2021年8月6日に、ディセルナ・ファーマシューティカルズ(ディサーナ・ファーマシューティカルズ / Dicerna Pharmaceuticals, Inc. / DRNA)の株価が約35%下落(記事作成時点)しました。
今回は、四半期決算を間近に控えたタイミングでの急な株価下落がなぜ起きたのかをまとめました。
■年次決算・銘柄分析(事業内容含む)はこちらの記事で紹介しています。
1. Dicerna Pharmaceuticals, Inc. について
1-1. 概要
ディセルナは、RNA干渉技術(RNAi)を利用して、病気の原因となる遺伝子を選択し阻害・抑制する医薬品・治療法を開発している企業です。
現時点では販売する商品が無く、複数の企業との提携契約などからロイヤルティを得ています。
また、販売する商品はまだないものの、臨床試験中の医薬品が複数あります。
1-2. チャート
最近は5月後半から上昇を続け、35~40ドルで推移していましたが、8月6日の市場開始時点で35%近く下落しています。
2. 下落の理由は臨床試験の結果
この下落は、ディセルナの発表した、原発性高シュウ酸尿症の治療薬”Nedosiran”の臨床試験の結果によるものです。
2-1. 行っていた臨床試験の内容
原発性高シュウ酸尿症は先天的な腎臓病で、シュウ酸が過剰に産生され、結石・石灰化、腎臓の機能障害などが起きてしまうものです。
ディセルナが開発中のこの病気の治療薬”Nedosiran”は、臨床試験の最終フェーズにありました。
原発性高シュウ酸尿症は1型、2型、3型の3つに分類されるのですが(1型が最も数が多く重症)ディセルナのNedosiranはこの3種類全てに有効であるとして開発を進めていました。
今回発表されたのは、1型、2型の患者への投薬試験の結果で、忍容性(副作用の程度)やプラセボ(偽薬)との結果比較などです。
また、2021年第4Qには新薬承認申請(NDA)を提出する予定だったため、新薬の実現が近づいてきていると考えられていました。
2-2. 結果と発表の内容
忍容性はおおむね良好と報告されました。
また、1型患者のシュウ酸排泄量は、プラセボと比較して優位性がある(効果が認められる)という結果が出ました。
問題となったのは2型患者におけるプラセボとの比較で、結果にばらつきが出てしまったことです。
1型には既に治療薬が存在するため、多くの投資家は、いまだに治療薬の無い2型、3型患者への有効性に強く期待していました。
そのため、今回は期待を裏切られたように感じる人々も多かったようです。
また、3型への試験も予定されていますが、そちらにも不安が生じてしまいました。
なお、1型の治療薬としてのNDA申請はこのまま目指していく方針です。
3. 他の臨床試験中の医薬品
ディセルナは、今回取り上げられたもののほかにも、B型慢性肝炎(HBV)の治療薬”RG6346”やα-1アンチトリプシン欠乏症関連肝疾患の治療薬”belcesiran”、アルコール依存症(AUD)の治療薬”DCR-AUD”などに取り組んでいます。
しかしこれらは臨床試験の第1~第2フェーズにあるため、実現にはまだまだ時間がかかってしまいます。
4. まとめ
ディセルナ・ファーマシューティカルズ(Dicerna Pharmaceuticals, Inc.)の今回の発表は残念なものでしたが、1型への有効性があることや、他にも複数の治療薬を開発中であることを鑑みて、クロとしては一旦動向を見守りたいと思います。
ただ、3型への有効性の有無がはっきりした段階でも株価は上下するでしょうし、何より新しい四半期決算が目の前です。
まだ販売できる商品がないので決算内容にもあまり期待はできませんが、プレスリリースに注意深く目を通して、ポジションをどうするか決めたいと思います。
(8月9日追記 第2Q四半期決算が発表されたので、こちら↓の記事でまとめています)
今回の記事はDicerna Pharmaceuticals, Inc.のコーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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