今回はアメリカン・ウェル(American Well Corp / AMWL)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
■2021年度決算・第4Q速報はこちら
1. American Well Corp(AMWL)について
1-1. 業種
健康&メディカル、医療施設、サービス
1-2. 事業の概要
アメリカン・ウェルは、アムウェル(Amwell)というブランドでアメリカ国内での遠隔医療を提供している企業です。
テラドック・ヘルスと同様に、ビデオ通話などを通じて24時間いつでも様々な症状の診療を受けられるプラットフォームを提供しています。
サービスを利用できる会員は約8,000万人としており、米国のJD Powerという市場調査&コンサルティング会社が行った”2020年遠隔医療満足度調査(JD Power 2020 US Telehealth Satisfaction Study)”の結果、第1位に選ばれました。
また、アメリカン・ウェルは通常の周辺機器に加え”キオスク”という専用ブースを販売しています。
これはタッチスクリーン、カメラ、診断デバイス(聴診器、パルスオキシメーターなど)やクレジットカードリーダーなどを備えた通信設備で、学校などへ設置できる卓上タイプのものから、小売店などに設置可能なスタンドタイプ(証明写真機のようなイメージ)のものまでラインナップされています。
Googleから1億ドルの出資を受けているのもポイントです。
1-3. チャート
アメリカン・ウェルの株価チャートはこのようになっています。
現在はIPO(上場)後最安値といえる水準で推移しています。(2021年4月15日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 上場(IPO)したばかりで資金は潤沢
- 本業はまだ赤字なので現時点のキャッシュフローは良くない
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは“安定タイプ”です。
(貸借バランスのポイントについては、こちら↓の記事で紹介しています)
IPO(上場)して資金を得たばかりということもあり、2020年の流動比率は約920%、当座比率も約910%です。
短期の資金繰りは問題ありません。
また、固定比率も約22%と全く不安のない数値です。
(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は89%と良好な数値です。
IPO(上場)したばかりなので、自己資本を潤沢に持っています。
2-1-3. キャッシュフロー
キャッシュフローはまだ、営業活動マイナス、投資活動マイナス、財務活動プラスという不安な組み合わせです。
営業活動がマイナスなのは、まだ本業で利益を出せていない(赤字)ことが原因です。
また、IPOで多くの資金を得たため、財務活動はプラスです。
フリーキャッシュフローはマイナスです。
(キャッシュフロー計算書の注目ポイントなどを、こちら↓の記事で紹介しています)
2-1-4. 項目まとめ
2020年に上場したため、現時点では潤沢な資金があります。
一方、キャッシュフローを改善するにはまず本業を黒字にする必要があります。
2-2. 収益性
- 2020年はコロナ感染拡大の影響で遠隔医療導入が加速
- 売上高が増加したが、費用も増加
→損失額が増加 - 2020年の上場が影響して数値が若干改善
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
赤字が続いているため、ROEもマイナスとなっています。
2020年にマイナスが小さくなっているように見えますが、実際は2019年の2.5倍の損失でした。
上場して自己資本が増加したため、ROEは改善しました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROEと同様の動きをしています。
2-2-3. 項目まとめ
まだ事業で利益を出せていないので、収益性はありません。
損失額が増えていますが、売上高も増加しているので、IPOして得た資金を活用した事業の拡大に期待したいです。
2-3. 経営の効率
- 総資本から見ると売上高がまだ足りない
- 2020年は棚卸資産(在庫)が増加
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は約0.2回、固定資産回転率は約0.9回、棚卸資産回転率は約27回です。
総資本から見た売上高はまだ足りない状態です。
事業の性質上在庫はあまり必要ないと考えられますが、2020年は前年の約48回から数値が大きく下がっています。
コロナ感染拡大という急激な需要の増加が起きたため、事業拡大を目指して在庫を増やした可能性があります。
2-3-2. 項目まとめ
総資本から見ると売上高が足りない状態です。
これから事業を利益化していくことで、改善されるのを期待します。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上は増加を続けている
- 損失も増加を続けている
- 2020年はIPOやコロナなど様々な要因が発生
- 売上高研究開発費率は平均の約8倍
2-4-1. 売上高と営業利益
売上高は順調に増加しています。
2020年は特にコロナ感染拡大の影響で需要が強まり、売上を大きく伸ばすことができました。
売上高が増加している一方で、損失額も増加しています。
事業拡大や急な需要への対応のため原価など各種費用が増加していますが、2020年は特に、雇用契約およびIPOに伴って共同CEOへ発行された株式報酬費用(ストックオプション)100百万ドルが大きく影響しています。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約245百万ドル、研究開発費は約84百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約34%です。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員数を抱えた米国企業の平均は4.4%とされているので、アメリカン・ウェルは平均の約8倍の比率で研究開発に投資を行っていることになります。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上高が増加している点、研究開発に多くの資金を投じている点からは成長性を感じます。
年々損失も増加しているのが気になりますが、その内容は人件費の増加など事業拡大のために必要なものです。
これらの費用は現時点では投資の一つと考えて、今後の成長に期待したいです。
3. まとめ
クロとしては、アメリカン・ウェル(American Well Corp)は「顧客満足度やキオスクの取り組みに期待したいが、赤字が増加中なので様子を見たい」銘柄だと判断します。
株式市場は既にコロナ収束を見据えていると言われており、今後遠隔医療にどの程度の期待が集まるのかが気がかりです。
また、遠隔医療という分野ではテラドック・ヘルス(Teladoc Health, Inc)が先駆者かつ大手ですが、キオスクの取り組みは一つの差別化ポイントになると考えます。
小売店内にブースを設置というのはプライバシー的にも不安な気がしますが、学校などで診察が可能になるとメリットが生まれそうです。
ただ、現時点では赤字であること、そして年々その赤字が大きくなっていることは念頭に入れておいてください。
今回の記事はAmerican Well Corpの決算書及びコーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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