ブルックフィールド・リニューアブル(Brookfield Renewable Corp. / BEP・BEPC)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Brookfield Renewable Corp.(BEPC/BEP)について
1-1. 業種
公益事業(電力)再生可能エネルギー、分散型電源
1-2. 事業の概要
ブルックフィールド・リニューアブルは、2019年9月に設立されたブルックフィールド・アセット・マネジメント(資産運用会社)の子会社で、再生可能エネルギーに特化した電力会社です。
特に大きな割合を占めるのは水力発電で、2021年末時点では全体容量の12,766MWのうち、6,772MWを占めました。
なお、次に大きいのは風力発電で2,595MW、続いてソーラー・ユーティリティ、エネルギー転換となっています。
ブルックフィールド・リニューアブルのポートフォリオ内にはバックアップストレージ電源、分散型電源(従来の集中型電源よりも小規模な発電装置を、実際の消費地近くに分散配置して電力の供給を行うシステムや装置、概念のこと。送電線トラブルなどに強く、安定供給が見込める)など、注目を集める技術も含まれています。
また、2020年9月にプラグパワー(PLUG)のグリーン水素生成プラントへの再生可能エネルギーの提供を発表し、2021年3月には、この水素工場がペンシルベニア州に建設されることを発表しました。
このプラントは、2022年後半には稼働を開始する予定です。
1-3. チャート
ブルックフィールド・リニューアブルの株価チャートです。
2020年末に向けて上昇していますが、その後大きく下落し、最近は上下しつつも停滞気味です。
また、株価の上昇はティッカーシンボルBEPよりもBEPCの方が大きい傾向にあります。(2022年6月24日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまず資金繰りには問題なし
- 自己資本比率は9%
- キャッシュフローは比較的安定
財務諸表上は負債が大きいですが、これはLP(ティッカーシンボルBEP。リミテッドパートナーシップ)ユニットとの交換や償還の可能な特殊な株式が負債として計上されているのが主な要因です。
また、キャッシュフローでは、発電資産など有形固定資産への投資、借入金による収入や返済による支出が大きな一年でした。
なお2020年度は前述した交換可能株式の価値の再測定による損失が大きく、純損失が発生していましたが、キャッシュフロー上では現金を伴わない費用としてプラスで処理(戻入れ)され、営業活動はプラス収支となっています。
2-2. 収益性
- ROAは低いが、事業の性質上ある程度許容できる
- ROEの高さは過信できない
- 交換可能株式の評価損益が大きく影響
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

2021年度は26%近いROEが出ていますが、ブルックフィールド・リニューアブルは自己資本比率が低いため、あまり過信できません。
なお、2020年度は交換可能株式の価値再測定による損失が大きく赤字となった一方で、2021年度は再測定によって利益が発生しました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

2021年度のROAは約2%です。
米国平均とされる6%~8%には届きませんが、事業の性質上、発電所などの大きな資産が必要となるため、ある程度は許容できる数値です。
ただ、2021年度の利益はほぼ交換可能株式の価値再測定によるものです。
2-2-3. 項目まとめ
LPユニットとの交換可能株式の価値変動が利益の増減に大きく影響しており、事業そのものからの直接の利益はまだあまり大きくない状況です。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は0.08回と低い
- 発電所などの大きな資産が必要な事業
回転率という点ではかなり低い数値ですが、事業の性質上、ある程度は許容できます。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2021年度は8%の売上成長
- 2020年度は一度売上が減少
- 売上は気候の影響を受ける
- 保有株式の価値変動が利益・損失に大きく影響
2-4-1. 売上高と営業利益

この売上は、事業収益とその他の収入を合わせた総売上です。
売上は減少している年もありますが、2021年度は前年比8%の増加となりました。
これは新たな施設の取得や、一部有利な気候の影響を受けた結果です。
なお2022年度第1Q(記事作成時点の最新決算)は前年同期比9%の売上増加となっています。

ブルックフィールド・リニューアブルは損益計算書で営業利益を明示していないため、税引前利益で比較していきます。
税引前利益は2021年度に大きく増加していますが、これは前述したBEPのLPユニットとの交換可能株式の価値変動によって生じた利益の影響が大きいです。
この価値変動による利益(1,267百万ドル)が無かった場合、250万ドルの税引前損失が発生していました。
また、2020年度の大きな損失も、ほとんどが同様の価値変動によるものです。
なお2022年第1Qではこの変動による損失が909百万ドル発生しており、この影響で、65百万ドルあった利益が相殺され、882百万ドルの赤字となってしまっています。
2-4-2. 項目まとめ
再生可能エネルギー大手ですが、現状は事業そのものからの利益よりも、保有する株式の価値変動が損益に大きく影響している状態です。
ただ、これから世界的に脱炭素を進めていく中で、再生可能エネルギーの必要性はますます高まっていくと予測されるので、業界大手という優位性は変わらずありそうです。
3. まとめ
クロとしては、ブルックフィールド・リニューアブル(BEPC)は、一旦様子を見たい銘柄です。
再生可能エネルギーという分野での優位性は今後もありそうですし、プラグパワーとの提携(ただし現状はあくまで電力供給に止まる)についても期待しています。
しかし現在事業そのものからの大きな利益は生み出せていないことや、今後も気候の影響を多少なりとも受けると考えられる点、他の電力会社を見ても売上・利益の継続的な増加はあまり見られない点は、少々気になります。
これらを踏まえ、今後の決算を引き続き追っていきたいと思います。
今回の記事はBrookfield Renewable Corp.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
コメント