2022年1月25日に発表された米国企業の四半期決算について、個別記事のまだないものも含め、16社分の売上・EPS(アナリスト予想との比較)、売上や利益の推移、2022年のガイダンス(一部記載のない企業もあり)を見ての簡単な所感をまとめました。
本日は”GAFAM”の一つマイクロソフトや、最近の世界的情勢で注目を集めるロッキード・マーチンの決算が発表されました。
特にマイクロソフトは今期も好調な結果を出し、成長が続くことを宣言しています。
他にも、ゼネラル・エレクトリック、アメリカン・エキスプレス、連続増配で有名なジョンソン・エンド・ジョンソンなど、大手企業の決算が多く出てきています。
- 1. 四半期決算
- 1-1. ゼネラル・エレクトリック(GE)
- 1-2. アメリカン・エキスプレス(AXP)
- 1-3. スリーエム(MMM)
- 1-4. レイセオン・テクノロジーズ(RTX)
- 1-5. ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)
- 1-6. ゼロックス(XRX)
- 1-7. ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)
- 1-8. ロッキード・マーチン(LMT)
- 1-9. ネクステラ・エナジー(NEE)
- 1-10. アジリシス(AGYS)
- 1-11. F5ネットワークス(FFIV)
- 1-12. マイクロソフト(MSFT)
- 1-13. テキサス・インストゥルメンツ(TXN)
- 1-14. ルネサンスリー・ホールディングス(RNR)
- 1-15. パッカー(PCAR)
- 1-16. アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)
- 2. まとめ
1. 四半期決算
1-1. ゼネラル・エレクトリック(GE)
大手電機メーカーであり、エネルギーやインフラの提供、金融や医療のシステム・サービスなど非常に幅広い事業を行うコングロマリット(複合)企業。
EPSはクリアしていますが、売上がアナリスト予想を下回り続けています。
前年同期比でも減収しており、さらに黒字から赤字(損失が発生)に転落しています。
債務削減に対する損失が発生していることが大きな要因と見られ、通年でも同様の結果となっています。
2022年通年のガイダンスでは売上の成長率を一桁台後半としており、中でも航空事業の売上が20%以上増加する見込みだとしています。
1-2. アメリカン・エキスプレス(AXP)
銀行持株会社。クレジットカードを発行する。
今期はアナリスト予想をクリアしました。
前年同期比でも増収増益となっており、通年では純利益が157%も増加するなど好調な決算です。
1-3. スリーエム(MMM)
世界的化学・電気素材メーカー。フィルムやテープなどの他、消費者向けには粘着テープや”ポスト・イット”(粘着ふせん)などを提供。
アナリスト予想をクリアし続けています。
前年同期比では売上が若干増加したものの、純利益が5%減少しました。
ただ、通年では増収増益となっています。
1-4. レイセオン・テクノロジーズ(RTX)
防衛・航空宇宙事業に従事。航空機、機械システム、エンジン、レーダー、その他製品などを製造する。
2四半期連続で売上がアナリスト予想に達しませんでした。
しかし前年同期比では売上が4%増加、純利益は369%の増加となっています。
通年でも売上増加かつ赤字から黒字に改善しています。(2019年までは黒字だった)
2022年の通年ガイダンスでは、売上685億ドル~695億ドル、調整後EPS 4.6ドル~4.8ドル、また自社株買いに少なくとも25億ドルを使用する予定だとしています。
この売上が達成されれば、2021年よりも更に6%~8%成長することになります。
1-5. ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)
大手電気通信サービス業者。
今四半期は、EPS、売上ともにアナリスト予想をクリアしました。
ただ、売上はほぼ予想値通りといったところです。
前年同期比では売上が2%減少、純利益がわずかに増加という結果になっていますが、通年では増収増益を達成することができました。
2022年のガイダンスでは、サービス・その他の売上が3%増加、ワイヤレスサービスの売上が3%以上増加(事業売却・買収の影響を除いた数値)する見込みだとしています。
1-6. ゼロックス(XRX)
印刷機器メーカー。関連サービスも提供する。
今四半期は、売上がアナリスト予想を下回りました。
前年同期比で売上が減少しただけでなく、のれんの減損によって損失が発生しています。
通年でも売上は前年からほぼ横ばいで、赤字に転落してしまいました。
2022年のガイダンスでは、”売上は少なくとも71億ドル”としていますが、これを2021年と比較すると1%以下の成長率です。
1-7. ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)
大手医薬品・医療機器メーカー。手術ロボットの開発も行っている。
2四半期連続で売上がアナリスト予想を下回りました。
ただ、前年同期比(第4Q)・通年では増収増益となっており、特に第4Qの純利益は173%も増加しています。
2022年のガイダンスでは、新型コロナ(COVID-19)ワクチンの売上が30億ドル~35億ドルとなる見通しで、総売上は989億ドル~1,004億ドルと予測しています。
