デルタ・エア・ラインズ(Delta Air Lines Inc / DAL / デルタ航空)の決算書(10-K)分析やニュースについて、2021年版に更新しました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Delta Air Lines Inc(DAL)について
1-1. 業種
航空会社
1-2. 事業の概要
デルタ・エア・ラインズ(デルタ航空)は、アメリカの大手航空会社です。
旅客便・貨物輸送の飛行を行っている他、子会社であるMonroe Energy社によってジェット燃料を生産したり、ジェット燃料以外の生産資源をジェット燃料と交換(第三者との取引)したりもしています。
2019年には約2億人の顧客にサービスを提供していましたが、2020年のコロナ感染拡大とそれに伴う様々な政策・社会の変化によって大打撃を受けました。
2020年にサービスを提供した顧客は、主にコロナ前に利用した約7,000万人にとどまっています。
1-3. チャート
デルタ航空の株価チャートはこのようになっています。2020年2月頃のコロナ感染拡大によって株価が急落し、その前の水準にはいまだに戻れていません。
2021年2月~3月頃に脱コロナ社会への期待などから株価が上昇しましたが、その後新たな変異株などによって航空需要は完全回復に至らず、株価も再び下降しました。(2021年10月19日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 資産の流動性が低下
- 自己資本比率は前年より改善したものの5%
- 過去の実績があるため借入は可能と考える
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは”不安タイプ”です。
流動比率は約76%、当座比率は約65%で、許容範囲以上に低い値です。
現金化しづらい固定資産の保有に、返済期限(支払期限)の短い流動負債までもが使用されている状態です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は5%です。
2020年の2%よりは改善しましたが、かなり低い値です。
なお2019年までは20%を超えていましたが、2020年の大きな純損失(赤字)と長期債務の増加によって一気に低下しました。
2-1-3. キャッシュフロー
2021年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
事業は何とか黒字となり、営業活動はプラス収支です。
投資活動のマイナス収支は、前年同様、短期投資目的の有価証券などを購入したことによるものです。
財務活動では、債務の支払いによる支出が大きな割合を占めています。
2-1-4. 項目まとめ
自己資本比率は低く、あまり健全な財務状態ではありません。
ただ、コロナ前に大きな収益を上げていた実績のある大企業なので、債務を利用した資金調達は可能でしょう。
2-2. 収益性
- 2020年のコロナ感染拡大によって悪化
- 2021年は黒字となったものの利益は小さい
- 2019年までは米国平均~平均以上の数値
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

2021年は自己資本が小さいため、ROEは実態よりかなり高く出ています。
また、それ以前も自己資本比率はあまり高くなく、ROEは米国平均を大きく上回っていました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

2019年までのROAは米国平均程度で、ROEと共に上昇傾向にありました。
しかし2020年は大きなマイナス数値となり、2021年も純利益が小さいためかなり低い値です。
2-2-3. 項目まとめ
2019年までは米国企業の平均~平均以上程度の収益性がありましたが、2020年以降大きく悪化しています。
ただ、2021年には、小さい利益ながらも黒字に転じました。
(2019年の純利益は4,767百万ドル、2021年は280百万ドル)
2-3. 経営の効率
- 2020年以降売上減少で回転率低下
- 事業内容や買収の影響で資産は大きめ
2-3-1. 各回転率

総資本回転率は約0.4回とまだまだ低いですが、昨年の0.2回よりは改善しました。
なお、新型コロナ感染拡大が起こる前の2019年は約0.7回でした。
また、固定資産回転率も毎年低めです。
これらの回転率の低さには、飛行機などの固定資産や買収によるのれんが大きいことが影響しています。
2-3-2. 項目まとめ
資産が大きいため回転率は少々低めです。
2020年以降数値が低下していますが、2021年は改善が見られます。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2020年はコロナによって大きな損失
- 2019年までは売上が増加傾向にあった
- 2015年~2018年営業利益は減少。2019年に増加
- 2021年は僅かながら黒字に転じた
2-4-1. 売上高と営業利益

売上は年々増加していましたが、2020年はコロナ感染拡大の影響が大きく、大幅な減収となりました。
2021年は前年比75%の伸びとなったものの、2019年と比較すると約36%程度劣っています。
また、売上の内訳として”乗客”カテゴリが大半を占めることは変わりませんが、”貨物”や”その他(燃料などによる)”の売上は2019年よりも増加しています。

2021年は、小さいものの営業利益が発生しました。
コロナの影響が出る前の2019年と比較すると、従業員への給与や燃料に関する税金などが減少しています。
給与が削減されたのは、昨年行われたリストラの影響だと考えられます。
2-4-2. 項目まとめ
2020年の新型コロナ感染拡大がいまだに暗い影を落としていますが、業績自体には回復の兆しがあります。
今後も新たな変異株や世界的な取り組みの影響は受けるでしょうが、いずれは回復できるでしょう。
2-5. 2021年第4Qと2022年第1Qガイダンス
第4Qは第1Q~第3Qのように四半期決算記事を作成しないことが多いため、こちらに簡単にまとめておきます。
2-5-1. 2021年第4Q
2021年第4Qの売上は9,470百万ドルで、2021年の通年売上の約32%を占めました。
アナリスト予想は9,020百万ドル(TradingViewより引用)だったため、この予想を約5%上回る結果です。
営業利益は263百万ドル発生しましたが、支払利息などの事業外費用が大きかったため、最終的には408百万ドルの純損失が発生しています。
また営業費用は、2019年第4Qと比較して8%程度削減されました。
EPSは0.22ドルで、アナリスト予想の0.16ドルをクリアしました。
2-5-2. その他・ガイダンス
出張などのビジネス需要は改善しており、2021年第4Qの国内旅客数は60%近くまで上昇しました。
また、貨物による収入は5四半期連続で成長を続けています。
ただ、オミクロン株の影響で1月~2月は損失が発生する見込みとなっているので、第1Qは赤字になると予測されます。
一方、3月には収益性が回復すると予想され、第2Qは利益が発生するとしています。
3. まとめ
クロとしては、デルタ航空(DAL)はコロナの影響を大きく受ける不安定さはあるものの、これから回復していくのではないかと考えています。
まだまだコロナ前の売上には戻れていませんが、貨物や燃料(サードパーティの製油所売上)からの収益は2019年よりも増加しており、これらの今後の収支にも注目したいです。
なお、コロナの影響を受けた配当・自社株買いの停止は続いています。
政府の支援金を受ける条件の中に”2022年9月30日までの配当・自社株買いの禁止”が盛り込まれているので、再開は当分先になりそうです。
今回の記事はDelta Air Lines Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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