最近特に注目を集めている投資家キャシー・ウッド氏がCEOを務める資産運用会社ARK Invest。
このARK Investが、近々”ドローン”や”航空宇宙”などの宇宙開発技術のETF「ARKX ETF」を発売すると発表し、これらに関連する銘柄の株価が一時上昇しました。
今回はこのETFや宇宙ビジネス市場の成長予測、そしてクロが注目している民間宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic / SPCE)についてまとめていきます。
※2021年5月11日追記:2021年5月に発表されたワラントに関する2020年末決算の訂正を反映しました
1. ARK Investとキャシー・ウッド氏について
ARK Investは「破壊的イノベーション」をテーマとした投資を行う資産運用会社です。
2020年から株価が急騰しているテスラ(TSLA)やテラドック(TDOC)など、革新的な銘柄を多く組入れたETFを運用しており、その手腕や先見の明で注目されています。
そしてそのARK Investの創設者でありCEOがキャシー(キャサリン)・ウッド氏です。
メディアから”女性版ウォーレン・バフェット”と呼ばれる程、非常に期待されている存在です。
ちなみにARK Investの代表的なETF「ARK INNOVATION ETF(ARKK)」の組入れ銘柄トップ10は以下のようになっています。
1-2. ARK Investの宇宙関連ETF
ARK Investは2021年1月、「ARKX ETF」を発売すると発表しました。
【3月29日追記】発売日は3月30日で決定したようです。
このETFはドローンや航空宇宙関連の上場企業で構成するとされており、このETFへの組入れの期待から、関連銘柄の株価が一時上昇するなどの影響がありました。
現在(2021年3月11日)はそれも一旦落ち着いていますが、”どの銘柄がARKX ETFに入るのか”と、注目されていることには変わりありません。
宇宙関連事業ではまだ利益を出せていない企業も多いです。
しかしARK Investは「破壊的イノベーション」を掲げていますし、他のETFの構成もなかなか攻めた内容となっているので、クロとしては、今はまだ収益が出ていなくても今後に期待できる銘柄は組入れられるのではないかと考えています。
2. 宇宙ビジネス市場の拡大予測
宇宙に関する市場規模は今後どんどん拡大していくと予想されており、2017年には大手金融機関から、以下のような予測※1が発表されています。
- 大手金融機関の宇宙ビジネス市場規模に関する予測
- モルガン・スタンレー
→2040年代に1.1兆ドルに達すると予測 - ゴールドマン・サックス
→2040年代に1兆ドルに達すると予測 - バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ
→2045年までに2.7兆ドルまで成長すると予測
2016年の宇宙ビジネス市場規模は約339,100百万ドル(約3,391憶ドル)程度(モルガン・スタンレーによる発表より)と言われており、一番低い値を出しているゴールドマン・サックスの予測でも、3倍近い成長が見込まれていることになります。
※1 総務省 宙を拓くタスクフォース(第6回)資料より
3. 注目!ヴァージン・ギャラクティック(SPCE)
ここで、宇宙関連の銘柄として、クロが注目しているヴァージン・ギャラクティックを紹介したいと思います。
ヴァージン・ギャラクティックは、2019年10月にSPACを利用して上場しました。
(SPACについてはこちら↓の記事で詳しく紹介しています)
3-1. 企業概要
ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic / SPCE)は、民間の宇宙旅行事業を目指して開発を行っている企業です。
宇宙との境目へ到達し数分間の無重力状態を体験できるという内容のツアーで、既に約600人から申込を受けており、予約金などで80百万ドル以上を受け取っています。(チケット代金は1人当たり約25万ドル)
ちなみにこの約600人の中には日本人の予約客もいるそうです。
2018年12月と2019年2月には宇宙へのテストフライトに成功しており(高度約90kmへ到達)、2018年12月はパイロット2人、2019年2月のフライトではそれに加えて1人の乗組員が宇宙へフライトを行ったと発表されています。