この総売上が達成されると、2021年比5.5%~7%の増加となります。
■ジョンソン・エンド・ジョンソンの事業内容や年次決算についてまとめた記事はこちらにあります。
1-8. ロッキード・マーチン(LMT)
航空宇宙、防衛事業を行う。国防では米国最大手企業。
今期は久しぶりにEPS、売上の両方でアナリスト予想を達成しました。
前年同期比でも増収増益で、年単位で見ても売上は増加を続けています。
前四半期決算時に2021年・2022年のガイダンスを引き下げて株価が急落しましたが、2022年の売上予測はその時の660億ドルから変わっていません。
営業利益率も11%のままです。
ロッキード・マーチンの事業内容や年次決算についてまとめた記事はこちらにあります。
1-9. ネクステラ・エナジー(NEE)
電力供給に関わる事業を行う大手公益事業持株会社。天然ガスなどの発電施設も所有。
売上はアナリスト予想を大きく下回り続けています。
年間で見ると2019年から売上の減少が続いていますが、純利益は増加しました。
1-10. アジリシス(AGYS)
ホスピタリティ、小売業を対象に、POSシステムや資産管理、ワイヤレスソリューションなどを提供するソフトウェア企業。
売上がアナリスト予想を下回りました。
売上の一貫した増加傾向はなく、赤字続きの状態です。
ただ、今四半期の収益は、新型コロナによるパンデミック開始以来での最高記録となりました。
1-11. F5ネットワークス(FFIV)
ネットワーク製品を開発・提供する。トラフィックの管理・制御などをはじめとしたインターネットソリューションを手掛ける。
アナリスト予想をクリアし続けています。
売上も増加を続けていましたが、2022年第2Q(9月締め決算。第2Qは1月~3月)、通年のガイダンスでは、需要は堅調なもののサプライチェーンの問題が続くと見込まれています。
第2Qの売上は6億1,000万ドル~6億5,000万ドルと予測され、通年での売上成長率は以前の8%~9%という予測から、4.5%~8%に引き下げられました。
1-12. マイクロソフト(MSFT)
ソフトウェアの世界的大手企業。PC向けのOS”Windows”、多様なソフトウェアの開発・製造・販売、クラウドサービス、タブレット製品などのハードウェアを提供する。
アナリスト予想を達成する期が続いています。
46%の成長を見せたクラウドサービスを中心に、売上・利益共に力強い成長が続いています。
次四半期のガイダンスでも、クラウド”Azure”プラットフォームが成長を牽引していく見通しです。
1-13. テキサス・インストゥルメンツ(TXN)
半導体製品の設計・開発・製造・販売を行う世界的企業。社名の”インストゥルメンツ”は”インスツルメンツ”と表現されることもある。
今四半期はアナリスト予想をクリアしました。
四半期で見ても、通年で見ても、前年比増収増益となっています。
ただ、もう少し広い期間(2017年以降)で見ると、年々売上を増加させ続けているわけではありません。
2022年第1Qのガイダンスでは、売上を45億ドル~49億ドルとしているので、前年同期比では増収となる見込みですが、今四半期(2021年第4Q)の売上が48億であることを考えると、ここから更に大きく伸びるといった内容ではありません。
1-14. ルネサンスリー・ホールディングス(RNR)
国際的な再保険・保険会社。
今四半期は、売上がアナリスト予想を下回りました。
四半期で見ると増収増益となっていますが、通年では売上こそ増えているものの、最終的に赤字へ転落しています。
1-15. パッカー(PCAR)
大型トラックメーカー。水素エンジンのトラック開発にも取り組む。
今四半期はアナリスト予想を達成しています。
四半期はもちろん、通年でも売上は27%、利益は43%と、不調だった2020年からかなり回復しています。
また、経済の好転を背景に、2022年の世界的なトラック市場も好調だろうという予測を発表しています。
1-16. アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)
農産物(油脂用種子やトウモロコシ、小麦など)の加工や調達・貯蔵・輸送を手掛ける。
アナリスト予想をクリアする期が続いています。
過去数年間売上はほぼ横ばいでしたが、2021年は四半期(今四半期。第4Q)、通年ともに増収増益となりました。
2. まとめ
好調だったのはアメリカン・エキスプレス(AXP)、マイクロソフト(MSFT)です。
GAFAMの成長がそろそろ一段落するのではないかと言われている中で、今回のマイクロソフトは好決算を出しています。
一方、最近は世界情勢などを理由に株価を上昇させ続け、注目を集めるロッキード・マーチン(LMT)のガイダンスは前回引き下げた水準を維持しました。
また、サプライチェーンの問題などを理由に今回ガイダンスを引き下げたF5ネットワークスは、プレマーケットで既に株価が大きく下がっています。
今回の内容は個別の分析記事とは違い、売上や利益にフォーカスした、より簡略的なものとなっています。なおEPS、売上はTradingViewの数値を使用させて頂いています。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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