フェイスブック(Facebook Inc / FB)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
■2021年更新版はこちら
1. Facebook Inc(FB)について
1-1. 業種
インターネットサービス、電子テクノロジー・サービス・ソフトウェア、電子機器
1-2. 事業の概要
Facebookは、FacebookやInstagramといった世界的に人気の高いSNSサービスや、メッセージングアプリケーションMessengerを提供しています。
他にもVR(Oculus)製品などを展開していますが、収益の約98%が広告収入(2020年の収益内訳による)です。
ユーザーの画面に広告が表示(インプレッション)されることで、収益を得ることができます。
また、Facebookのアクティブユーザーは現在も増加しています。
1-2-1. VR・ARへの取り組みと成長
Facebookは2014年にOculus VRを買収し、2016年に最初のVRヘッドセットを発売しました。
また、2020年8月にVR・ARに関連する研究組織”Facebook Reality Labs(FRL)”を立ち上げ、2021年初頭では約10,000名(Facebook総従業員のうち約17%にあたる)の従業員がVR・AR関連の業務に従事していると言われています。
この記事を書いている時点での最新機種は、2020年10月に発売した”Oculus Quest 2”で、これは使用する際にPCとの接続などを必要とせず、ヘッドセットのみで動作可能な”一体型VRヘッドセット”となっています。(一部アプリを除く)
FacebookはこのVR内にも広告を設置することを目指しており、一時は広告テストの予定も発表されましたが、ユーザーからの強い反対があり、一旦中止されました。
サードパーティー製ゲームの中に広告を設置することで、VR開発者と共に収益を得る手段となるだろうと考えられていましたが、プライバシーの問題や(Oculus Quest 2の使用にはFacebookアカウントが必須。ヘッドセットカメラの映像や、録音された音声は広告に使用しないと念押しがあった)有料のゲームタイトル内に広告が表示されることが反感を買っています。
これらを受け、無料のゲーム内での広告テストが検討されています。
なお、Oculus Quest 2が発売された2020年10月から12月の第4Qでは、広告外収入が前年同期比156%増加しています。
1-3. チャート
Facebookの株価チャートはこのようになっています。全体的に右肩上がりで、現在は過去最高値の水準です。(2021年7月13日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は80%超え
- キャッシュフローも安定
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約510%、当座比率は約450%で、短期の資金繰りは問題ありません。
固定比率も約70%で優秀です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約81%と非常に高い数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”の組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
全体的に安定しており、自社株の買戻しも行っています。
なお、事業の買収も頻繁に行っています。
2-1-4. 項目まとめ
安定性には問題のない内容です。
2-2. 収益性
- ROE・ROAどちらも優秀
- 資産の増加を追って売上・利益も増加
- 2019年の数値低下はFTCへの和解金50億ドルの影響
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

ROEは米国平均をおおむね超えています。
自己資本比率がかなり高い中で、この利益率はとても優秀です。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAも高く、2020年は平均の3倍近い数値です。
2-2-3. 項目まとめ
収益性は高いです。
2017年と2020年を比較すると、総資産が約1.9倍、売上が約2.1倍、純利益が約1.8倍に増加しており、資産の増加に合わせて売上・利益も増加しているのがわかります。
なお、2019年の数値が低いのは、FTCとの和解金50億ドル(Facebookユーザーデータの一部がケンブリッジ・アナリティカ社を通じて政治的利用された件による)が利益を圧迫したためです。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率はイマイチ
- 有価証券や固定資産を多く保有
2-3-1. 各回転率

総資本回転率は0.5回で、最低ライン1回の半分程度です。
直接事業に関係ない有価証券(政府や企業の証券)を多く持っていることや、買収・事業拡大によって、のれん、建物、ネットワーク機器といった資産が大きいことが影響しています。
また、固定資産回転率は約1回です。棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
総資本の半分程度の売上で、回転率はいまひとつです。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上高は増加を続けている
- 営業利益は2019年以外増加中
- 2019年はFTCとの和解金が利益圧迫
- 売上高研究開発費率は平均の約6倍
2-4-1. 売上高と営業利益

売上高は年々増加を続けています。

営業利益も年々増加していましたが、2019年にFTCとの和解金50億ドルが事業内の費用として発生し、利益が減少しました。
2020年は再び増加に転じています。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約85,965百万ドル、研究開発費は約18,447百万ドルだったので、売上高研究開発費率は21%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※11万人以上の従業員規模の平均は3.5%とされており(Facebookは約59,000人)、研究開発費率は平均の約6倍という結果です。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上・利益が伸び率の大きな鈍化もなく増加を続けており、研究開発にも積極的なことから、成長性はありそうです。
また、製品ラインナップ、ハードウェア製品への投資として、従業員数を増加させており(2019年末と比較して40%増加)、研究開発費の増加にもつながっています。
なお、2020年はコロナ感染拡大によって一時的な広告需要の減少があったものの、その後はオンラインでの商取引が加速し、広告需要が増加に転じたとしています。
3. まとめ
クロとしては、Facebook(FB)は期待したい銘柄です。
FacebookがSNSとして浸透してから時間は立っていますが、現在も着々とユーザー数を増やしています。
これは広告媒体としての魅力につながるため、今後も広告収入の維持に期待が持てます。
また、今はまだ大きな収益に繋がっていませんが、VR事業で様々な取り組みを見せています。
一体型ヘッドセットOculus Quest 2の売れ行きは好調ですし、厳しいアプリ審査というハードルをなくした、公式ストア外のアプリ配信プラットフォーム”App Lab”の提供で、アプリ開発者の参入しやすさも確保されました。
更にVR内で広告が配信できるようになれば、開発者・Facebook両方に収益が見込まれるため、よりVRへの参入・投資が活発になるでしょう。
なお、2021年第1Qも前年同期比で増収増益となっており、VRなどが含まれる広告外収益は146%増加しています。
今回の記事はFacebook Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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