本日発表されたアップハーベスト(AppHarvest Inc / APPH)の2021年12月締め四半期決算(2021年第4Q)について、アナリスト予想とも比較しつつ内容をまとめていきます。
■アップハーベストの事業内容や年次決算などをまとめた記事はこちらにあります。
1. アナリスト予想との比較
今四半期はEPSが予想値を大きく下回りました。
ただ、売上は前四半期から回復し、アナリスト予想を超えています。
次は、実際の売上高と利益額がどのように推移しているのかを見ていきます。
2. 四半期ごとの売上高と純利益(損失)の推移
これは、四半期ごとの売上高と純利益(純損失)をまとめた表です。
(単位:千ドル)
アップハーベストの生産農場施設は、まだ最初の1つしか稼働しておらず、現状出荷しているのはトマトのみです。
前四半期(第3Q)は、トマトの市場価格の低迷(これは2021年の初頭から言われ続けている)、栽培後の撤去・清掃作業や次の植え付けなどによる生産不足、更にグレードの高い作物の収穫量の生産低下などによって大幅に売上が減少していました。
しかし今四半期(第4Q)は売上が回復しています。
この主な要因には、品質の高いトマトが多く生産できたことや、トマトの市場価格が上昇(1ポンドあたり69セントで、第3Qのほぼ2倍)したことが挙げられます。
ただ、未だに原価が売上を上回った状態は続いており、今四半期は約3百万ドルの売上に対し、約12百万ドルの原価がかかっています。
他にも販売費や管理費などで23百万ドル、更にのれん等の減損で60百万ドルの費用が発生し、事業からの損失は92百万ドルとなっています。
なお、事業外のプラス要因(ワラントの価値変動など)があったため、最終的な純損失は88百万ドルでした。
3. その他の補足
3-1. 通年の結果・トピック
2021年第2Qの決算の際、アップハーベストはガイダンスを引き下げ、売上700万ドル~900万ドル、調整後EBITDAは損失で7,000万ドル~7,500万ドルとしました。
通年売上は905万ドル、調整後(non-GAAP)EBITDAは-6,990万ドルという結果だったので、ガイダンスはクリアしています。
また、2021年は人工知能やロボット工学の企業、RootAI(現在はAppHarvest Technology Incとなった。略称はATI)を買収しました。
3-2. 建設中の生産施設
アップハーベストは、現在3つの農場施設を建設中です。
今回の決算時点では、ケンタッキー州ベリアの葉物野菜施設は約68%、ケンタッキー州リッチモンドのトマト施設は約65%、ケンタッキー州サマセットのベリー施設は約55%完成しています。
2022年夏にケンタッキー州ベリアの施設から段階的に生産量を増加させ、2022年は更に多くの作物を作っていく予定になっています。
3-3. ガイダンスについて
2022年通年のガイダンスとしては、売上を2,400万ドル~3,200万ドル(2021年の2倍以上)と予測しています。
この売上高のメインとなるのは、現在既に稼働しているケンタッキー州モアヘッドのトマト農場で、現在建設中の3施設からは数百万ドル程度の売上を予測しています。
ただ、アナリスト予想(※Yahoo!financeより)の通年売上は3,610万ドルです。
今回のガイダンスは、この予想値を下回る内容となります。
調整後(non-GAAP)EBITDAは、-8,000万ドル~-7,000万ドルとしており、2021年の実績よりも損失が増加する見込みです。
また、建設中の農場などに対する設備投資として、年間で約1億4,000万ドル~1億5,000万ドルを投じる予定です。
4. まとめ
アップハーベスト(APPH)の2021年第4Qは、まだまだ成長の初期段階といった印象です。
いずれは安定した農産物の生産ができるようになると期待していますが、現状は生産量にムラがあったり、作物自体の市場価格に影響され、売上が安定していません。
今後、稼働する生産施設の増加や従業員の熟練度の向上によって、安定した売上が確保されるようになれば、状況も変わってくるでしょう。
(アップハーベストの事業内容や年度末の決算書分析を行った記事もこちら↓にあります)
今回の記事は2020~2021年のAppHarvest Incの決算書及び四半期レポート、コーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
過去の分析記事はこちらに一覧化しています。
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