シースリー・エーアイ(C3.ai Inc / AI)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)※IPOで改善した資産で判断
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. C3.ai Inc(AI)について
1-1. 業種
クラウドベースAI(人工知能)のパッケージソフトウェア、テクノロジーサービス
1-2. 事業の概要
シースリー・エーアイは、企業向けのAIソフトウェアをクラウド型サービス(SaaS)として提供しています。大きく分けると、顧客独自のAIアプリケーションの開発・運用の包括的なプラットフォームと、既に構築済みのターンキーSaaSアプリケーションの2種類を柱としています。
大手顧客が多く、金融、ヘルスケア、米軍、油田サービス企業などと取引があり、その契約金もかなり高額です。銀行であれば証券貸付の最適化によるコストカット、石油プラットフォームではメンテナンスシステムによる効率改善など、様々な業界・企業に適したAIプラットフォームを提供しています。
また、創設者のトーマス・シーベル氏はオラクル出身の敏腕で、退社後に立ち上げたソフトウェア企業は大きく成長しオラクルに買収されるなど、営業力・経営力が評価されています。
1-3. チャート
シースリー・エーアイの株価チャートはこのようになっています。IPO後大きく上昇しましたが、程なく下降に転じました。その後じわじわと一度は値上がりしたものの、2021年2月10頃から大きな値下がりが続き、最高値の約3分の1程度の株価です。(2021年5月28日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- IPO前は債務超過状態
- IPOで資金繰りは改善
- キャッシュフローはIPOを経ても良くない内容
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
IPOする前の年次決算では、債務超過状態でした。貸借バランスが歪な形をしているのは、負債の特性を併せ持つ償還可能株式(純粋な自己資本ではない)が394百万ドルあったためです。
なお、IPOによって償還可能株式は普通株式へ転換され、財務状況は大きく改善しました。
流動比率は約350%、当座比率は約340%で、固定比率は自己資本がマイナスのため判断できない数値でした。
2-1-2. 資本の比率
2020年4月は債務超過状態でした。IPO後の2021年1月末時点では約90%と非常に高い数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという不安な組み合わせで、フリーキャッシュフローもマイナスです。
現状は発展途上で赤字続きのため、キャッシュフローも良くない状態です。
2-1-4. 項目まとめ
全体的に不安の大きい内容でしたが、IPOによってひとまずの資産状況、資金繰りは改善しました。
キャッシュフローは変わらず良くない状態なので、できるだけ早い、事業の黒字化が望まれます。
2-2. 収益性
- ROAのマイナス値が増加
- 売上高増加割合よりも損失額増加割合が大きい
- 現状はまだ発展途上の段階
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
債務超過状態では数値が参考にならないため割愛
2-2-2. ROA(総資産利益率)
赤字続きのため、ROAもマイナスです。なお、総資産の増加以上の割合で損失額(赤字額)も大きくなっています。
2-2-3. 項目まとめ
売上高の増加割合よりも純損失額の増加割合の方が大きく、現状では収益性はほぼない状態です。
現状は事業の黒字化へ向けた発展途上の段階で、コストもかさんでいます。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は最低目安の半分程度
- 固定資産が小さく、回転率が高い
- 棚卸資産は保持していない
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は約0.5回で、前年より上昇しましたが、最低ラインの半分程度しかありません。
固定資産回転率は約6.6回、棚卸資産は保持していません。
クラウドベースのアプリケーション・ソフトウェアの提供という業務形態のため、固定資産はほぼ土地代とコンピューター機器のみです。
2-3-2. 項目まとめ
発展途上の段階で、資産全体から見た売上高はまだ足りない状況ですが、固定資産が少ないため固定資産回転率は比較的高いです。
なお、棚卸資産を持たずに済む事業形態のため、現時点では在庫が膨らむ心配はありません。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2019年決算から売上が約1.7倍に増加
- 損失額は約2倍に増加
- 売上高研究開発費率は平均の約9倍
2-4-1. 売上高と営業利益
まだ2年分しか公表されていませんが、売上は大きく伸びています。
売上の増加と共に、営業損失額も増加しています。2020年4月度は特に販売費およびマーケティング費、研究開発費が大きく増加し、損失額の増加に影響しました。
2-4-2. 研究開発費
売上高は約157百万ドル、研究開発費は約65百万ドルだったので、売上高研究開発費率は41%と非常に高いです。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.7%とされている)
現状はまだ発展途上であり、AIアプリケーションという最新技術を進化させていくための投資が大きく必要であることがわかります。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上と同時に費用も増加し、損失額が増えてしまっています。ただ、これはSaaSアプリケーションを導入する初期投資の一部とも捉えられ、ある程度事業が成長すれば、費用の増加を売上の増加が上回る可能性は十分あると考えられます。
研究開発への意欲的な資金投入があることや、今後もAIによる業務効率化の需要は衰えないと考えられることから成長の可能性はありそうです。
3. まとめ
クロとしては、シースリー・エーアイ(AI)は現状はリスクが高いが事業内容に期待したい銘柄です。直近の決算とロックアップ解除後の株価を見てから購入を検討します。
AIのみで事業展開している数少ない企業の一つですが、創設者自身の実績や、既に大手顧客を複数抱えてコストカットを実現していることから、そのソフトウェア・アプリケーションの品質は優れていると考えられます。
ただ、売上高を過去2年分しか見ることができず、現状はまだ赤字を増やしている状態なので、次回の年次決算(2021年6月2日予定)を見てから保有するか判断したいと思います。
また、ロックアップ期間の最終日が2021年6月6日となっているので、翌日から大きく売られる可能性があることも注視しておきたいです。
今回の記事はC3Ai Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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