今回はブルーバード・バイオ(bluebird bio, Inc. / BLUE)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. bluebird bio, Inc.(BLUE)について
1-1. 業種
バイオテクノロジー、医療用品、健康&メディカル、ゲノム
1-2. 事業の概要
ブルーバード・バイオは、レンチウイルスを利用した遺伝子治療を開発・製品化(販売)することを目指すバイオテクノロジー企業です。
現時点ではベータサラセミアという遺伝性血液障害の治療薬「ZYNTEGLO」のみが、EUで承認(ただし使用には条件付き)されています。この薬は約180万ドルという高価な価格設定となっており、批判も起きています。
なお、「ZYNTEGLO」と同じレンチウイルスベクター(遺伝物質を細胞へ届ける仕組み)を使用した他の治療薬の臨床試験で副作用が報告され、現在「ZYNTEGLO」は販売を停止しています。
また2021年1月に、”重度遺伝子疾患”への取り組みと”がん”への取り組みを2つの上場企業に分割する意向を発表しました。これは2021年後半に完了する予定で、ブルーバード・バイオは”重度遺伝子疾患”への取り組みを続ける予定です。
1-3. チャート
ブルーバード・バイオの株価チャートはこのようになっています。
一時株価は200ドルを超えていましたが、その後は下げ基調が続き、現在はコロナ感染拡大による下落時以上に安い価格となっています。(2021年4月22日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 貸借バランスは安定タイプ
- 各比率も良好
- キャッシュフローはまだまだ不安な内容
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは“安定タイプ”です。
(貸借バランスのポイントについては、こちら↓の記事で紹介しています)
2020年の流動比率は約600%、当座比率も約570%です。
短期の資金繰りは問題ありません。
また、固定比率も約40%で問題ありません。
(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は76%とかなり良い数値です。
この数値には度々株式発行(増資)を行っている影響も多いにありますが、まだ赤字続きなので、資金調達のためには仕方ないでしょう。
2-1-3. キャッシュフロー
キャッシュフローは、営業活動マイナス、投資活動マイナス、財務活動プラスという組み合わせです。
事業での赤字が続いていますが、営業活動のキャッシュフローでもマイナスが続いています。
なお、財務活動のプラスは株式発行(増資)によるものです。
フリーキャッシュフローは、まだマイナスが続いています。
(キャッシュフロー計算書の注目ポイントなどを、こちら↓の記事で紹介しています)
2-1-4. 項目まとめ
貸借対照表の内容は良好なので、短期の資金繰りは問題ありません。
一方で事業の損失(赤字続き)が響いており、キャッシュフローは不安な内容が続いています。
2-2. 収益性
- まだ赤字が続いている
- 製品の販売による収益はまだ得られていない
- 2020年の売上増加も協業、共同研究などの契約に関するもの
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

まだ赤字続きの状態なので、ROEはずっとマイナスです。
また、2017~2018年と比較し、2019~2020年は損失額が増加した上に自己資本が減少したため、高い数値となっています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAもROEと同様です。
2-2-3. 項目まとめ
赤字続きで、まだ収益性がない状態です。(現時点で製品の販売による収益は得られていないと決算書内で明言されている)
2020年は売上高が2019年の5倍以上に増加しましたが、そのほとんどは協業契約に関するロイヤリティによるものでした。
2-3. 経営の効率
- 事業の収益化が達成された際には、2020年の10倍近い売上が欲しい
- 現時点での在庫はない
2-3-1. 各回転率

総資本回転率は約0.1回、固定資産回転率は約0.4回です。
まだ製品を販売できていないので当然ではありますが、2020年の売上高では全く足りません。
なお、現時点では棚卸資産(在庫)は保持していません。
2-3-2. 項目まとめ
まだ事業が収益化できていませんが、収益化できた際には2020年の10倍近い売上が必要です。(総資本回転率1回は欲しいため)
2-4. 成長している・していく企業か
- 2020年の大幅売上増
- ただしこの売上は製品を販売したものではない
- 売上高研究開発費率は230%
→商品開発を積極的に行っている段階
2-4-1. 売上高と営業利益

2020年の売上は、2019年の5倍以上になりました。
しかし現時点でブルーバード・バイオは製品の販売による収益を得たことはなく、この売上高の内訳はBMSとの共同研究契約を中心とした契約のロイヤリティや助成金などで構成されています。

2020年は営業損失が減少しました。
これは良い傾向ではありますが、製品の販売による収益は得られていないため、この損失も”契約のロイヤリティや助成金など”と”費用”の差額ということになります。
なお、費用自体は2019年より若干増加しており、2020年の損失額減少は売上高の増加が影響したものです。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約251百万ドル、研究開発費は約588百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約234%です。
これは売上高の2.3倍の研究開発費を投じているという結果です。
普通に考えればあり得ない比率ですが、まだまだ販売できる製品を開発している段階のため、このような結果となりました。
バイオテクノロジーやゲノムの分野はまだまだ発展途上の企業が多く、ブルーバード・バイオもその一つと言えるでしょう。
2-4-3. 項目まとめ
研究開発に大きく投資しており、製品の開発に邁進しているのがわかります。
ただ、現時点では製品の販売が行われていないため、売上高の増加や損失の減少はあまり当てになりません。
2-5. 補足:LentiGlobin遺伝子治療の副作用
遺伝性疾患の一つである鎌状赤血球病(SCD)に対する遺伝子治療”LentiGlobin”の臨床試験を受けた患者の一人が急性骨髄性白血病(AML)と診断され、試験は一時的に中断されました。
また、骨髄異形成症候群(MDS)と診断された患者も一名報告されています。
まだ因果関係は調査中ですが、EUにて条件付き承認を得ていた”ZYNTEGLOTM”も、この遺伝子治療とおなじウイルスベクターを使用しているため、販売・承認の更新を一時停止しました。
3. まとめ
クロとしては、ブルーバード・バイオ(bluebird bio, Inc.)は「現時点では様子見したい」銘柄です。
条件付きとはいえ承認されている治療薬もありますし、すでに複数の治療薬が臨床試験に到達していて、技術力には確かなものがあります。
しかし、レンチウイルスベクター(ブルーバード・バイオの治療薬開発には主にこれが使用されている)の安全性に波紋が広がっている今、投資するにはリスクが大きいと考えています。
また、事業で利益を生み出すには売れる商品を開発することが必要なため、現時点ではまだ今後の収益が見込めないと判断しました。
今回の記事はbluebird bio, Inc.の決算書及びコーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
コメント