今回は、貸借対照表の各カテゴリの金額のバランスから、企業の資金繰りを大まかにつかむタイプ別診断を紹介していきます。
1. 貸借対照表のバランスは大きく4つに分けられる
1-1. 貸借バランスのタイプ一覧
貸借対照表の資産や負債、自己資本(純資産)のバランスで資金繰りを考察する際、大まかに分けると以下の4タイプに分けられます。

では、それぞれどのような内容を表しているのか見ていきましょう。
1-2. 安定タイプ

- 固定資産よりも自己資本が多い
なかなか現金化されない「固定資産」を、返済が不要の「自己資本」でまかなえている状態です。
土地や建物、機械設備などを、借入金の返済に左右されずに保持することができる、理想的な形で、まさに”安定タイプ”と言えます。
また、このタイプであれば必然的に「流動資産」より「流動負債」も「流動負債と固定負債の合計」も小さくなっているので、負債の返済に困ることもないでしょう。
1-3. おおむね安心タイプ

- 固定資産より自己資本が少ないが、
固定負債と自己資本の合計は固定資産より多い - 流動資産が流動負債よりかなり多い
なかなか現金化されない「固定資産」を、返済が不要の「自己資本」+返済までの期間が長い「固定負債」でまかなっている状態です。
前述の”安定タイプ”程ではありませんが、ある程度は安心できるので、”おおむね安心タイプ”です。
”「流動資産」が「流動負債」よりかなり多い”と書きましたが、「流動資産」の2分の1以下の「流動負債」であることが目安です。
1-4. ギリギリ運用タイプ

- 固定資産より自己資本が少ないが、
固定負債と自己資本の合計は固定資産より多い - 流動資産が流動負債よりギリギリ多い
”おおむね安心タイプ”より流動負債が増えたタイプです。
なかなか現金化されない「固定資産」を、返済が不要の「自己資本」+返済までの期間が長い「固定負債」でまかなえてはいます。
しかし、返済期限の短い「流動負債」が大きく、バランスはあまり良くありません。
まさに”ギリギリ運用タイプ”だと言えます。
この場合、返済期限が近い「流動負債」と、その返済に充てやすい(現金化しやすい)「流動資産」の金額があまり変わらないため、返済がギリギリの状態になっています。
1-5. 不安タイプ

- 固定資産が、固定負債と自己資本の合計より多い
- (必然的に)流動資産が流動負債より少ない
なかなか現金化されない「固定資産」なのですが、返済が不要の「自己資本」+返済までの期間が長い「固定負債」でもまかなえていない状態です。
これは正直あまり良くない財政状態で、”不安タイプ”だと言えます。
この状態では必然的に返済期限の短い「流動負債」をまかなえるだけの「流動資産」が足りず、新しく入ってきた資金も負債の返済に充てなくてはならなくなります。
場合によっては「固定資産」を売却し、そのお金で負債を返すことになるかもしれません。
これでは資金が貯まっていかないので、かなり資金繰りが不安なタイプです。
2. まとめ
貸借対照表の5つの項目(流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、自己資本)の合計金額がわかれば、細かい比率を計算しなくても、その企業の大まかな財政状態を知ることができます。
気になる企業があったら、ぜひ貸借バランスにも注目してみてください。
なお、貸借対照表の概要はこちら↓の記事で紹介しています。
また、貸借バランスだけでなく資産などの比率を知りたいという方はこちら↓を読んでみてください。
なお、当サイトの貸借バランスの図には”非支配持分”(子会社などの株式保有割合の調整)が入っていないため、企業によっては左右の合計が少しずれる場合があります。
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