デュオリンゴ【DUOL】銘柄分析_言語学習アプリを提供し認定試験まで行う

米国株の年次決算書・銘柄分析
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デュオリンゴ(Duolingo Inc / DUOL)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

2021年度更新版はこちら

1. Duolingo Inc(DUOL)について

1-1. 業種

電子テクノロジー、ソフトウェア、インターネットサービス

1-2. 事業の概要

デュオリンゴは、外国語学習アプリケーションを提供するテクノロジー企業です。
英語だけでなく、スペイン語、フランス語、中国語などの40言語(2021年6月末時点)を学ぶことができます。
言語学習アプリながらゲーム性の強い内容で飽きずに取り組めるように工夫されており、アルゴリズム・AIによって、間違えた問題もしっかり復習できるようになっています。

デュオリンゴは基本的には無料のアプリですが、広告オフや無制限利用(デュオリンゴにはゲームのようにHPが設定されている)、間違い直しレッスンといった機能・コンテンツを利用するにはサブスクリプションへの加入が必要です。

このサブスクがデュオリンゴの主な収益源で、他には広告収入、英語力認定試験、アプリ内課金も収益源として挙げられます。

特にこの英語力認定試験”Duolingo English Test”は、売上の割合は低いものの(2020年の売上では9%を占める)2020年に急成長した事業です。
この急成長の要因には、TOEFLなどより手頃な価格で受けられる(1回49ドル)、自宅で受験できる・スマホでも受験できるという利便性もあるでしょうが、更にその価値を高めているのは、イェール大学やコロンビア大学などの一部の教育機関が入学条件にデュオリンゴの英語試験スコアの使用を認めていることです。

ちなみに創業者兼CEOのルイス・フォン・アン氏は、CAPTCHA(歪んだ文字列の入力による認証)の考案者であり、reCAPTCHAを開発・Googleへ売却した実績があり、現在はルート(ROOT)の取締役でもあります。

1-3. チャート

デュオリンゴの株価チャートはこのようになっています。2021年7月28日のIPO後は緩やかな上昇傾向にありましたが、中国の一部アプリストアから削除されたニュース(”営利目的の個別学習指導禁止”の方針による)が出た頃から下降に転じました。
なお、ここ数日間では少々値上がりしています。(2021年9月1日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • ひとまずの資金繰りは問題なし
  • IPOによって財務・資本は変動している可能性大
  • キャッシュフローはまずまず

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるDUOL貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”安定タイプ”ですが、自己資本の多くは転換優先株式です。(それを除くと債務超過)
この時点ではIPOによる資金調達が含まれていないので、これが反映されると財務状態は大きく変わると考えられます。

流動比率は約240%、当座比率は約220%で、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率は約17%です。

2-1-2. 資本の比率

転換優先株式によって自己資本比率は58%と高めの数値ですが、IPOによって変動する可能性が高いです。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。

事業自体は赤字が出ていますが、サブスクによって繰延収益が大きい(未来の分の収益を事前に受け取るため)ことが影響し、営業活動のキャッシュフローはプラスになっています。
転換優先株式の発行などで資金調達を行ったため、財務活動はプラス収支です。

2-1-4. 項目まとめ

IPO前の財務状態なので、現在は転換優先株式が普通株式に変わるなどの変動が起きていると思います。

いずれにしてもひとまずの資金繰りは問題なさそうですし、キャッシュフローも良好とは言えないものの、まずまずの結果です。

2-2. 収益性

  • 赤字のため、ROE・ROAともにマイナス
  • 2020年の赤字額は微増。資産が大幅に増加

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

DUOLのROE(自己資本利益率)推移【2020年】

ROEはマイナスです。
マイナス値が減少していますが、これは自己資本の増加によるもので、純損失自体は前年より若干増えています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

DUOLのROA(総資産利益率)推移【2020年】

ROAもROEと同様の推移です。

2-2-3. 項目まとめ

現時点では収益性はあまりありません。
ただ、他のIPOと比較すると損失額は小さめです。(2020年は、売上高162百万ドルに対し純損失は16百万ドルと、約10%程度の大きさ)

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率は許容範囲
  • 固定資産は小さく、回転率良好
  • 棚卸資産はなし

2-3-1. 各回転率

DUOLの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率【2020年】

総資本回転率は0.9回と、許容範囲内の数値です。
また、固定資産回転率は9.3回とかなり高めの数値です。

棚卸資産はありません。

2-3-2. 項目まとめ

回転率は比較的良好です。
ただ、IPOによって変動がある可能性は高いです。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高は順調に増加
  • 営業損失もじわじわ増加中
  • 売上高研究開発費率は平均の約7倍
  • 有料会員数は2021年上半期も増加

2-4-1. 売上高と営業利益

DUOLの売上高推移【2020年】

売上は大きく増加し、2020年の伸び率(前年同期比、YoY)は130%近くあります。

また、この記事作成時点での最新四半期決算となる第2Qも売上を大きく伸ばしており、上半期で見ると前年同期比68%の増加となっています。

DUOLの営業利益(損失)推移【2020年】

営業損失も増加しています。

ユーザーエンゲージメント(顧客との繋がり、愛着)や顧客満足度の向上などのため、研究開発に重点を置いてかなりの資金を投じている他、全体的に営業費用が増加しています。

また、アプリ・サービスの評価が高く、口コミによるユーザー拡大が見込めるためマーケティング費用が削減される部分もありますが、それでも徐々にコストは増えてきています。(2021年上半期では29百万ドルで、前年同期比108%増加)

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約161.7百万ドル、研究開発費は約53.02百万ドルだったので、売上高研究開発費率は32.8%で、平均の約7倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.7%とされている)

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

営業損失が増加している点は気になりますが、売上の力強い伸びと積極的な開発姿勢を見ると、今後も成長していくでしょう。
また、記事作成時点での最新となる第2Q決算では、2021年上半期の有料会員数が約190万人に達したとしています。これは前年同期比46%の増加です。

ただ、コロナの収束による人々の行動の変化が、マイナスの影響を及ぼす可能性もあります。

3. まとめ

クロとしては、デュオリンゴ(Duolingo Inc)は成長には期待するが、買い場を考えたい銘柄です。

売上やサブスク会員の増加が力強い銘柄ですが、コロナ禍という環境が後押しした部分もあり、後同様の成長率が維持できるかが不安点です。
実際、2021年第2Qに限って見れば、前年同期より月間アクティブユーザー数が3%減少しています。
2020年の4~6月はちょうどコロナの影響が強かった時期なので、それを超えるユーザーの確保は難しかったということになります。

IPOは成長率の鈍化が嫌気を誘いやすいので、現状の株価(約130ドル。2021年9月1日時点)で購入するのは控えようと思います。
なお、割安性の指標は、PBR:45.63、PSR:29.78です。(楽天証券より、PBR(実)数値、時価総額4,815.74百万ドルと2020年売上161.7百万ドルから算出。2021年9月1日閲覧)

現状は赤字のアプリ企業という状態ではありますが、独自の英語力テストが教育機関に認められるなど、アプリケーションに止まらない独自の強みを持った企業なので、今後の事業展開や決算には注目していきたいです。

今回の記事はDuolingo Incの決算書・目論見書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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