エンフェーズ・エナジー【ENPH】銘柄分析_2021更新版

米国株の年次決算書・銘柄分析
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エンフェーズ・エナジー(エンフェイズ・エナジー / Enphase Energy, Inc. / ENPH)の決算書(10-K)・銘柄分析を2021年決算を踏まえた内容に更新しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Enphase Energy, Inc.(ENPH)について

1-1. 業種

電子テクノロジー、半導体、再生可能エネルギー

1-2. 事業の概要

エンフェーズ・エナジーはマイクロインバーターの先駆的メーカーで、太陽光エネルギーの発電・管理プラットフォームを提供する企業です。

マイクロインバーターを用いた効率的かつ安全性の高い太陽光発電、それに伴うエネルギー貯蔵、そしてそれらの稼働状況、発電量などを監視・制御するソフトウェアなど、一貫したソリューションの開発・製造・販売を行っています。

マイクロインバーターは半導体ベースで、発電効率向上はもちろん、電力を消費する製品のオンオフを自動もしくはアプリ経由(手動)で行う負荷制御、最新のソフトウェアへの自動更新(インターネット経由)、気象システム追跡による自動での電力バックアップコントロールなど、様々な技術が搭載されています。

また、高電圧DC電源を含まないため火災リスクが低く、安全性が高いことも利点です。
ハリケーンなどの様々な気象への耐久性も評価されており、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)からも推奨されています。

2018年にはサンパワーのマイクロインバーター部門を買収しており、更に業界内での存在感を強くしています。

1-3. チャート

エンフェーズ・エナジーの株価チャートはこのようになっています。
2020年9月末から2021年の年明け、2021年10月から11月の間は非常に大きく上昇しており、一時は280ドルを超えていました。しかしその後大きく下落し、現在は最高値の半分の140ドル程度です。(2022年2月12日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 短期の資金繰りは問題なし
  • 転換社債による資金調達を行った
  • 自己資本比率が低下

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”おおむね安心タイプ”です。

流動比率は約333%、当座比率は約307%で、十分すぎる程の数値です。

固定比率は約143%へ急激に上昇してしまいましたが、これは転換社債を発行して資金調達を行ったためです。
この社債の期限は数年先なので固定負債に分類されており、期限の短い流動負債が増えたわけではないので、ひとまず心配はありません。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約21%と、昨年の40%と比較してかなり低くなりました。
この数値の低下は主に転換社債発行による負債の増加や、自社株買いを行った(これまでは行っていなかった)ことによる累積赤字の増加によるものですが、ほぼ最低ラインの数値なので改善に期待したいです。

2-1-3. キャッシュフロー

営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。

事業が黒字で、営業活動からキャッシュを生み出せています。

投資活動では、事業買収と売買・満期保有目的の有価証券購入に多くの資金を投じてマイナス収支となりました。

財務活動では転換社債の発行による資金調達が大きく、最終的にプラス収支となっていますが、これまでなかった自社株の買戻しを行っています。

2-1-4. 項目まとめ

事業が黒字、営業活動によるキャッシュフローもプラス収支、更に流動資産も多く保有しているので特に問題はありませんが、債務による資金調達があったという点は頭に入れておきたいです。

2-2. 収益性

  • 2019年から黒字
  • ROEは平均を超える
  • 総資産が急増も米国平均程度の収益性は維持

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

ROEが米国平均を超えていますが、自己資本が比較的小さいため過信はできません。

また、2020年と比較してROEが上昇していますが、これには純利益の増加と自己資本の減少の両方が影響しています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAは米国平均程度の数値でした。

純利益は昨年より増加しましたが、転換社債発行によって総資産が急増した影響が出ています。

2-2-3. 項目まとめ

総資産が急増した2021年も米国平均程度の収益性があると言えます。

ただ、過去に転換社債やワラントの価値変動に伴う費用が発生し、利益を圧迫したこともあるので、今後も同じようなことが起きる可能性はあります。(現在も転換社債やワラントを発行している)

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率はあと一歩届かず
  • 事業買収で固定資産回転率は低下
  • 製造業としてみると棚卸資産回転率は高い

2-3-1. 各回転率

回転率は昨年とあまり変わりません。

ただ、事業買収によって固定資産回転率が若干低下しました。

総資本回転率があと少し物足りませんが、資産の急増と同じくらい売上も増加しています。

2-3-2. 項目まとめ

売上が増加していますが、資産も増加しているため、回転率はなかなか上がっていません。

なお、棚卸資産は製造業として考えるとかなり高い数値です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高・営業利益ともに増加中
  • サプライチェーンの問題等で利益率低下
  • 売上高研究開発費率は平均以上
  • 関税対策で製造委託先を移行中

2-4-1. 売上高と営業利益

売上は増加を続けており、2021年は前年比78%の成長となりました。
ただ、2021年の高い成長率には、2020年の新型コロナ感染拡大による一時的な需要低下も影響していると考えられます。

営業利益も増加を続けています。
売上程の急激な伸びは無いですが、前年比16%増加しました。

ただ、利益率が低下しており、粗利率は45%(2020年)から40%(2021年)に、売上高営業利益率は24%から16%に下がっています。

これには、2020年には関税払い戻しによる利益増加があったこと、2021年にはサプライチェーンの混乱・輸送費の増加が起きたことなどが影響しています。

利益を確保するため、エンフェーズ・エナジーは、販売価格の上昇、関税緩和のための製造拠点の移行(これは以前から行われていた)などの施策を取っています。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約1,382百万ドル、研究開発費は約105.53百万ドルだったので、売上高研究開発費率は7.6%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.4%とされており、エンフェーズ・エナジーの研究開発費率は平均以上です。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

利益率の低下は気になりますが、売上は大きく伸びています。

また、製造委託先を中国からメキシコ・インドへ移行するなど、利益確保のために積極的に動いているので、今後にも期待したいです。

また、2022年第1Qのガイダンスもアナリスト予想を上回っています。

3. まとめ

クロとしては、エンフェーズ・エナジー(ENPH)は引き続き期待したい銘柄です。

クリーンエネルギーへの移行が重要視される中、太陽光発電、そしてマイクロインバーター技術の需要は更に強まると考えられるからです。

SDKI Inc.が2021年10月に発表したレポートによると、マイクロインバーターの市場は「2022年に41.4億米ドルの市場価値から、2030年までに142.4億米ドルに達すると推定され、2022-2030年の予測期間中に19.3%のCAGRで成長する」※2と予想されています。(CAGRは年平均成長率)

※2 Web東奥記事より引用。2022年2月12日閲覧:https://www.toonippo.co.jp/articles/-/695352

普及に伴って、いずれは価格圧力がかかってくるという懸念はありますが、高品質の技術、プラットフォームを提供するエンフェーズ・エナジーはまだまだ成長できるのではないかと期待しています。

今回の記事はEnphase Energy, Inc.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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