クリカット(Cricut Inc / CRCT)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性※2020年末時点
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Cricut Inc(CRCT)について
1-1. 業種
クラウドベースアプリケーション、専門小売・卸売
1-2. 事業の概要
クリカットは、家庭用の紙、布、ビニールなどのカッティングプロッター(シート状の素材を裁断する機械)や、それに付随するクラウド型アプリケーションを提供するクラフト機器メーカーです。細かいデザインもきれいに切り抜くことができ、手芸やDIYを行うユーザーから支持されています。
アプリケーションではカッティングプロッターへ送信する図面のデザインが行えます。ユーザー自身が創作することはもちろん、クリカットが提供している豊富なデザインやフォントを利用することもでき、その中にはディズニーやサンリオなどの有名キャラクターもあります。
また、アプリ内購入やサブスクリプション(有料会員になると使用できる画像・フォントの増加や割引などが追加される)といった収入減にもなっています。
他にも、マグカップや布製品へデザインを転写するプレス機器や、それぞれの材料となる様々な素材、用具を販売しています。
1-3. チャート
クリカットの株価チャートはこのようになっています。2021年3月にIPOした後上昇しつつも、5月の下げ相場の例に漏れず値下がりしました。しかし四半期決算が好調だったことを受けて株価は急上昇しています。(2021年5月26日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 当座比率が低めだがIPOの資金調達で改善
- 2020年の売上・利益増加によってキャッシュフローが改善
- 自己資本も問題なし
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約160%、当座比率は約80%です。流動負債に対し、すぐに現金化できる資産が少々少ない状態です。ただ、当座比率に関しては2021年3月のIPOで現金が増加し、改善しています。
一方固定比率は約20%で優秀な値です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約40%と良い数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”の組み合わせで、フリーキャッシュフローもプラスです。
確認できた過去2年はあまり良いバランスではありませんでしたが、2020年は純利益が前年の約4倍に増加し一気に内容が改善しました。
強いて言うなら、ローンの返済などで財務活動のマイナスが少々大きくなっている点が気になります。
2-1-4. 項目まとめ
全体的に安定した内容です。当座比率が気になりますが、この記事作成時点では改善しているので問題ありません。
今回はキャッシュフローが大きく改善しているので、今後もこれが維持されれば安心できます。
2-2. 収益性
- ROE、ROAともに平均を大きく上回る
- 2020年はコロナの影響で需要が増加し特に好調
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
ROEは米国の平均と言われる16~18%を大きく超えており、非常に高い数値です。
サブスクリプション収益、アクセサリ・材料販売が利益率に貢献している他、売上高約9.6億ドルに対し従業員数は640人程度(2020年末時点)と公表されており、人件費もかなり少なく済んでいると考えられます。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAも平均を超える数値で、特に2020年は平均の3倍以上です。
2-2-3. 項目まとめ
ROE、ROAともに高く、収益性は優秀です。2019年までも良好な値ですが、特に2020年に大きく上昇しました。
ただ、2020年の売上急増はコロナ感染拡大によって需要が増加したためであり、ワクチン普及などでこの影響がなくなった際には、同程度の成長が見込めるか不安が残ります。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は十分
- 固定資産が小さく、回転率が高い
- 棚卸資産は年々増加しており、回転率が低い
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は約1.7回で、比較的効率は良いと言えます。
固定資産回転率は約22.5回と非常に高く、年々増加しているとはいえ、固定資産は小さいことがわかります。
一方で棚卸資産回転率は約3.9回と低いです。製造業の平均値は7~10回と言われているため、平均の半分程度しかありません。サブスクリプションでの売上もある中でこの数値なので、豊富なクラフト材料の品揃えが影響していると考えられます。
2-3-2. 項目まとめ
全体的な回転率は良いですが、棚卸資産回転率は低いです。確認できた3年間のいずれも約2~3回なので、これは一時的なものではなく、業務形態そのものの影響だと言えます。
2-4. 成長している・していく企業か
- 近年成長中
- 2020年はコロナの影響で需要が強まり急成長
- 売上高研究開発費率は平均程度
2-4-1. 売上高と営業利益
売上高は増加を続けており、特に2020年はコロナ感染拡大の影響で需要が強まったことで、売上が急増しました。
営業利益も売上高と同様の増加をしていますが、2020年の急成長が更に顕著に表れています。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約959百万ドル、研究開発費は約39百万ドルだったので、売上高研究開発費率は4.1%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.4%とされており、研究開発比率は平均程度だと言えます。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
2020年、コロナ感染拡大によってユーザーも増加し急成長した企業です。この影響がなくなった際にどうなるかが気になりますが、コロナ以前も売上高・利益共に増加を続けており、元々成長途中ではありました。
ただ、いずれ社会はコロナを克服するので、さらなる成長のために、現在取り組んでいる国際市場への進出が益々重要になりそうです。
3. まとめ
クロとしては、クリカット(CRCT)は収益性・成長性の高い良い銘柄だが、現時点ではコロナの影響で急激に期待が上昇しすぎているので、一旦購入は待ちたい銘柄です。
収益性は2020年の急成長の前から良く、今後もあまり悪化はしそうにないですが、コロナの影響が無くなった際には一度需要が弱まる可能性は高いと考えます。
また、現時点でクリカットは”PER:44.29””PBR:29.91”と、かなり割高な数値になっています。(2021年5月27日時点楽天証券サイトより)
それだけ期待されているという証ですが、一時的な要因によって急成長した側面もあるので、この期待値はちょっと高すぎる気がします。
ただ、これから更に国際社会へクリカットの製品やサービスが浸透すれば、成長のチャンスはあります。クロとしては、コロナの影響が世界的に収まった時のクリカットの業績を見て、改めて購入を検討したいと思います。
今回の記事はCricut Incの決算書・目論見書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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