ディセルナ【DRNA】銘柄分析_RNAiのバイオ治療薬を開発!

米国株の年次決算書・銘柄分析
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今回はディセルナ・ファーマシューティカルズ(ディサーナ・ファーマシューティカルズ / Dicerna Pharmaceuticals, Inc. / DRNA)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Dicerna Pharmaceuticals, Inc.(DRNA)について

1-1. 業種

バイオテクノロジー、医療用品、健康&メディカル、ゲノム

1-2. 事業の概要

ディセルナ・ファーマシューティカルズは、RNA干渉技術(RNAi)を利用した、遺伝性疾患やウイルス性疾患、がんなどの治療法を開発するバイオ医薬品企業です。
現時点では販売する製品はなく、複数の企業と共同研究・提携契約を交わし、そのロイヤリティなどを売上高(収益)としています。

様々な病気・症状の治療法を研究していますが、現在は原発性高シュウ酸尿症(PH)、B型肝炎ウイルス(HBV)感染症、α1-アンチトリプシン欠乏症の3つが臨床開発のステージにあります。

1-2-1. RNA干渉技術(RNAi)とは

RNA干渉技術(RNAi)は、任意の遺伝子の発現(主に遺伝情報を元にたんぱく質が合成されること)を抑制する技術です。これを利用し、病気の原因となる遺伝子を選択し阻害・抑制することを目指しています。

より専門的に言うなら、特定の二本鎖RNAを導入することで、病気の原因を生むたんぱく質を作り出す元となる、mRNA(メッセージングRNA)を分解するということです。

コロナワクチンで注目されているmRNAですが、このワクチンでは、コロナウイルスの一部(スパイクタンパク質)を人間の体内で作り出すために、mRNAが使用されています。
このmRNAによって生み出されたタンパク質を元に、体の中で抗体が作られるというのがワクチンの仕組みです。

ディセルナは、このmRNAのタンパク質を作り出す機能を阻害することで、病気の治療を試みているのです。

1-3. チャート

ディセルナ・ファーマシューティカルズの株価チャートはこのようになっています。
上下しつつも長期的に見ると上昇傾向が続いており、現在はコロナ感染拡大前の株価を少し上回っています。(2021年4月23日時点)

2021年8月6日追記
2021年8月6日に臨床試験の一部結果が発表され、株価が急落しました。
詳細についてはこちらの記事で紹介しています。

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 短期の資金繰りは問題なし
  • 貸借バランスは安定タイプ
  • 自己資本比率が下降中
  • キャッシュフローは不安定

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるDRNA貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは“安定タイプ”です。
(貸借バランスのポイントについては、こちら↓の記事で紹介しています)

2020年の流動比率は約350%、当座比率も約340%です。
全く問題のない数値ですが、契約債権(売上債権)の減少によって当座比率が低下しています。

また、固定比率は約65%なので問題ありません
(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約20%と低めの数値です。
累積赤字の増加によって自己資本が相殺され、段々と数値が下がってきています。

2-1-3. キャッシュフロー

キャッシュフローは、営業活動プラス、投資活動マイナス、財務活動プラスという組み合わせです。

本業を含む営業活動が2020年はプラスでした。
ただ、これは主に契約債権の減少の影響なので、手放しで喜べるものでもありません。
財務活動がプラスなのは株式発行(増資)によるものです。

フリーキャッシュフローはマイナスが続いています。
(キャッシュフロー計算書の注目ポイントなどを、こちら↓の記事で紹介しています)

2-1-4. 項目まとめ

現時点での貸借対照表の内容は問題ありません。
ただ、累積赤字によって自己資本が減少しているので、近いうちに増資が必要になる可能性があります。

キャッシュフロー面では、理由はなんであれ、2018年・2020年の営業活動がプラスの結果でした。

2-2. 収益性

  • まだ赤字が続いている
  • 2020年は最終的な損失が微減
  • 自己資本は減少傾向
  • 総資産は増加を続けている

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

DRNAのROE(自己資本利益率)推移

まだ赤字続きの状態なので、ROEはずっとマイナスです。
損失額の増加と自己資本の減少が重なり、マイナス値が大きくなっています。
なお、2020年は売上高が大幅に増加したため、損失額は若干減少しています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

DRNAのROA(総資産利益率)推移

ROAもROEと同様にマイナスです。
総資産額はこの4年間増加を続け(2017年121百万ドルが、2020年は708百万ドル)マイナス値は小さくなりました。

2-2-3. 項目まとめ

赤字続きかつ販売できる製品をまだ持っていないため、収益性があるとは言えません。
2020年の売上高(ただし実際はロイヤリティや契約一時金などから”認識した収益”)は2019年の7倍近くありましたが、研究開発費などがかさみ、最終的な損失額は2019年の95%と微減にとどまりました。

2-3. 経営の効率

  • 売上高はまだまだ足りない
  • まだ販売できる商品は無く、在庫はない

2-3-1. 各回転率

DRNAの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は約0.2回、固定資産回転率は約2回です。

売上高は2019年の7倍近くあった2020年ですが、現在の総資本から見るとまだまだ足りない状態です。
また、現時点では在庫を保持していません。

2-3-2. 項目まとめ

まだ販売できる商品を持っていませんが、いずれは2020年の5倍以上の売上(総資本回転率1回以上)を目指したいです。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高は増加を続けている
  • 販売できる商品の開発に大きく投資している
  • 2020年は売上高が大幅増加したため損失額が減少

2-4-1. 売上高と営業利益

DRNAの売上高推移

売上高は増加を続けており、特に2020年は2019年の約7倍でした。
ただ、これは商品の販売によるものではなく(まだ商業化できる製品がない。決算書内でも”短期的に販売で収益を生むことは期待はしていない”と明言)契約金などから”今期の収益として認識”されたものです。

DRNAの営業利益(損失)推移

増加を続けていた営業損失は2020年に減少しました。
研究開発費を中心に費用は増加(2019年は152百万ドルだったが2020年は278百万ドル。約1.8倍)しているので、この損失額の減少は売上高の増加によるものです。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約164百万ドル、研究開発費は約205百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約125%です。
通常はあり得ない数値ですが、今は商業化を目指して投資を続けている状態なので、このようになっています。

ブルーバード・バイオボイジャー・セラピューティクスなどバイオテクノロジーやゲノムの分野では開発段階の企業も多く、ディセルナ・ファーマシューティカルズもその一つと言えるでしょう。

2-4-3. 項目まとめ

売上高が増加し、損失額を抑えられたのは良い傾向です。
売上高はあくまで”期間中のものと認識された収益”なので過信はできませんが、約7倍とかなり大きく増加しているので、それだけ研究が進んだり、技術が評価されて他社との契約が成立した証とも取ることができます。

臨床試験段階の治療薬も複数あり、今後の研究次第ですが、成長の可能性はありそうです。

3. まとめ

クロとしては、ディセルナ・ファーマシューティカルズ(Dicerna Pharmaceuticals, Inc.)は「まだまだ技術開発段階だが、今後成長の可能性がある」銘柄だと判断します。

現段階では収益を生む商品がないためリスクが非常に高いですが、複数の治療薬が臨床開発段階にあることから、今後成長する可能性もあると考えています。
2020年に売上高が大幅に増加したことにも期待したくなりますが、この売上高は今後も維持されるかはわかりません。

決算書の数字にはあまり良い点がないため、今後の売上高の様子を見てから購入を検討するのも良いと思います。
ちなみに現時点で配当金はなく、今後配当を行う予定もないことを決算書内で明言しています。

今回の記事はDicerna Pharmaceuticals, Inc.の決算書及びコーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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