25%付近に据え置くとされていました。
3. 議事録からの新たなポイント
3-1. インフレの長期化を懸念
インフレは一時的なものという見方は変わらないものの、”予想以上に長引く可能性がある”という見方をする委員が多くいました。
このインフレ圧力の要因として、新型コロナのデルタ株によるサプライチェーンへの影響、エネルギー価格の上昇、賃金や住宅の賃貸料の上昇が挙げられています。
2022年にはインフレは鈍化するという議論もありますが、新型コロナの更なる変異株によるリスク(もしまたデルタ株のような強力な波が来れば、更にインフレは強まる)など不確実性が高いとしています。
3-2. テーパリングのペース加速
テーパリングによる資産購入の削減・縮小量は毎月150億ドル(国債100億ドル、住宅ローン担保証券50億ドル)と発表されましたが、一部の委員は、インフレ懸念などから”毎月150億ドル以上”の更なる買い入れ量縮小を主張していたことがわかりました。
3-3. FF金利目標引き上げの前倒し
テーパリングによる削減・縮小量の増加に伴い、早期にFF金利の目標を引き上げられるよう準備すべきだという主張もありました。(テーパリングの終了がFF金利引き上げ実施の一つの前提となる)
3-4. 1月以降の削減量は明言なし
これは新たにわかった内容というわけではありませんが、先日のFOMCの声明の中で、テーパリングによる縮小量としてはっきり明言されていたのは11月と12月のみでした。
今回の議事録の内容を見ると、12月も気になるところではありますが、1月以降のテーパリングのペースに調整が入るかもしれません。
テーパリングによる縮小量が変わらなければ2022年5月の購入で完了する見込みですが、それより早まる可能性が出てきています。
4. まとめ
ほぼ市場の予測通りだった先日の声明でしたが、議論の中では更なるテーパリング加速が主張されるなど、楽観視しづらい内容が含まれていました。
また、これが11月10日のCPI発表(10月分数値の発表)より前に論じられていたという点もポイントです。
4-1. 次回CPI発表・FOMC
次回のCPI発表は12月10日です。
また、12月のFOMCは14日~15日に予定されています。
株式市場にも影響が出る可能性が高いので、注意しておきたいです。
なお、前回のテーパリング実施時の指数や市場の推移をまとめた記事もあるので(今回はテーパリング発表と実施がほぼ同時で、前回とは少々違うステップを踏んでいますが)よろしければぜひご覧ください。
記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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