先日11月のCPIが発表され、テーパリングが加速されるのかどうか、そしてその後の政策金利引き上げが2022年内にどの程度行われるのか、注目が集まっています。
前回テーパリングが行われた際の株価やドル円の動きはこちらにまとめたことがありますが、今回はビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)の価格に金利の影響はあるのか、まとめていきます。
1. 仮想通貨とは
仮想通貨(暗号資産)とは、インターネット上でのやり取りが可能な電子データの財産です。
どこかの国が発行しているわけではないのでそういった意味での保証はありませんが、ブロックチェーンという技術で全てのやり取りがひと続きに記録されていくためユーザー全体での分散管理が実現でき、堅牢性(もしデータ改ざんをしても、他端末のデータと照合することですぐに発覚する)があります。
”取引所”や”販売所”が出てきたことで米ドルや円などの法定通貨を用いた売買が可能になり、現在は株価のように価格が変動しています。
また、最近ではネットショッピングの決済など、仮想通貨のまま使用できる場所が増えています。
2. 金利と仮想通貨は連動してきたのか
一番最初に生まれた仮想通貨はビットコインですが、前回テーパリングがあった2014年頃はまだ価格変動のチャートがありません。
そのため、最近の5年間(特に投資が活発になった2020年以降にフォーカスして)を長期金利として米国債10年利回り、中期の米国債2年利回り、短期金利としてフェデラルファンド金利(政策金利)と比較していきたいと思います。
また、仮想通貨は代表的なビットコインとイーサリアム(いずれも米ドル)を使用して検証します。
2-1. 相関例
まず、以下に相関の非常に強い例をご紹介します。
上のローソクチャートがJPモルガン・チェース(JPM)、そしてその下(真ん中)の青色が”米国債10年利回り”のJPモルガン・チェースとの相関関係を表しています。
一番下の水色は”バンガード社の金融ETF VFH”のJPモルガン・チェースとの相関関係です。
各相関チャートは、真ん中のラインより上に色があれば正の相関(片方が上がればもう片方も上昇する)、真ん中のラインより下にある場合は負の相関(片方が上がるともう片方は下がる)を表しています。
また、真ん中のラインより上下それぞれに離れているほど(色で塗りつぶされた部分が大きいほど)その相関が強いことを表します。
■大きな図なので横にスクロールできます。
JPモルガン・チェースは、米国債10年利回り(青色)、そしてVFH(水色)と”正の相関関係”にあるのがわかります。
ただ、2018年半ばから2019年後半まで、米国債10年利回りとの相関関係は弱まっていたようです。
また、当然ながらVFHとはほぼ同じ動きをしているので、負の相関は全くなく、真ん中のラインというものがなくなっています。
次の図はビットコイン(ローソク)とイーサリアム(青色)の相関関係です。
ほぼすべての期間で正の相関関係にあることがわかります。
では、実際の仮想通貨と金利の動きを見ていきましょう。
2-2. ビットコイン
以下の図は、上からビットコイン(ローソクチャート)、米国債10年利回りとの相関(青色)、米国債2年利回りとの相関(水色)、フェデラル・ファンド金利との相関(黄色)を表しています。
2-2-1. 5年間の比較
この図は2017年から2021年12月12日(記事作成日)までの5年間のチャートです。
いずれも安定した相関関係はないものの、2020年終盤から2021年前半は米国債10年利回りと正の相関があり、一時は弱まったものの最近再び同様の傾向が見られます。
また、2020年の新型コロナ感染拡大以降フェデラル・ファンド金利に大きな動きはないですが、正の相関が強い時期、負の相関が強い時期を1年~1年数ヶ月おきに繰り返しているように見えます。(同期間のフェデラル・ファンド金利等の変動は後述しています)
2-2-2. 2020年
次は2020年~2021年を一年間ずつ、より詳しく見ていきたいと思います。
まずは2020年の一年間を示したチャートがこちらです。
こうしてみるとどの金利とも強い相関関係は無いようです。
