エアビーアンドビー(Airbnb Inc / ABNB)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待※2021年第2Q込みで判断
それでは見ていきましょう。
1. Airbnb Inc(ABNB)について
1-1. 業種
インターネット消費者サービス
1-2. 事業の概要
エアビーアンドビーは、大手の民泊仲介サイトを運営しています。
エアビーアンドビーのサイトには、個室、一軒家、別荘などから、ツリーハウスや城、高級ヴィラまで、様々なタイプの施設が掲載されており、2020年末時点で220以上の国と地域にホスト(宿泊・滞在・体験の提供者)を拡大しました。
また、世界的にサービスを展開しているのも特徴で、400万人いるホストの86%は米国外にいるとしています。
また、個人のホストだけでなく、不動産業などのプロのホストも物件を掲載しています。
一方ゲストとなるのは若い旅行者が多く、エアビーアンドビーを利用して予約したゲストの大半が18歳~34歳でした。(2020年末時点)
エアビーアンドビーは、ホストとゲストが信頼し合えるシステムを目指し、予約前のコミュニケーション(メッセージのやり取りが可能)や安全な決済システム、滞在後のレビュー投稿などのプラットフォームを構築しています。
他にも、不正検知やスクリーニングといった技術的な取り組みや、ゲストやホストからの問い合わせ窓口の設置、最大100万ドルまでの物的損害を補償する”ホスト保護プログラム”、その他ホスト用保険など、サポート体制を整えています。
1-3. コロナ感染拡大に対する取り組み
2020年はコロナ感染拡大によって大きな打撃を受け、一時は従業員の4分の1を解雇するという厳しい状況となりました。
しかし、コロナによる変化も影響した新しい需要(ノマドワーカーやリモートでの就業・通学、家族の近くに住みたいなど)に対応すべく、国内や都市部以外での宿泊・滞在を積極的に紹介できるよう、モバイルアプリの更新を行っています。
また、コロナ感染拡大による予約キャンセルを認めたり、本来ゲストからホストに支払われるはずだった一部のキャンセル料を支援するなどの活動を行いました。
この甲斐もあってか、ホスト数や掲載数は、2019年末と比較しても安定しています。
1-4. チャート
エアビーアンドビーの株価チャートはこのようになっています。2020年12月にIPOした後、株価は上下しつつも上昇傾向でしたが、2021年2月の市場の波や決算の不調などによって一転して下落しました。
7月下旬から再び上昇をはじめ、現在も上昇傾向にあるようです。(2021年9月20日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 資金繰りは問題なし
- 自己資本比率も問題ない数値だが、IPO直後にしては低め
- キャッシュフローは良くない
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約170%、当座比率も約170%で、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率は約54%と優秀です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は28%と、ひとまず問題のない数値ですが、IPO直後にしては低めの数値です。
2020年の不調に加え、2019年末時点で債務超過状態だった(負債の側面を持つ償還可能株式を省いて計算した場合)ことも影響しています。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がマイナス、投資活動がプラス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
赤字の年が続いていますが、特に2020年はコロナ感染拡大の影響で大きな純損失が出ており、営業活動はマイナス収支です。
ただ、株式報酬の戻入れ額が大きいため、キャッシュフローの赤字は事業の損失より小さくなっています。
投資活動は30億ドルを超える有価証券の購入支出、売却・満期収入があり、差し引きすると若干のプラス収支でした。
財務活動も、IPOと債務による収入が大きく、プラス収支です。
2-1-4. 項目まとめ
事業は赤字ですが、ひとまずの資金繰りは問題ありません。
ただ、2020年は大きな損失が出ており、これを改善できるかがカギになりそうです。
2-2. 収益性
- 2020年はコロナの影響で純損失が大きい
- まだ赤字続き
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
IPO前の2019年までは債務超過(償還可能な株式を省いて計算)でした。
また、2020年は純損失が大きく、ROEのマイナス値も158%となっています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもマイナスです。
2019年、2020年と損失額が増えたため、マイナス値が大きくなっています。
2-2-3. 項目まとめ
事業は赤字で、まだ利益を生み出せていません。
特に2020年はコロナ感染拡大の影響で大きな純損失が発生しました。
なお、2021年第2Qは売上も増え、赤字を大きく削減しています。(記事作成時点の最新決算は第2Q)
2-3. 経営の効率
- 元々低いが、2020年は総資本回転率が低下
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は0.3回と低いです。
2020年はコロナの影響で売上が減少した上にIPOで資本は増加したため、回転率は低下しました。
なお、それ以前も1回には満たない数値でした。
固定資産回転率も低下していますが、元々固定資産はあまり大きくないので、総資本回転率よりも高い数値が出ています。
なお、固定資産はコンピューターやソフトウェア関連、オフィスなどのリース、そして買収のためののれんなどで構成されています。
棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
2020年は売上の減少や資産の増加があり、回転率は低下しました。
ただ、2021年第2Q(記事作成時点の最新決算)で売上の回復が見られたため、今後の改善に期待したいです。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上は成長中だったが2020年はコロナで減少、損失も急増
- 記事作成時点の最新決算(第2Q)を見ると回復傾向にある
- 売上高研究開発費率は80%超えだが、一時的だと考えられる
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は順調に伸びていましたが、2020年はコロナ感染拡大の影響を受けて減少しました。
特に感染拡大の序盤は大きく売上が減少しましたが、後半は国内旅行や在宅勤務需要で回復を見せました。
2020年は営業損失が非常に大きい一年となりました。
これは主に、コロナ感染拡大による売上の減少、IPOに関連した株式報酬などの人事費用が増加したことによるものです。
また、人員削減によるリストラ費用も発生しています。
一方で、コロナの影響もあり、マーケティング費用は減少しました。
ちなみに事業外でも、債務の増加による支払利息の増加、ワラントの価値変動による損失が発生し、最終的な純損失は約46億ドルとなっています。
また、2018年は営業利益が出たものの、2019年に再び営業損失が発生しました。
これには、従業員の増加による人件費増加やマーケティング費用の増加、プラットフォームの強化など、各種費用の増加が影響しています。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約3,378.2百万ドル、研究開発費は約2,752.87百万ドルだったので、売上高研究開発費率は81.5%で、平均の約20倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.1%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標2019
ただ、2020年は売上が少なかった上、前年比での研究開発費の増加要因は株式報酬等に関するものなので、この比率の高さは一時的なものだと考えます。
2-4-3. 項目まとめ
2020年は不調でしたが、2020年後半や2021年第2Q(記事作成時点の最新決算)では回復を見せています。
特に2021年第2Qは純損失をかなり削減できているので、いずれ黒字になる可能性にも期待できそうです。
3. まとめ
クロとしては、エアビーアンドビー(Airbnb Inc)はコロナ禍からの回復と成長に期待したい銘柄です。
2020年後半から売上回復の兆しが見えており、2021年第2Qに損失を大きく削減できたこともあるので(記事作成時点の最新決算は第2Q)コロナ禍による不調からの脱却と成長に期待しています。
ちなみに第1Qの大きな損失は、ローンの早期償還に関連した追加費用などが大きく影響した結果でもあります。
また、決算書内で”コロナによる不況から、副収入を得るためにエアビーアンドビーのホスト制度が利用されると考える”という旨の発言がされているように、施設や経験を提供する”ホスト”となり収益を得ようとする動きも活発になる可能性があります。
ホスト側が、より滞在者を呼び込むために施設や体験などの工夫を行えば、それはエアビーアンドビーの収益にもつながるため、成長を促す一因となりそうです。
今回の記事はAirbnb Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
コメント