メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms Inc / 旧Facebook Inc / FB)の決算書(10-K)・銘柄分析について、2021年年次決算の内容を踏まえ更新しました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Meta Platforms Inc(FB)について
1-1. 業種
インターネットサービス、電子テクノロジー・サービス・ソフトウェア、電子機器、メタバース
1-2. 事業の概要
メタ・プラットフォームズは、FacebookやInstagramといった世界的に人気の高いSNSサービスや、メッセージングアプリケーションMessengerを提供しています。
2021年に社名変更を行ってメタバース企業となることを宣言し、既存のSNSやその他アプリケーションを手掛ける”Family of Apps”、ARやVRの研究開発・製品化を行う”Reality Labs”という2つの事業を柱とした形になりました。
メタバースに関する取り組みとして、現在(記事作成時点)は電源との接続を必要としない一体型VRヘッドセット”Meta Quest2(旧Oculus Quest2)”を販売しており、VRヘッドセットの中でトップクラスの人気を誇っています。
また、2021年12月から、米国とカナダ向けに、メタバースアプリ”Horizon Worlds”の公開を開始しました。
現状は売上の98%をFamily of Appsセグメントから生み出している状態ですが、Reality Labsの売上は、2020年に前年比127%増加、2021年に前年比100%増加と、大幅に成長しています。
なお、VR世界(メタバース)の中に広告を設置する取り組みを発表していましたが、2021年6月にテストを中止して以来、進展が発表されていません。
1-2-1. ユーザー数の変化
これまで増加を続けてきたユーザー数の伸びに陰りが出てきました。
四半期ごとのデイリー(日間)アクティブユーザーが、2021年第4Qに初めて前期を下回ったのです。
2021年第3Qは19億3,000万人だったアクティブユーザーが、第4Qは19億2,900万人となり、約100万人の減少を表しています。
月間アクティブユーザーでは減少こそしていないものの、2021年第3Qが29億1,000万人、第4Qが29億1,200万人で、やはり伸び幅が小さいことがわかります。
また、Facebookに限らず、Instagramなどの他のアプリも含め、”1つ以上の同社のアプリを利用したユーザーの数”を表す指標を見てみます。
デイリー(日間)での2020年末のユーザー数は26億人でしたが、2021年末は28.2億人で、8.5%程度しか増えていません。
さらに言えば、2021年第3Q時点で既に28.1億人だったため、第4Qではほとんど増えていないことがわかります。
月間では、2020年末に33億人、2021年末に35.9億人(8.8%の伸び)となっていますが、デイリーと同様に第3Q時点で35.8億人に達しており、第4Qはほとんど増加していませんでした。
ユーザー一人当たりの平均収益は増加していますが、これまで増加の一途を辿っていたユーザー数が減少したことは、大きな衝撃となり、20%以上の株価急落を引き起こしました。
1-3. チャート
Facebookの株価チャートはこのようになっています。
新型コロナ感染拡大による下落(2020年2月頃)から回復すると、停滞しつつも上昇傾向にあった株価ですが、2021年9月に運営や体質の問題を告発されたのをきっかけに下降し始めました。
そして2021年第4Qの決算発表を受け、株価は大きく下がっています。(2022年2月4日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は高い
- キャッシュフローも安定
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約315%、当座比率は約259%で、流動性は十分です。
固定比率も約80%で、昨年よりは高くなりましたが問題のない数値です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約75%で、昨年より下がりはしたものの、非常に高い数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2021年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”の組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
事業から安定したキャッシュを生み出しています。
2021年は自社株の買戻しへの支出が大きく、2020年の7倍もの資金を投じています。
2-1-4. 項目まとめ
安定性は十分あります。
2-2. 収益性
- ROE・ROAどちらも平均を大きく超える
- 2021年は2020年を上回る収益性
- 第4Qは純利益が前年同期比8%減
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
自己資本が少々減少した影響もありますが、2021年は売上増加に伴って純利益も増え、ROEは米国平均の2倍近い数値となっています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAも高く、2021年は平均上限値の3倍近い数値です。
2-2-3. 項目まとめ
収益性は非常に高いです。
第4Qでユーザー数が減少に転じた点は気がかりですが、2021年は高い収益性を維持していました。
ただ、第4Qに限って見ると、純利益が前年同期比8%減少という結果になっています。
なお、2019年の数値が低いのは、FTCとの和解金50億ドル(Facebookユーザーデータの一部がケンブリッジ・アナリティカ社を通じて政治的利用された件による)が利益を圧迫したためです。
2-3. 経営の効率
- 有価証券保有などで回転率は今ひとつ
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率
売上が増加し、回転率は上昇しました。
総資本回転率も、許容範囲にはギリギリ届かないものの、昨年の0.5回より改善しています。
昨年ほどではないですが、直接事業に関係ない有価証券(政府や企業の証券)を多く持っていること、そして買収によって”のれん”をはじめとした資産が大きいことが、回転率の低下に影響しています。
また、棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
回転率は今ひとつですが、昨年より改善しました。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2021年通年の売上・利益は大きく増加
- 売上高研究開発費率は平均の約6倍
- メタバース事業は売上成長率100%だが102億ドルの赤字
2-4-1. 売上高と営業利益
年間売上は増加を続けており、2021年は前年比37%という高い成長率を記録しました。
また、メタバース関連事業となるReality Labsセグメントの売上は、2020年に前年比127%増加、2021年に前年比100%増加となっています。
2019年にFTCとの和解金50億ドルが発生し、一度営業利益は減少しましたが、その後は再び増加しており、2021年は前年比43%の成長を見せています。
また、従業員の増加に伴って、各種費用も増えました。
メタバース関連事業のReality Labsに限って見ると、2020年に6,623百万ドル(約66億ドル)の損失、2021年に10,193百万ドル(約102億ドル)の損失が発生しており、2021年の損失は前年比54%増加していることになります。
2-4-2. 研究開発費
2021年の売上高は約117,929百万ドル、研究開発費は約24,655百万ドルだったので、売上高研究開発費率は21%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※11万人以上の従業員規模の平均は3.5%とされており(Facebookは約72,000人)、研究開発費率は平均の約6倍という結果です。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
2021年の通年売上・利益は非常に好調で、ユーザー一人当たりの平均収益も増加していますが、前述したユーザー数の停滞が気がかりです。
Facebookに限らない(メタ・プラットフォームズのアプリすべてを対象とした)指標でも、第4Qはほとんどユーザー数が増加しておらず、頭打ちになってきた、もしくは度重なる告発でユーザーが離れてしまった可能性があります。
高成長を続けるメタバース事業(Reality Labs)には期待したいですが、どのように収益化していくのか、以前話していた広告掲載は実現するのか、注視していきたいです。
3. まとめ
クロとしては、メタ・プラットフォームズ(FB)のメタバース事業には期待したいと思っていますが、今は一旦様子を見ようと思います。
Facebookなどの既存事業も非常に収益性が高く魅力的でしたが、アクティブユーザー数と純利益が減少したという点は無視できないと考えるからです。
今後、メタバース事業がどの程度収益化できそうなのか、リリースなどを追っていきたいと思います。
また、現在はティッカーシンボル”FB”を使用していますが、いずれ”META”へ変更される予定となっています。(変更日時は未定)
今回の記事はFacebook Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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