先日4月1日(米国時間)に、米国の雇用統計が発表されました。
今回はその結果と政策金利引き上げへの影響をまとめていきます。
1. 米国雇用統計とは
米国の雇用状況を調査した統計で、米国の労働省が毎月発表しています。
景気を示す重要な経済指標の一つで、世界中の市場関係者に注目されています。
特に注目されるのは、”失業率”と”非農業部門雇用者数”の2つの項目です。
失業率は、労働力人口のうち失業者(就業が可能かつ希望しているにもかかわらず仕事がない)の割合を表します。
低い方が景気が良い(回復した)ことを表します。
非農業部門雇用者数は、農業部門以外の雇用者数の増減を表します。例えばこの項目が50万人だった場合、先月より雇用者が50万人増えたということになります。
数値が大きい方が景気が良い(回復した)ことを表します。
予想値と結果の差によって、株式市場は大きく影響を受けます。
2. 2022年4月発表分の結果
2022年4月に発表されたのは、3月の実績値です。
2-1. 失業率
失業率は3.7%という市場の予想に対して3.6%という結果でした。
前回の3.8%からは0.2ポイントの低下、1年前である2021年3月の6%からは、2.4ポイントという大きな低下となっています。
また、コロナ前である2020年1月の実績値は3.6%で、今回発表された数値はコロナ前の水準に戻ったことを意味します。
2-2. 非農業部門雇用者数
非農業部門雇用者数は49万人という予想に対して43.1万人という結果でした。
こちらは予想よりも低い(雇用者数が少ない)結果ですが、その一方で2月の実績値が上方修正されました。
2月の非農業部門雇用者数は67.8万人とされていましたが、修正後の数値は75万人です。
2-3. 賃金の伸びとインフレの影響
賃金は3月も上昇し、前年同月比5.6%の上昇となりました。
これはかなり大きな伸びです。
しかし、個人支出は減少傾向となっています。
2-3-1. 実質PCEが前月比0.4%減少
経済指標の一つにPCE(個人消費支出。家計の消費を集計したもの)があります。
記事作成時点では2022年2月分が最新の数値なのですが、インフレの影響を除いた今回の実質PCEは前月比0.4%減少でした。
2021年11月、12月にも2ヶ月連続で減少しており、2022年1月に増加に転じたところでしたが、再び減少する結果となりました。
インフレが賃金の上昇ペースを上回り、需要・消費が抑制され始めていることが伺えます。
3. まとめ:利上げが必要な局面
雇用統計、そしてPCEの結果も併せて見てみると、インフレはさらに加速しており、個人消費の抑制が感じられます。
米国の個人消費はGDPの7割近くを占めるため、この傾向は無視できるものではありません。
インフレへの対応が急がれる状況だと考えられます。
既に5月のFOMCでの政策金利引き上げは確実視されていますが、今回の雇用統計は、引き上げ幅を0.5ポイントとする見方を更に強めるものだったと言えるでしょう。
なお、最近の世界情勢はインフレを加速させる要因となっていますし、逆イールドについては重要な指標の一つである3ヶ月債との金利差がいまだ十分な数値を保っています。
すぐに利上げをストップする要因にはなりそうにありません。
記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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