ブルックス・オートメーション【BRKS】銘柄分析_半導体・サイエンス分野に管理ソリューションを提供

米国株の年次決算書・銘柄分析
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ブルックス・オートメーション(Brooks Automation, Inc / BRKS)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
2021年更新版はこちら

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Brooks Automation, Inc(BRKS)について

1-1. 業種

電子テクノロジー、生産・管理設備、ロボット

1-2. 事業の概要

ブルックス・オートメーションは、主に半導体分野・ライフサイエンス分野に、自動化、真空、低温貯蔵などの適切なソリューションとサービスを提供する企業です。

半導体関連事業では、ウェーハ(鏡面に磨き上げられた半導体の材料となる円板。重金属などの予定外の汚染・混入が大敵。ウエハなどとも呼ばれる)やレチクル(ウェーハに回路を作り込む際に使用するフォトマスク。原版)の自動輸送、コンタミネーション(混入)コントロールなどを行うオートメーション装置・サービスを提供します。

また、ライフサイエンス事業では、研究開発を支援する装置・サービスを提供しています。
具体的には、サンプル管理ソフトウェアやサンプル保管・ライフサイクル管理サービス、クリーンルームで製造される器具の更なる滅菌サービス、-80度や-190度といった超低温での貯蔵ソリューションなどがあります。
これらはバイオサイエンスの分野でも活用されています。

なお、2021年末までにそれぞれの分野で会社分割する予定であることが発表されています。
分離後は半導体関連事業側が社名を引き継ぎ、ライフサイエンス事業は新しい社名となりますが、こちらも上場企業となる予定です。

追記

半導体ソリューション事業の売却が発表されました。
くわしくはこちらの記事で紹介しています。

1-3. チャート

ブルックス・オートメーションの株価チャートはこのようになっています。2004年以降しばらく10ドル前後で推移していましたが、2016年11月頃から徐々に上がり始め、2020年2月にコロナ感染拡大で一時的に下落した後は大きく上昇しています。
特に2020年11月からの上がり方が大きく、現在は過去最高値の水準です。(2021年6月24日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 資金繰りは問題ない
  • 株式発行の影響もあり自己資本比率が高い
  • キャッシュフローも安定している
  • 事業で利益は出ているが、累積赤字が残っている

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるBRKS貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”安定タイプ”です。

流動比率は約310%、当座比率は約240%で、短期の資金繰りは問題ありません。
固定比率も約75%と良い数値です。

2-1-2. 資本の比率

株式発行を何度も行っていることもあり、自己資本比率は約78%と非常に高いです。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。

買収によって投資活動のマイナスが大きい年、借入金の収入や返済が大きい年もありますが、基本的には安定しています。

2-1-4. 項目まとめ

資金繰りには問題がなく、安定しています。
ただ、まだ累積赤字が約5.5億ドル残っています。

2-2. 収益性

  • 2020年は利益率低下
  • コロナの影響はプラス・マイナス両方の面で出ている
  • 2020年のROAは米国平均の半分程度

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

BRKSのROE(自己資本利益率)推移

2019年に非常に高い値が出ていますが、これは半導体クライオジェニックス(低温)事業の売却益が大きかったためです。

また、2018年と比べて2020年のROEがかなり低い要因には、2018年は法人税等の調整がプラス(利益となった)であったことの他、原価や人件費などの費用の増加、自己資本が約1.7倍に増加したことなどが挙げられます。(なお、売上高は増加)

2-2-2. ROA(総資産利益率)

BRKSのROA(総資産利益率)推移

ROAもROE同様に上下しています。
2020年のROAは、米国平均の半分~半分より少し上程度です。

2-2-3. 項目まとめ

2020年は、米国平均のROE・ROAを下回る結果となりました。
全体的には売上高が順調に増加していますが、事業買収による資産や費用の増加などが影響しています。

なお、コロナ感染拡大の影響は、サプライチェーンの混乱によって半導体事業の一部の出荷ができなかったこと、ライフサイエンスの顧客のスケジュール遅延によるサービス利用低下という2つのマイナス面と、コロナによるライフサイエンス事業の機械・消耗品の需要増というプラス面がありました。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率最低ラインに届かず
  • 買収の影響で資産が増加(特にのれん)
  • 棚卸資産回転率は製造業の平均程度

2-3-1. 各回転率

BRKSの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は0.6回で、最低ライン1回に届きません。
買収の影響でのれんなどの資産が膨らんでいることが影響しています。

固定資産回転率は約1回です。
棚卸資産回転率は7.8回で製造業の平均にギリギリ届く数値です。

2-3-2. 項目まとめ

総資本に対して売上がまだ足りない結果です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高・営業利益ともに増加を続けている
  • 2020年はコロナの悪影響もありつつ一部需要増加も
  • 売上高研究開発費率は平均より少し高い程度

2-4-1. 売上高と営業利益

BRKSの売上高推移

売上高は順調に増加しています。

2020年はコロナの影響でサプライチェーンの混乱やインフラサービス利用低下があった一方で、ウイルス検出やワクチン分野の研究開発支援となる遺伝子合成サービスや、ライフサイエンス事業の機械・消耗品の需要が増加しました。

BRKSの営業利益(損失)推移

営業利益も増加傾向です。また、粗利率も年々少しずつ上昇しています。
セグメント別に見ると半導体事業が最も営業利益率が高いですが、売上高の伸び率が顕著なのはライフサイエンスサービス事業です。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約897百万ドル、研究開発費は約59百万ドルだったので、売上高研究開発費率は6.6%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされており、研究開発費率は平均より少し高い結果です。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

売上と営業利益が順調に増加しており、今後も成長に期待したい内容です。
また、近年は様々な機器のインターネット接続が進み、バイオ研究も盛んになってきています。これらも市場拡大の要因となりそうです。

3. まとめ

クロとしては、ブルックス・オートメーション(BRKS)は売上と営業利益の伸びや、今後の需要に期待したい銘柄です。

ROE・ROAはまだあまり安定していませんが、事業自体の利益である営業利益が増加しているのは良い傾向です。
2020年には全てのセグメントが黒字化(営業外のコストは含まず計算)しており、この調子を維持できれば累積赤字もいずれゼロにできるでしょう。

また、直近の四半期決算でも前年同期比で売上を伸ばし、利益も増加しています。

半導体の需要増加やバイオ研究の加速といった社会的な傾向も追い風になりそうです。

今回の記事はBrooks Automation, Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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