チポトレ・メキシカン・グリル【CMG】銘柄分析_デジタル販売が好調なメキシコ料理チェーン

米国株の年次決算書・銘柄分析
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チポトレ・メキシカン・グリル(Chipotle Mexican Grill, Inc. / CMG)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Chipotle Mexican Grill, Inc.(CMG)について

1-1. 業種

サービス、レストラン(ファストフード)

1-2. 事業の概要

チポトレ・メキシカン・グリルは、ブリトーやタコスといったメキシコ料理を提供するファストフードレストランチェーンを経営する企業です。

なお、ファストフード店ではありますがメニューの中にはアルコール類も含まれており、アメリカ国内を中心に(アメリカでは2020年末時点で2,724店)海外(カナダやヨーロッパ。計40店)にも店舗を展開しています。

食品の品質と安全性をアピールしているのも特徴で、決算書内でも”治療目的以外での抗生物質、ホルモン剤を使用していない肉を提供している”ことなどが明言されています。

また、コロナ感染拡大の前からデジタル販売に注力していたため、消費者の需要の変化にいち早く対応することができました。
コロナによる影響を受けて更にデジタル販売は加速しており、サードパーティによるデリバリーサービスの拡大、ドライブスルーの増設、オンライン注文を行いやすくするためのアプリやwebサイトの機能強化といった施策も行っています。

その結果、2019年は総売上に対し11%程度だったデジタル販売の売上が、2020年は46%を占めるまでに増加しました。

また現在もデジタル販売需要に応えるため、2020年11月には初のデジタル販売専門店(オンラインで事前注文した商品の受取とデリバリーが可能)を発表し、2021年3月にはデジタル販売限定メニューを追加するなど、様々な取り組みを行っています。

1-3. チャート

チポトレ・メキシカン・グリルの株価チャートはこのようになっています。2020年2月頃のコロナ感染拡大による下落はありますが、その前後は右肩上がりです。
特に2021年2月~7月に1,300~1,500ドルで上下した後、第2Qの好調な決算を受けて株価は急騰しました。9月末頃からは値下がりしていますが、まだ過去最高値に近い水準にあります。(2021年10月11日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 資金繰りは問題なし
  • 自己資本比率も問題ない
  • キャッシュフローは安定

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるCMG貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。

流動比率は約170%、当座比率も約160%で、資金繰りに問題はありません。
固定比率は約226%と高いですが、返済期限がまだ先である固定負債と、返済の必要が無い自己資本でまかなえています。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は34%で問題はなく、少し高めの数値です。
なお2018年までは60%を超えていましたが、2019年の会計基準変更に伴って多額のリース資産・負債(主に店舗やオフィス)が計上されたことで、自己資本比率は大きく下がりました。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”の組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。

事業が黒字であることや現金の支出を伴わない償却費用が大きい(キャッシュフロー計算書では戻入れる)ことなどから、営業活動はプラス収支です。

投資活動は設備などへの資金投入の他、投資の有価証券などを購入しており、マイナス支出となっています。

財務活動では自社株買いの支出が大きくマイナス収支です。
ただ、2020年はコロナ感染拡大による経営への悪影響などから、自社株買いを第1Qで中止しました。(なお、2021年は再開されている)

2-1-4. 項目まとめ

資金繰りや自己資本比率に問題はなく、キャッシュフローも安定しています。

2-2. 収益性

  • 2020年は資産増加・純利益が微増にとどまる
    →指標の数値低下
  • ROE・ROAどちらも米国平均程度

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

CMGのROE(自己資本利益率)推移_2020

純利益額は2017年と2018年がほぼ変わらず、2019年と2020年でも大きな差がありません。

2020年のROEが低下しているのは、純利益が変わらない中で自己資本が増加したためです。
なおこの自己資本の増加は、従業員へ株式報酬を支払ったことや、黒字によって留保所得が増加したことによるものです。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

CMGのROA(総資産利益率)推移_2020

ROAはROEと比較すると緩やかな下降傾向となっています。

これは総資産が年々増加していることの影響が大きく、特に約24億ドルのリース資産が計上された2019年には著しく資産が増え(約2.25倍)ました。
その一方で、2019年の純利益も2018年と比較するとほぼ2倍になったため、ROAで見ると徐々に下降する形となっています。

2-2-3. 項目まとめ

ROE、ROA共に2019年より低下しましたが、これは純利益が前年比微増であったことと、資産の増加が大きいことによるものです。
また、ROE、ROAどちらも米国平均程度の数値です。

2-3. 経営の効率

  • 回転率は最低ラインをクリア
  • 棚卸資産は小さく抑えられている

2-3-1. 各回転率

CMGの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率_2020

総資本回転率は1回で最低ラインをクリアしています。
2018年までは2回を超えていましたが、2019年にリース資産(固定資産に含まれる)を計上したことで回転率は低下しました。
この数値の低下は、固定資産回転率でも同様です。

また、主な取り扱いが生鮮食品であることもあって、棚卸資産(在庫)はかなり小さく抑えられています。

2-3-2. 項目まとめ

回転率には特に問題がなく、在庫管理もうまくいっています。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上は2020年も増加
  • 一方営業利益はコロナの悪影響などで減少
  • 2021年上半期は好調

2-4-1. 売上高と営業利益

CMGの売上高推移_2020

売上は年々増加しています。
コロナ感染拡大による悪影響を受けた2020年もデジタル販売が功を奏し、前年比7%の売上増加となりました。

CMGの営業利益(損失)推移_2020

一方、営業利益は減少しました。

この利益の減少には、コロナ感染拡大の影響を受けた配送費用の増加や従業員への補助金、利益率の高い飲料メニューの売上減少などが挙げられます。

2-4-2. 項目まとめ

2020年は営業利益が減少したものの売上が成長を続けています。

また、2021年上半期(記事作成時点の最新決算は第2Q)の売上はさらに伸び、前年同期比31%増加しました。
さらに営業利益は上半期だけで4億ドルを突破し(407百万ドル)、すでに2020年の1年間での営業利益を超えています。

コロナ前の2019年上半期でも売上2,742百万ドル、営業利益230百万ドルという実績なので、コロナ感染拡大によって加速したデジタル販売事業の売上が、従来のレストラン店内での飲食の売上に上積みされた形になっています。

3. まとめ

クロとしては、チポトレ・メキシカン・グリル(CMG)は今後の成長に期待したいが、更なる売上拡大・事業展開の余地があるのか注視しておきたい銘柄です。

決算内容は良好ですが、それ故に期待が集まって割高になっています。次回決算のハードルも高そうです。
なお2020年の実績PERは142.63、予想値でも74.01です。
またPBRは実績25.19、予想21.97となっています。(PER・PBRは楽天証券のサイトを参照。2021年10月12日閲覧)

デジタル販売による成長が一区切りついた先が気になりますが、新規出店も続いていますし、植物性のチョリソー導入やチポトレ会員への特典拡充などの施策を行っていることから、新たな顧客層やファンへのアプローチには意欲的に見えます。

ただ、配当は行っていないため(近い将来での配当予定もないことを明言している)その点には注意したいです。

今回の記事はChipotle Mexican Grill, Inc.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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