チャブ(Chubb Limited / CB)の決算書(10-K)分析、事業内容などをまとめました。クロの判断は以下の通りです。
なお、銀行同様決算書がやや特殊なので、主に利息や全般的な収益・利益、事業ごとの伸び率に焦点を当てて見ていきます。
また、前回テーパリング実施時やその前後の業績の大まかな変化もまとめました。
- 2020年は売上増加・利益減少
- 商業用保険料収入が好調
- 前回テーパリング時期は、示唆の年まで好調
それでは見ていきましょう。
1. Chubb Limited(CB)について
1-1. 業種
損害保険、生命保険、医療保険、再保険
1-2. 事業の概要
チャブはスイスに本社を置き、損害保険を中心として世界中(54の国と地域)に保険事業を展開する持株会社です。
商業向けの事業では、損害保険、労災補償などを取り扱う他、企業、金融機関、医療機関への専門職賠償責任保険を提供します。
また、農業や航空、エネルギーなどの分野に特化した保険商品、個人向け損害保険や医療保険の提供も行っています。
他にも、保険者(主に保険会社)が責任の一部~全部を移転する”再保険”商品があります。
1-3. チャート
チャブの株価チャートはこのようになっています。コロナ感染拡大によって下落し、その後も上下の波がありながらも、コロナ前の株価水準まで回復しました。
一時はもう少し高値でしたが、若干落ち着いてきています。(2021年7月8日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 売上高と利益の推移
- 2020年は売上増加・利益減少
- 保険金の支払いが増加
- 商業損害保険が好調
- コロナ感染拡大の影響も有り
2-1-1. 総売上高

少しずつではありますが、総売上高は増加しています。
2020年はコロナ感染拡大の影響で、自動車保険を中心に、多くの地域で消費者の保険料収入が減少しました。
しかしその一方で、商業用損害保険による保険料収入が増加しました。
2-1-2. 純利益

2020年は純利益が減少しました。
純利益の多かった2019年を上回る売上だったものの、保険金を支払うべき損害の発生も増加したため、利益は減少しました。
2-1-3. 売上の内訳
以下は主な収益源となる項目ごとの売上高の推移です。
※このほかの収益要因もあるため、合計と総売上高には若干ズレが生じます

商業損害保険は好調に収入を増やしています。

2020年の個人損害保険は微増です。
コロナ感染拡大の影響を受け、自動車保険の収入が減少したことが影響しています。

その他保険料には、再保険や生命保険、一部別に集計される損害保険が含まれます。
2020年は、再保険・生命保険が増加したものの、トータルでは減少しました。

純投資収益は若干減少しました。なお投資収益のほとんどは、満期によるものです。
2-1-4. 項目まとめ
保険料収入の半分以上を占める商業損害保険が売上を伸ばしており、総売上も増加しています。
しかし、2020年は一部のセグメントで減収となっており、コロナの影響を受けているものも複数あります。
2-2. 財務状況・キャッシュフローについて
- 投資が増加
- 未払いの保険金・費用が増加
- キャッシュフローは安定
2-2-1. 資産・負債・資本について
投資目的の有価証券などの資産が増え、また、株式の一部を保有している保険会社への投資も増加しました。
負債では、未払いの保険金・費用、未稼得の保険料がどちらも増え、長期債務も増加しました。
また、留保所得が増え、自己資本も増加しています。
2-2-2. キャッシュフロー
2020年のキャッシュフローは、営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”の組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
2-3. 収益性
- 2020年は利益減少&資産増加でROE・ROA低下
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

2020年は自己資本の増加と純利益の減少でROEが低下しました。
また、生命保険・損害保険という中心ジャンルの違いはあるものの、チャブはメットライフの約3倍の自己資本比率で、ROEは低い結果です。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAはROEと同様に上下しています。
2-2-3. 項目まとめ
2020年はROE・ROAともに低下しました。
利益の減少と資産の増加の両方が影響しています。
なお、ROAが非常に低いですが、金融業の資産の大きさによるものです。
2-4. 2014年テーパリング前後はどうだった?
以下のテーパリング中やその前後の決算を見た結果、テーパリングが示唆された2013年は売上・利益が増加していましたが、その後は伸び悩みました。
- 前回テーパリング等実施時期
- テーパリング実施示唆…2013年5月22日
- テーパリング実施期間…2014年1~10月
- 短期金利(FF金利)上昇スタート…2015年10月頃
これらの期間の収益は、2013年に増加したものの、2014年・2015年は少しずつ減少しています。
なお2016年に大型合併があり、売上が60%以上増加するなどしたため、それ以前とそれ以降の比較は難しいです。
純利益も同様に、2013年は増加しましたが、2014年に減少、2015年もわずかながら減少しています。
2-4-1. 事業別の概要
※2016年の大型合併で、売上・利益の急増、決算での報告セグメントの変更がありました。そのため、当時と現在の完全な比較はできません
商業用損害保険の小売・卸売向け商品の保険料収入が、2014年まで好調でした。
しかし、短期金利上昇が始まった2015年は減少しています。
一方で、個人・小規模な商業用の保険(保険料)は、2015年まで毎年20~30%の収益を出しています。
また一方で、農業保険の保険料収入は年々減少しています。
投資による純収益は、多少上下があるもののほぼ横ばいでした。
なお、合併前のそれぞれの収益を換算した数値によると、2016年も保険料収入が減少しています。
2-4-2. 事業ごとの売上に占める割合
報告セグメントが変わってしまったため、明確な比較ができませんが、いずれも保険料収入の約半分が商業保険によるところは変わらないようです。
(同時期の株価チャート変動率を金融ETFや他銘柄と比較した記事もこちら↓にあります。)
3. まとめ
クロとしては、チャブ(CB)は少しだけ購入を検討します。
売上自体は順調に増加していますが、2020年の利益の減少が20%とかなり大きいのが気になります。
また、前回はテーパリング示唆の年に売上を伸ばしていますが、今回は合併後ということもあり、どうなるか予測しづらい部分もあります。
ただ、現在の株価はコロナ前とちょうど同じくらいなので、ここから成長できるかを追いたいと思います。
ちなみに前回のテーパリング示唆以降、チャブは比較的安定して右肩上がりのチャートを示していました。(ただし、当時と現在では株価がかなり違う)
今回の記事はChubb Limitedの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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