ただ、フェデラル・ファンド金利と負の相関を示す期間は少ないです。
また、若干ですが、年末にかけて米国債10年利回りと正の相関傾向がありました。
2-2-3. 2021年
次は2021年を見ていきます。
2021年上旬は、米国債10年利回りと正の相関関係がありました。
中旬はその関係もなくなりましたが、最近再び正の相関を示す期間が増えてきたように見えます。
また、フェデラル・ファンド金利と正の相関を示している期間はほとんどありません。
2-3. イーサリアム
次は、ビットコインと同様にイーサリアムの相関を見ていきます。
ここからの図は、上からイーサリアム(ローソクチャート)、米国債10年利回りとの相関(青色)、米国債2年利回りとの相関(水色)、フェデラル・ファンド金利との相関(黄色)を表します。
2-3-1. 5年間の比較
ビットコインと同様に2017年から2021年12月12日(記事作成日)までの5年間のチャートです。
安定した相関関係はありません。
ただビットコインと同じく、2020年終盤から2021年前半に米国債10年利回りと正の相関がありました。
しかしビットコインと比較するとこの期間の相関の度合いは弱く、全体的に各種金利と負の相関を示している期間が多いようです。
2-3-2. 2020年
次は2020年の相関関係を見ていきます。
どの金利ともあまり相関関係は無く、下旬に米国債10年利回りと正の相関傾向が見られる点、フェデラル・ファンド金利と負の相関を示す期間が少ない点はビットコインと同様です。
2-3-3. 2021年
こちらは2021年のイーサリアムと各金利との相関関係を示すチャートです。
2021年上旬の米国債10年利回りとの正の相関関係は、やはりビットコインほど強くありません。
また、最近は負の相関~相関なしという傾向が強く、この点はビットコインとかなり異なっています。
ただ、フェデラル・ファンド金利と正の相関を示している期間がほとんどないことはビットコインと同様です。
2-4. 同期間の金利の上下との比較
ビットコイン、イーサリアムと比較した各種金利の、同期間の動きは以下の通りです。
5年間の比較では、金利が下がるとき・上がるときに特定の相関があるというような明確な条件はありませんでした。
■米国債10年利回りの5年間チャート
■米国債2年利回りの5年間チャート
■フェデラル・ファンド金利の5年間チャート
■米国債10年利回りの2021年チャート
ビットコインの2021年のチャートと比較すると、3月前までは一緒に勢いよく上昇したものの、その後ビットコインは上昇が緩やかになりました。
ただ、きっかけのタイミングこそ違うものの、2021年中旬に停滞期があること、その後2回に分けて上昇期間があることは同じです。
イーサリアムは、2021年前半の上昇期間が長期金利よりも長く、その後はやはり停滞~下落、2度の上昇の波を示しています。
■米国債2年利回りの2021年チャート
米国債2年利回りは2021年後半から急激に上昇しており、ビットコイン、イーサリアムとはかなり違う動きをしています。
3. まとめ
ビットコイン、イーサリアムと各種金利の関係性を調べたところ、最近ビットコインと長期金利は正の相関を示すことが増えてきているのがわかりました。
ビットコインは仮想通貨の元祖であり代名詞とも言えるもので、知名度・安心感・そして一般的な通貨のように価値を保管・交換するのに適しているという特徴があります。
そのためか、金利が上昇したときに購入される傾向が出てきているようです。
この傾向は株価とは逆の動き(一般的に金利が上がると株価は下がると言われている)です。
一方イーサリアムはビットコインと正の相関関係はあるものの、金利との相関関係は強くない(正・負ともに)ようです。
イーサリアムも非常に有名ですが、価値の保管に適し最近では様々な決済にも使われるようになったビットコインとは異なり、プラットフォームとして活用されている仮想通貨です。
こういった特徴の違いもあり、金利にあまり連動せず独自の値動きをしています。
記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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