航空宇宙事業を行っている企業はもちろん他にもありますが、その多くは航空事業、防衛事業をメインとしています。
しかし、ヴァージン・ギャラクティックは宇宙事業をメインに開発している企業です。
3-2. 2020年決算書
ヴァージン・ギャラクティックは上場して1年半程度しか経っておらず、事業自体がほぼスタートしていない状況です。
あまり分析はできませんが、決算内容を紹介したいと思います。
2020年12月決算では売上高0.24百万ドル(24万ドル)、純損失645百万ドルとなっています。
米国政府との長期契約業者の下請け業務で収益を得ていますが、2019年と比較し、2020年は94%減収となりました。
しかし現在の資産の流動性は高く、貸借バランスは以下の通り”安定タイプ”です。
2019年と比較して損失額が減少しているわけでもないため、正直、決算書の数字からは良い状態とは言えません。
しかし、研究開発費に2019年は132.8百万ドル、2020年には158.7百万ドル費やしていること、そして株式市場が宇宙事業に注目している今、クロは近い将来の宇宙旅行就航の可能性に期待しています。
(ちなみに貸借バランスのタイプ判断については、こちら↓の記事にて紹介しています)
3-3. 競合となる企業
民間の宇宙への飛行を目指している企業はヴァージン・ギャラクティックの他にもあります。
有名なのはテスラのCEOイーロン・マスク氏のSpaceXや、Amazon設立者ジェフ・ベゾス氏のBlue Originでしょう。また、ボーイング(BA)も宇宙船の開発に取り組んでいます。
しかし、SpaceXとBlue Originは上場していないため、一般投資家は投資を行うことができません。
一方、ボーイングは厳しい経営状況にあります。
2018~2019年の事故によって737MAX機は運用停止され、2020年の決算では純損失11,873百万ドルの赤字となっています。
また、自己資本がマイナスとなる債務超過状態です。
米国では債務超過に対して日本ほど悪いイメージはなく、2021年3月11日現在株価は251ドルを付けていますが、クロとしては宇宙事業開発に力を注ぎにくい状態なのではないかと考えています。
4. まとめ
現時点では利益を出せていませんが、他の事業メインではなく”純粋な宇宙技術の開発”企業として、クロはヴァージン・ギャラクティック(SPCE)に注目しています。
ここ数年は特に民間企業のロケット打ち上げなどのニュースも聞くようになり、近い将来、民間の宇宙船が人々を乗せて飛び立つことも夢物語ではなくなってきました。
また、今後宇宙ビジネスの市場規模がどんどん拡大していくと予測されているので、それに伴って成長しそうな企業へ、クロもぜひ投資したいと考えています。
既に宇宙関連事業で利益を出している企業として、ノースロップ・グラマン(NOC)やロッキード・マーチン(LMT)がありますが、これらは国防や航空事業をメインとした大企業です。
既に安定して複数の事業を行っているのでリスクを抑えることはできますが、宇宙ビジネス市場拡大の影響がダイレクトに反映されにくい面もあります。
(ノースロップ・グラマン(NOC)の決算書を分析した記事はこちら↓です)
(ロッキード・マーチン(LMT)の決算書を分析した記事もあります↓)
そういう意味では、市場の影響が大きく反映され、うまくいけば大きな成長が期待できそうなヴァージン・ギャラクティックを見ていくのも面白いと思います。
また、宇宙関連事業をメインに行う上場企業は非常に少ないですし、テストフライト成功の実績もあるので、ARKXに組み入れられるチャンスもあるのではないかと予想しています。
ただ、繰り返しになってしまいますが、ヴァージン・ギャラクティックはまだ宇宙旅行をスタートできておらず、赤字の企業です。
当然リスクもかなり高いので、もし保有する場合はポートフォリオ内での比率を小さく抑えておくことをおすすめします。
今回の記事はARK Investのコーポレートサイト、Virgin Galacticの決算書及び四半期レポート、コーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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