アゼンタ【BRKS→AZTA】銘柄分析_2021更新版

米国株の年次決算書・銘柄分析
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アゼンタ(Azenta Inc / AZTA)の2021年年次決算書(10-K)が提出されたので、内容を更新していきます。クロの判断は以下の通りです。
★決算提出時の旧社名は”ブルックス・オートメーション(Brooks Automation, Inc / BRKS)”

今回の決算書での”売上”や”営業利益”は、売却予定の事業分を省いているため、昨年とは異なる数値になっています。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
    ※いずれ売却予定事業の利益がなくなることを考慮
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Brooks Automation, Inc(BRKS)について

1-1. 業種

電子テクノロジー、生産・管理設備、ロボット

1-2. 事業の概要

ブルックス・オートメーションは、半導体分野・ライフサイエンス分野に、自動化、真空、低温貯蔵などの適切なソリューションとサービスを提供してきた企業です。
しかし、2021年9月20日に半導体ソリューション事業の売却を発表し、今後は”Azenta”というブランドで、ライフサイエンスソリューション事業を行うことになりました。

ライフサイエンスソリューションでは、研究開発を支援する装置・サービスを多様にラインナップしています。

具体的には、遺伝子シーケンシングのアウトソーシング機能や合成サービス、-190度にも対応する超低温サンプル管理ソリューション(消耗品を含む)、サンプルや試験・計画を管理できるソフトウェア、輸送を含むサンプル保管サービスなどが挙げられます。

顧客は学術機関や政府機関も含む、製薬、バイオテクノロジー、ライフサイエンス分野で、世界80ヶ国以上での販売を行っています。

1-3. チャート

ブルックス・オートメーションの株価チャートはこのようになっています。2004年以降しばらく10ドル前後で推移していましたが、2016年11月頃から徐々に上がり始め、2020年2月にコロナ感染拡大で一時的に下落した後に大きく上昇しています。
現在はかなり最高値に近い水準ですが、若干下降傾向です。(2021年11月26日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 資金繰りは問題ない
  • 自己資本比率はとても高い
  • キャッシュフローも安定している

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2021年決算書におけるBRKS貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”安定タイプ”です。

流動比率は約225%、当座比率は約101%で、短期の資金繰りはひとまず問題ありません。
固定比率も約79%と良い数値です。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約73%と非常に高いです。

2-1-3. キャッシュフロー

営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”組み合わせで、フリーキャッシュフローはぎりぎりプラスです。

事業の黒字で営業活動がプラス収支です。また、減価償却費が毎年やや大きいです。

投資活動では設備投資の他、AbeyatechLLC.、Trans-Hit Biomarkers Inc.を買収したことで大きなマイナス収支となっています。

財務活動は配当金の支払いが大きくマイナス収支です。

2-1-4. 項目まとめ

資金繰りには問題がなく、安定しています。
累積赤字は470百万ドルで、昨年よりも減少しました。

ただ、今後の主軸となるライフサイエンスソリューション事業はまだ赤字なので、今後累積赤字は増加すると思われます。

2-2. 収益性

  • 2021年は収益性向上
  • ROAは米国平均に届く数値
  • ただし売却予定の事業による利益

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

BRKSのROE(自己資本利益率)推移_2021

2021年9月期のROEは約8%と、米国平均の半分程度しかありません。
ただ、自己資本がかなり大きい財務体質なので、ROEの数値程収益性は悪くなかったと考えられます。

問題は次回以降の決算で、現在赤字のライフサイエンスソリューション事業から利益を出せるかという点です。

なお、過去のROEが高いのには、2018年は法人税等の調整がプラス(利益となった)、2019年半導体クライオジェニックス(低温)事業の大きな売却益といった一時的要因があります。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

BRKSのROA(総資産利益率)推移_2021

ROAもROE同様に上下しており、今期のROAは米国平均に届く数値となりました。

2-2-3. 項目まとめ

昨年より数値が改善し、今年の収益性は米国平均と同等か若干下振れる程度です。

ただ、これは売却予定の半導体ソリューション事業から得た利益なので、次回決算には少々不安が残ります。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率は低い
  • 買収の影響で資産が増加(特にのれん)

2-3-1. 各回転率

BRKSの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率_2021

総資本回転率が約0.3回で、最低ラインの3分の1以下となっています。
資産(資本)の大きさから見ると売上はまだまだ足らず、買収の影響で資産が大きくなっているのが要因の一つだと考えられます。

半導体ソリューション事業の売却がまだ完了していないため、その分資産が大きくなっているという部分はあるのですが、それを差し引いても低い数値です。

2-3-2. 項目まとめ

総資本に対して売上がまだ足りない結果です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上は前年比32%増加
  • 新型コロナによる需要が強い
  • 営業損失は減少傾向
  • 売上高研究開発費率は平均以下

2-4-1. 売上高と営業利益

BRKSの売上高推移_2021

2021年9月期の売上の伸びは32%と大きいです。

2020年9月期にコロナ感染拡大の影響でウイルス検出やワクチン分野の研究開発支援となる製品・サービスの需要が増加していましたが、今期もその傾向は続いており、更に大きく売上を上げることができました。

BRKSの営業利益(損失)推移_2021

ライフサイエンスソリューション事業はまだ利益を出せていませんが、営業損失は年々減少傾向にあります。

2021年9月期は粗利率が47%(前年は44%)に改善しました。
しかしその一方で各種費用もかなり増加しており、その中には買収や事業売却に関する費用、ブランド名変更の減損費用なども含まれています。

なお2020年9月期の決算書内のセグメント情報ではライフサイエンスソリューション事業も償却費などを除けば黒字となっていましたが、調整が入ったようで最新版では赤字となっています。

2-4-2. 研究開発費

2021年9月期の売上高は約513.7百万ドル、研究開発費は約22.41百万ドルだったので、売上高研究開発費率は4.4%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされており、研究開発費率は平均より少々低い結果です。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

売上増加と損失減少を実現しており、今後も成長に期待したいです。

ただ、今期の売上の大きな伸びには新型コロナに関連する需要が影響しているため、今後の売上の伸びが鈍化する可能性があります。
また、売上高研究開発費率は平均より少々低い結果です。

その一方で、買収や売却に関する費用は一時的なものなので、このままいけば損失が減少し黒字となる日も遠くないのではないかと考えます。

3. まとめ

クロとしては、ブルックス・オートメーション(BRKS)に期待はしていますが、一旦様子を見たいと思います。

バイオテクノロジーや遺伝子分野はまさに今成長中の市場なので、ブルックスの提供する製品・サービスの需要も拡大していくのではないかと考えています。

ただ、今期の売上の伸びがまだ続くのかどうかといった点が少々不安です。
今年(2021年9月期)の四半期ごとの売上は、第1Qから118.1百万ドル、129.5百万ドル、129.1百万ドル、136.9百万ドルとなっており需要は衰えていなさそうですが、次回四半期決算を待っても良いかなと個人的には思っています。

事業売却に関連した調整で、昨年のライフサイエンスソリューション事業の黒字がなくなった(ただし償却費などを除いた場合)ことも残念です。

今回の記事はAzenta Inc(Brooks Automation, Inc)の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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