クラウドストライク・ホールディングス(CrowdStrike Holdings, Inc. / CRWD)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
■2022年度第4Qと通年の速報記事はこちら
1. CrowdStrike Holdings, Inc.(CRWD)について
1-1. 業種
電子テクノロジー、サイバーセキュリティ、インターネットサービス
1-2. 事業の概要
クラウドストライクは、クラウド型のサイバーセキュリティを手掛ける企業です。
エンドポイント(PCなどの末端機器)を中心に、クラウドセキュリティ、ネットワークの監視など、幅広いサービス・モジュールからなる”Falconプラットフォーム”を提供しています。
Falconプラットフォームは、エンドポイントなどへインストールされる”エージェント”と、クラウド型の”データベース”で成り立ちます。
エージェントは各ポイントでの検知・防御を行うと同時に随時データ収集をしており、AIアルゴリズムなどを用いてそれらを分析します。
これにより、膨大なデータベースに基づき、顧客拡大(データ蓄積)と共に成長を続けるプラットフォームを実現しました。
クラウドベースで各顧客との通信を行っているため、サイバー攻撃が発生した際も即座に分析・他の顧客への素早い対応が行える他、PCに処理負担をかけず動作が軽いというメリットもあります。
また、エンドポイントがオフラインの間も、エージェントは脅威からの保護・アクティビティの追跡を行っており、再びオンラインになった際にデータ送信を行う仕組みとなっています。
ちなみにセンチネルワンと事業内容が近く、よく競合として挙げられます。
1-3. チャート
クラウドストライクの株価チャートはこのようになっています。2020年2月のコロナ感染拡大によって一時的に下がった後、大きく上昇しています。
市場の波もあって2021年2月から一時下落していますが、現在はその下落前の価格を上回っています。(2021年9月16日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 資金繰りは問題なし
- 自己資本比率も問題ない数値
- 事業は赤字だが、営業活動・フリーキャッシュフローは黒字
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約270%、当座比率も約250%で、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率は約51%です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は32%と、ひとまず問題のない数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2021年1月期は営業活動がプラス、投資活動がプラス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
事業は赤字ですが、株式報酬の戻入れ、サブスク方針ゆえの繰延収益が大きく、営業活動はプラス収支です。
また、投資活動では、有価証券の売却額が資産の購入額を大きく上回ってプラス収支となっています。
財務活動は、社債の発行によってプラス収支です。
2-1-4. 項目まとめ
事業は赤字ですが、ひとまずの資金繰りは問題ありません。
2-2. 収益性
- 赤字のためROE・ROAともにマイナス
- 2021年は資産増加と純損失削減でマイナス値が小さく
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

赤字が続いているため、ROEもマイナスです。
また、IPO前の2019年までは債務超過(償還可能な株式を省いて計算)でした。
2021年1月期は、売上が増加し純損失が減少したため、ROEのマイナス値も小さくなっています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAもROEと同様にマイナスです。
着々とマイナス値が小さくなっていますが、2020年1月期までの純損失額はあまり変わらず、むしろ少しずつ増えており、このマイナス値は総資産の増加を反映した推移となっています。
しかし、2021年1月期は、総資産の増加もあるものの(前期の約2倍に増加)、純損失額も減少しました。
2-2-3. 項目まとめ
事業は赤字で、まだ利益を生み出せていません。
ただ、ROE、ROAともにマイナス数値が小さくなってきています。
資産の増加も大きいため、これらの数値程の損失削減には至っていませんが、売上が急拡大し損失額が減少した2021年1月期は、好調だったと言えるでしょう。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率が低い
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率

総資本回転率は0.3回と低いです。
売上はどんどん増加していますが、資産も増え続けています。
資金調達を行っていること、繰延収益が増加を続けていることなどから、現金をかなり多く保持しています。
それと比較すると固定資産回転率は約2回転でさほど低くない数値です。
なお、棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
売上を拡大し続けていますが、総資本回転率は上昇していません。
資産もかなり急速に増加していると言えます。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上高の成長率が低下気味ではあるが、まだまだ高い
- 2021年1月期は営業損失削減も、
2022年1月期の上半期(記事作成時点の最新決算)は前年同期比増 - 売上高研究開発費率は平均の約5倍
2-4-1. 売上高と営業利益

売上はかなりの勢いで増加を続けており、各前年比(YoY)110%、93%、82%という高い成長率を達成しています。
また、この記事作成時点での最新決算は2022年第2Q(2021年7月締め)ですが、この上半期では前年同期比70%の売上増加となっています。
高い水準を維持していますが、段々と伸び率が下がってきていると取ることもできる内容です。

営業損失は年々少しずつ増えていましたが、2021年1月期は損失削減となりました。
これは粗利率が2%上昇したことと、事業に関する費用が増加しつつも(従業員が増えたことによる人件費増加が主な要因)2020年1月期の”営業費用のみで売上を超えてしまっていた”状況が改善したことによるものです。
ただ、一度は削減できた営業損失ですが、2022年第2Qまでの上半期では前年同期よりも再び増える結果となっています。
2-4-2. 研究開発費
2021年1月期の売上高は約874.44百万ドル、研究開発費は約214.67百万ドルだったので、売上高研究開発費率は24.5%で、平均の約5倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上の伸び率が下がってきているとはいえ、まだ70~80%程度はあるので、もうしばらく成長は続くのではないかと考えます。
まだ利益化よりも事業拡大に注力している様子なので、赤字も継続となりそうですが、研究開発費率からも更なる成長に意欲的だと言えます。
2-5. 補足:顧客数
2021年7月末時点(記事作成時点の最新決算の締め日)で、サブスクを契約している顧客数は13,080社にも上ります。
2021年1月末時点では9,896社だったので、半年で32%の増加です。
ただ、”当初は大企業向けの販売に注力していたものの、近年は中小企業向けの販促も強化している”としており、大企業へのサイバーセキュリティは飽和してきている可能性もあります。
3. まとめ
クロとしては、クラウドストライク・ホールディングス(CrowdStrike Holdings, Inc.)は成長に期待したい銘柄です。
コロナ感染拡大の影響を受けて急成長したセクターではありますが、サイバー攻撃の脅威は今後も続くので、急に需要がなくなるものではない考えています。
なお、競合とされるセンチネルワンの方が売上の伸び率が大きく、AIに関する技術力も高いとする意見もありますが、AIの学習量・成熟度ではクラウドストライクが上回るとも言われており、どちらの方がより優れているという結論は出ないのが現状です。
地域別売上でもそこまで大きな差が無いですし(両社ともアメリカが70%前後を占めている。その他30%の詳細についてセンチネルワンは公表していない)クロはどちらも少しずつ保有しようかと考えています。
今回の記事はCrowdStrike Holdings, Inc.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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